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【横須賀市】帰還の日は「カレー」で数える 海自隊員の士気を食で支えた八木秀樹さん

タウンニュース

1996年に砕氷艦「しらせ」に乗船していた当時の八木さん(右)=本人提供

四方を海に囲まれた閉鎖的な空間で、任務によっては数カ月間陸地から離れて活動する海上自衛隊の艦船。船内での生活は娯楽が少ないこともあり、食事は隊員にとって大きな楽しみのひとつだ。

横須賀市平作在住の八木秀樹さん(65)は海上自衛隊員の給養員として、2014年に退職するまで調理を担当する任務に従事してきた。エンジンや電力の整備、情報収集や伝達など緻密に役割が分担され、厳格な規則に基づいて行われる艦船の仕事。そんななか、「調理の仕事だけは自由度が高い。だからこそ、『来週はチキンが食べたい』など要望も多かった」と八木さんは振り返る。

困難極めた嵐の調理

群馬県の高校を卒業後、海上自衛隊へ入隊。横須賀教育隊で隊員の適性を見極める研修を受け、補給科給養員として配属が決まった。

厚木航空基地隊での勤務を経て、最初に乗艦したのは砕氷艦「ふじ」。147日間におよぶ第22次南極地域観測協力行動の任務で、成人を迎えたのは南極大陸だった。

すでに補給員として2年間の経験を積んでいたとはいえ、船上での調理は陸上とは違う困難があった。「嵐の時には船が45度も傾き、包丁が飛んだり、せっかくできあがった料理が釜からこぼれたり。船酔いがひどくても任務だから最後まで作りきるけれど、自分は一切口にできないこともあった」。揺れの対策として、作った料理は「バッ缶」と呼ぶ容器に入れて吊るしていたという。

「あと3回で横須賀」

献立やレシピの考案は調理員長の役割。隊員のリクエストにも臨機応変に対応し、船上での大きな息抜きの時間を満喫してもらおうと日々工夫して調理にあたっていた。

そのなかで、毎週特定の曜日に提供されるのがカレーライス。サラダ、ゆで卵、コロッケやイカフライなどの揚げ物、牛乳とともに提供するのが通例で、福神漬けやフルーツ缶の汁など、担当する給養員の好みで隠し味を付け足すこともあった。

曜日が定められているのは日々の生活にリズムをもたせるための工夫で、「カレーの翌日は休日」という安堵感も手伝って多くの隊員が待ち望んでいたメニュー。長い航海となれば陸地が恋しくなり、「あと3回食べたら横須賀だ」と、カレーを帰国までの目安にする隊員もいたという。

「食」が隊員の関心事

「昨日の飯は硬かった」「みそ汁がしょっぱかった」。寄港地で与えられる自由時間に隊員と連れ立って銭湯や居酒屋に出掛けると、話題は決まって食事のこと。小言も言われたが、「それだけ料理に対する関心が高かったということ」。

「しらせ」「はたかぜ」など8つの護衛艦や砕氷艦に乗艦し、食を司る給養員として隊員の士気を支え続けた36年間。今は離れて住む息子家族を訪問する時、自宅で作ったカレーを持参するという。

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