アニメ好きの花冷え。が本気で挑んだ!『もめんたりー・リリィ』との強烈なシナジー
メタルコア、ハードコアを昇華させたオリジナルジャンル「HARAJUKU CORE」を核に、 秋葉原カルチャーをも内包した、完全新感覚ハイブリッドガールズバンド、花冷え。の、世界で活躍するバンドのメンバーは、ユキナ(Vo)、マツリ(Gt&Vo)、ヘッツ(Ba&Cho)、チカ(Dr)の4人。
そんな彼女たちの初アニメタイアップ楽曲となる「おいしいサバイバー」は、TVアニメ『もめんたりー・リリィ』のオープニングテーマとなっている。ここでは、その楽曲の魅力に迫っていきたい。
【写真】『もめんたりー・リリィ』&花冷え。の強烈なシナジー/コラム
心温まる「割烹」シーンから感じる少女たちの絆
2025年冬アニメとして放送されたオリジナルアニメ『もめんたりー・リリィ』。アニメーション制作はGoHandsが手掛けている。(アニメイトタイムズでも1・2・3話放送後にインタビューを掲載)
GoHandsといえば、背景3DCGを駆使したカメラワークとバトルアクション、そしてきめ細かな髪の動きなど、作画に定評がある制作会社だ。『好きな子がめがねを忘れた』や『デキる猫は今日も憂鬱』という日常作品も手掛けていた。
『もめんたりー・リリィ』は、人がほとんどいない世界で、あらゆる生命体を消滅させたという機械仕掛けの侵略者“ワイルドハント”と、少女たちが戦うディストピア作品。GoHandsの得意とする大胆なカメラワークとバトルアクションが活かされている作品なので、まだ観ていないアニメファンは、その魅力が凝縮されている、第1話のオープニングアニメーションとAパートをぜひ観てみてほしい。
バトルだけでなく、少女たちの絆が描かれていて、そのキーワードとなるのが「割烹」シーンだ。非常食を材料に、美味しい料理を作ってみんなで食べるのだが、その日常感、コメディ感が、非日常な世界の中で心温まる空気を演出している。要するに、アニメーション制作会社としてこれまで培ってきたものを発揮したオリジナルアニメ、という見方もできるかも知れない。
アニメへのリスペクトに溢れた新曲「おいしいサバイバー」
そして、そのオープニングテーマを担当しているのがガールズバンド、花冷え。だ。日本を代表するロックバンドであるマキシマム ザ ホルモンが、バンド結成のきっかけとなったということから、音楽の方向性は想像できると思うが、ただ、メタルやハードコアといったジャンルで括るというより、もっと独自の世界を持っているバンドという印象を受けた。いろいろな要素を柔軟に取り入れた幅広い音楽性を持っていて、サイバーな世界観の曲があったり、ポップセンス抜群のメロディが出てきたり、激しいサウンドの中にも、聴きやすさがあるのだ。
また、大きな魅力のひとつとして、ユキナのボーカルがある。かわいらしいラップボーカルとデスボイスという、まったく印象が異なるボーカルを自由自在に行き来する技術は圧巻。その上、ギターのマツリによるメロディアスなクリーンボーカルも武器として持っている。この2人でボーカルを取ることで、ツインボーカル+シャウトという、唯一無二の世界を創り出している。
コロナ禍、SNSの拡散力によって、世界にまでその名を轟かせた花冷え。は、2023年から、国内だけでなく、積極的に海外公演も敢行している。彼女たちの楽曲は日本語詞が多いのだが、バンド自身も「HARAJUKU CORE」と自分たちを表現しているように、そこに、“かわいい”とか“オタク”とか“アニメ・ゲーム”といったジャパニーズカルチャーを感じる。海外での人気は、サウンドだけでなく、そういう彼女たちの音楽性が受け入れられているということなのだろう。
で、ジャパニーズカルチャーとして海外で人気のコンテンツと言えば、やはりアニメやゲームだ。花冷え。自身も、アニメ好きとインタビューなどで明言していたものの、これまでアニメのタイアップ楽曲はなかった。そんな中、待望の初タイアップとなった作品が『もめんたりー・リリィ』となる。かわいい女の子たちがいかつい武器を持って戦うという意味では、花冷え。との親和性は、とても高い。
そして、OPテーマ「おいしいサバイバー」は、彼女たちがアニメをリスペクトして書き下ろした楽曲だというのは、すぐに分かった。サイバーな雰囲気もありつつ、激しいメタルサウンド、ツインボーカル&シャウトの魅力など、彼女たちのアイデンティティをガッツリぶち込んでいる楽曲ながら、歌詞で、『もめんたりー・リリィ』の要素を、これでもかというほど盛り込んでいるのだ。
登場キャラクターの要素である、河津ゆり(CV.阿部菜摘子)の口癖「どんどん」、高台寺えりか(CV.桜木つぐみ)のお姉さん口調、薄墨ひなげし(CV.若山詩音)のゲーム要素、霞れんげ(CV.村上まなつ)の決めセリフ「割烹」、吉野さざんか(CV.久野美咲)の四字熟語、咲耶あやめ(CV.島袋美由利)の口癖「ギルティ」を、89秒という短いアニメサイズで、すべて消化し切っているところがすごすぎるし、これこそ彼女たちのアニメカルチャーへの愛だろう。アニメサイドも、その愛を受け止め、バトル・コメディ・割烹の要素が詰まった最高のオープニングアニメーションを作り上げていた。
CDは3月12日にリリースされているが、カップリングでは昨年リリースした楽曲のリミックス「O•TA•KUラブリー伝説– WAZGOGG Remix」を収録。アニメやゲームといったカルチャーに対するリスペクトを、ここでもしっかりと表明している。
また、本作のジャケットは、ゆりとれんげが背中合わせで笑っているアニメイラストを使用。作品の魅力が詰め込まれたジャケットとなっている。
そして、2025年も多くの海外公演が決定している花冷え。。国内では、5月31日にKT Zepp Yokohamaで、自主企画『花冷え。pre.春の大解放祭 2025』を開催。ライブは音源で聴く印象より、さらに激しくなり、ヘッドバンキングをしまくる、すさまじい熱気に包まれるものになると思うので、筋肉痛に注意しつつ、こちらも思い切って、体感してみてほしい。
[文・塚越淳一]