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デリバリー時代の飲食店の強い味方 複数チャネルの注文を一元管理 UrbanPiper

TECHBLITZ

手軽に出前が頼める便利なフードデリバリーも、飲食店側にとっては業務を煩雑化させる要因になりかねない。そうした課題を解決するため、飲食店向けオーダー管理プラットフォームを展開するのがインド発のスタートアップ、UrbanPiper(本社:インド・バンガロール)だ。Uber EatsやDoorDashなど複数あるフードデリバリーのチャネルを1つのダッシュボードで管理することが可能で、既存のPOSと連携したオーダー管理もできる。コロナ禍を背景に躍進し、ビジネスをグローバルに展開している同社社長のAshish Saxena氏に、事業概要や将来展望について聞いた。

<font size=5>目次
デリバリー台頭で生まれたニーズとは
一元管理でキャンセル率低下に貢献
間もなく日本進出、市場の潜在性に期待

デリバリー台頭で生まれたニーズとは

―UrbanPiperの始まりについて教えていただけますか。

 UrbanPiperの歴史は2015年にさかのぼります。現CEOのSaurabh Guptaら3人の創業者が集まり、レストラン業界向けのソリューション開発を始めたのがきっかけでした。当初は、スターバックスの成功例に触発されたロイヤルティプログラムのソリューションを提供していました。多くの企業がこうしたプログラムの立ち上げに興味を示していたんです。

 その後、事業の幅を広げ、モバイルウェブサイトとアプリの開発に着手しました。私が関わり始めたのもちょうどこの頃です。2016年から2018年頃までは、主にロイヤルティプログラムとウェブサイトのソリューション提供に注力していました。

 その後、オンラインデリバリーの人気が急速に高まり始めました。Uber EatsやDoorDashなどのデリバリープラットフォームが台頭してきたんです。この流れを受けて、私たちは新たな製品開発に取り組みました。デリバリープラットフォームとレストランのPOSソリューションをつなぐ中間層のプロダクト「Hub」です。

 この製品により、複数のチャネルからの注文を1つのPOSに集約し、レストランが効率的に注文の管理を行えるようになりました。注文の受け入れや拒否、さらにはメニューの変更までPOSから一元管理できるようにしたんです。この革新的なソリューションが、現在のUrbanPiperの中核を成しています。

Ashish SaxenaUrbanPiperPresident1999年にDelhi College of Engineeringを卒業後、テクノロジー業界でキャリアをスタートし、2002年にIIM LucknowでMBAを取得。2004年にはAccentureで戦略とM&Aに従事。2009年にはBungeでインド事業を牽引。2013年にはChili's Grill and Barのインドフランチャイズを6年間運営し、4都市に15店舗を展開。2019年からはCloudKitchens、2021年のNinjacartを経て、2022年にUrbanPiperに参加し、2024年4月にPresidentに就任。

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―コロナ禍にはフードデリバリーの需要が高まったのではないでしょうか。

 パンデミック期間中、さまざまな規制により店内飲食がほぼできない状態となり、多くのレストランがデリバリーに注力せざるを得なくなりました。その結果、フードデリバリーの需要が急激に高まりました。

 幸いなことに、私たちのソリューションはそれ以前からインドで高い評価を得ていました。マクドナルドやピザハットといった大手チェーンはもちろん、ローカルチェーンでも広く採用されていました。これらの大手顧客はすでにデリバリーに力を入れており、新型コロナウイルス流行後にその傾向がさらに強まったんです。

 この機会を活かし、パンデミック期間中に私たちはインド以外の市場への展開も始めました。まず、中東のドバイで事業を立ち上げ、ピザハットとKFCを展開するAmericana Groupにサービスを提供しました。さらに、英国市場にも進出し、そこでもピザハットとの取引を開始しています。

 過去2年間で、これらの地域すべてで大きな成長を遂げました。特に2023年は、Ordermarkという米企業を買収し、米市場での足がかりを得ることができました。現在、米国だけで約4000店舗のレストランにサービスを提供しており、グローバルでは約45000店舗にまで拡大しています。この急速な成長は、私たちのソリューションが世界中のレストラン業界のニーズに応えていることの証だと考えています。

一元管理でキャンセル率低下に貢献

―現在のプロダクト構成と課金モデルについて教えていただけますか?

 主力プロダクトはデリバリープラットフォームとレストランの間の中間層ソリューションであるHubです。Hubは、デリバリープラットフォームとPOSソリューションの両方と通信できるAPIを持っています。デリバリープラットフォーム向けとPOSソリューション向けの両方に汎用的なAPIセットを構築しており、カスタム統合も可能です。課金モデルは一般的なSaaSと同じく、月額料金や注文ごとの手数料となっています。

 また、インド、中東、英国、米国など複数の国で事業を展開しており、日本ではサブウェイと提携して事業を開始する予定です。現在、詳細な協議を進めており、順調にいけば年内には事業を開始できる見込みです。これにはウェブサイトとアプリのソリューションである「Meraki」も含まれます。

―顧客の成功事例を共有していただけますか?

 私たちのプラットフォームを導入したすべての顧客が、キャンセル率の大幅な低下という恩恵を受けています。これが最も顕著な効果だと言えるでしょう。以前は、デリバリーと店舗注文を別々に管理していたため、複数のタブレットを同時に監視する必要がありました。忙しい時間帯にタブレットのチェックを忘れてしまうと、注文が自動的にキャンセルされてしまうこともあります。注文だけでなく在庫切れの管理もしなければなりません。

 私たちのシステムを使えば、1つの端末ですべてを管理できます。店内の注文と同じように、オンライン注文も受け付けられ、それが直接キッチンに送られます。デリバリーのライダーもスムーズに対応できます。実際、インドではマクドナルドやピザハット、KFCなどの大手チェーンで、キャンセル率を6〜7%から2%未満に削減した事例が多数あります。これは非常に大きな改善です。

 さらに、Merakiは、顧客がより多くの注文を獲得するのに役立っています。直接注文を受けるので、別のプラットフォームに手数料を支払う必要がありません。少額の料金で自社ブランドのウェブプレゼンスを確立できるのです。このように、私たちは顧客のビジネスを多面的にサポートしています。

―御社の領域で競合他社はありますか。もしあれば、御社のサービスとの違いは何でしょうか。

 中東や米国、英国のようなグローバル市場で最も多く見かける競合は、Deliverectという企業です。彼らはインドには進出していないので、インドでは競合がいない状況です。米国ではOloやCheckmateなど、他にも多くの企業がありますが、これらの競合も米国以外では展開していません。

 おそらく私たちは、12カ国で事業を展開している、この分野で唯一のグローバル企業だと思っています。世界中の約50のデリバリープラットフォームと、200以上のPOSソリューションと接続しています。日本市場に参入すれば、さらに1つ国を追加できることになりますね。

―会社としての成長はいかがでしょうか。過去数年間の成長を示す指標について教えていただけますか。

 過去2年間で売上がほぼ5倍に膨れ上がりました。確かに、Ordermarkの買収が大きな推進力となりましたが、それを除いても2.5倍から3倍の成長を達成しています。これほどの急成長を遂げられた理由は、まさにレストラン業界のニーズに応えられているからです。

 デリバリーの需要が増加するにつれて、レストランは新たな課題に直面しています。オンライン注文の管理、メニューの更新、在庫切れ商品の即時反映など、これらの業務がますます複雑になっています。私たちのソリューションは、まさにこれらの課題を一括して解決します。そのため、規模の大小に関わらず、すべてのレストランが私たちのサービスを必要としているのだと考えています。

 しかし、優れた製品だけでは十分ではありません。私たちが特に誇りに思っているのは、顧客サービスの質の高さです。24時間365日、電話やメールでサポートを提供しており、どんな問い合わせにも30分以内に返答することを約束しています。

間もなく日本進出、市場の潜在性に期待

―次の展開についてお聞きします。日本市場に参入するとのことですが、今後12〜24ヶ月で達成したいマイルストーンはありますか?

 まず、米国市場の強化を最優先事項として取り組んでいます。これは会社全体の大きな焦点となっています。同時に、中東地域、特にアラブ首長国連邦(UAE)とサウジアラビアにも大きな可能性を感じています。両地域には素晴らしいチームを配置しており、成長への期待が高まっています。

 さらに、日本市場への参入も計画しており、個人的にもこの展開にはとても期待しています。日本は非常に魅力的なフードデリバリー市場だと考えています。Uber EatsやWoltなど、多くの企業が注目していることからも、その潜在性が伺えます。今後12〜24カ月は、これらの市場に集中する予定です。

 しかし、これらの展開には課題もあります。特にアメリカ市場では競争が非常に激しいです。コロナ禍の影響で多くの企業がすでにレストランを自社のプラトフォームに取り込んでおり、私たちは後発組という立場です。既存のプラットフォームを置き換えるのは簡単ではありません。

 そこで私たちは、3つの戦略に注力しています。まず、製品の優位性を確立すること。より優れた製品があれば、顧客の心をつかむことができます。次に、先ほども述べた卓越した顧客サポートとサービスの提供。そして最後に、競争力のある価格設定です。つまり、より良い製品、より速い対応、より良い価格設定、この3つが私たちの戦略の柱となっています。

―日本企業とのパートナーシップはどのように考えていらっしゃいますか。

 私たちは全ての市場で多くのパートナーと協力関係を築いています。まずはPOSパートナーです。私たちのソリューションはPOSシステムと連携するように設計されています。ですので、POSプロバイダーとは競合するのではなく、むしろ補完し合う関係を目指しています。

 次にリセラーパートナーです。彼らは各市場の言語や文化に精通した企業で、私たちの製品やサービスを販売してくれます。特に新しい市場に参入する際、短期間でその市場特有の経験やノウハウを獲得するのは非常に難しいものです。だからこそ、日本のような新市場では、現地のパートナーとの協力が不可欠だと考えています。また、システムインテグレーターも重要なパートナーとなり得ると考えています。

 まだ正式なパートナーシップを結んでいる日本企業はありませんが、市場を理解したあと、できるだけ多くのパートナーと協力関係を築きたいと思っています。

―御社の長期的なビジョンと、将来的な日本のパートナーに対するメッセージをお願いします。

 私たちの長期的なビジョンは、テクノロジーを活用してレストラン業界全体をより良いものにすることです。常に、レストランの収益性向上に貢献するソリューションの開発に力を注いでいます。実は、私自身も6年間レストランを経営していた経験があるからこそ、レストラン事業がいかに難しいビジネスであるか身をもって理解しています。すべての支出が重要で、1ドル1ドルが大切なのです。そこで、私たちのテクノロジーが貢献できると確信しています。

 日本市場への参入については、本当にわくわくしています。文化的な面でも非常に魅力的だと感じています。インドと日本の文化には、互いへの敬意や名誉を重んじるという点で多くの共通点があると思っています。サブウェイでの展開を皮切りに、日本市場でさらに多くのパートナーシップを築いていけると考えています。すでにUber EatsやWoltとの統合も実現しています。これからもっと多くの方々と知り合い、新たなパートナーシップを結んでいきたいですね。

image : UrbanPiper

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