Yahoo! JAPAN

今井美樹「PIECE OF MY WISH」吉高由里子のニュービーズCMでも起用された90年代名曲

Re:minder

1991年11月07日 今井美樹のシングル「PIECE OF MY WISH」発売日

アルバムチャート1位を獲得した「Bewith」


すでにモデルや俳優業で活躍していた今井美樹は、シングル「黄昏のモノローグ」で1986年5月21日に歌手デビュー。当時、今井のデモテープを聴いたフォーライフのディレクター 松田直は、この素晴らしい歌声を世に知らしめなければいけないと使命感を感じたという。余談だが、デモテープの中には松任谷由実の「青いエアメイル」が入っていたそうだが、2013年には、全曲ユーミンの楽曲をカバーしたアルバム『Dialogue -Miki Imai Sings Yuming Classics-』をリリースしている。

筆者が今井美樹の楽曲を最初に聴いたのは、1988年に発売された3枚目のオリジナルアルバム『Bewith』だが、ジャケットのイメージそのまま、たおやかな世界が広がっていた。前2作のアルバム『femme』『elfin』は複数のアレンジャーが参加するバラエティに富んだサウンドだったが、『Bewith』はアレンジを佐藤準が全曲手がけており、サウンドのトータリティという点でも申し分のないアルバムだった。予備知識も先入観も持たないまま聴いたこのアルバムは、今でも愛聴盤になっている。

このアルバムには、その後の今井の世界を形成する非常に重要なコンポーザーが初参加している。1人目は「夏をかさねて」を作曲した柿原朱美。柿原は今井に14曲の楽曲を提供しているが、1990年代に発表された「retour」「A PLACE IN THE SUN」はアルバムタイトルにもなった重要なナンバーだ。そしてもう1人の重要人物は上田知華。『Bewith』では「黄色いTV」「9月半島」の作曲を手掛けている。上田の作品は1980年代後半から1990年代中盤にかけて、重要な役割を担っていたと言ってもいい。これまでの提供曲は23曲で、人気曲「瞳がほほえむから」も上田による作曲だ。

アルバム『Bewith』はアルバムチャートの1位を獲得する大ヒットになり、2か月後にはシングル「彼女とTIP ON DUO」が発売されている。今井本人が出演した、1988年資生堂秋のキャンペーンソングに起用されたこの曲も上田知華が作曲を手がけ、4枚目のシングルにして初のTOP10入りを果たすヒットになった。この時期の今井は同世代の女性たちの憧れの存在になり、メイクやファッションに影響を受けた女性ファンが街にあふれるほどの人気であった。

ドラマ「あしたがあるから」の主題歌「PIECE OF MY WISH」


そんな “時の人” となった今井美樹は、1991年に自身の大きなターニングポイントとなった “あの曲” を発表している。内館牧子脚本によるTBS系ドラマ『あしたがあるから』の主題歌になった、7枚目のシングル「PIECE OF MY WISH」のことである。結婚を控えた普通のOLが、社長の企みで特別企画室の部長に就任。様々な逆境に悩み傷つきながらも自力で運命を切り開いていくという内容のドラマだった。

この曲も上田知華が作曲を手がけているが、作詞をした岩里祐穂は――

「もっと大きな世界観のもとで、元気を出そうとか、自分を信じようとか、悩みながらも前向きになれる歌を書きたかったので、それが出来たのは嬉しかったですね。そういう意味で大きな変換期になったと思います」


―― と語っている。

ミリオンセラーを記録したこの曲は、困難に立ち向かう人々の心に寄り添う1曲として成長し、デビュー30周年イヤーの2015年には『第66回NHK紅白歌合戦』で同曲を歌唱している。

上田知華自身も2013年にカバー


これまでに様々なアーティストにカバーされてきたこの「PIECE OF MY WISH」だが、作曲をした上田知華自身もセルフカバーしているのをご存じだろうか。2013年、デビュー35周年を記念して発売された『ゴールデン☆ベスト 上田知華』の中に新録音として収録されている。アコースティックギターをベースにしたシンプルなバージョンなので、こちらのバージョンもぜひ聴いてみていただきたい。

上田知華は2021年、残念ながらご病気のためにお亡くなりになったが、逝去が発表された時、今井美樹は自身のHPで上田さんへのメッセージを寄せており、その最後はこのような言葉でしめられている。

「知華さんが授けてくれた楽曲をこれからも大切に歌っていきます。それが大きな感謝として知華さんの空に届きますように。祈りを込めて。」

(今井美樹)

そんな今井美樹の「PIECE OF MY WISH」は現在、花王『ニュービーズ』のCMソングとして大量にオンエアされている。リアルタイムで聴いていた世代には懐かしく、初めて聴いた世代にも大きなインパクトを与えているのではないだろうか。CMから流れてくるこの曲を聴くたびに、名曲の存在感を強く感じずにはいられない。

【関連記事】

おすすめの記事