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なぜ、イカメタルには複数のロッドが必要なのか?名手の状況別タックルセレクト術

つり人オンライン

刻々と変わる水深、潮の速さなど…イカメタル&オモリグで、そんな「変化」をどう攻略する?ヤマガブランクスの新ロッド「バトルウィップ」と共に、状況に応じたタックル選択と活用術を実釣解説。

写真と文◎加来智徳(YAMAGA Blanks)

変化を味方につけるためのイカメタル&オモリグロッド

ここ数年、人気と勢いを見せているオフショアゲームのひとつが、夏から秋にかけて盛期を迎えるイカメタルおよびオモリグである。その人気の背景には「タックルがシンプル」「ゲーム性の高さ」「食味のよさ」、そして「酷暑の日中を避けて楽しめるナイトゲーム」といった魅力がある。ライトタックルで気軽に始められる一方で、タナ取りや誘いのテクニック、潮流変化への対応力といった奥深さも併せ持ち、年々ファン層は拡大傾向にある。

筆者の地元・九州エリアでも、玄界灘をはじめ、鹿児島県・枕崎沖や甑島周辺、長崎県・アジ曽根など、各地でこのゲームを楽しむことができる。出船する遊漁船も多く、イカメタル・オモリグは夏の風物詩となっている。

今回は、ヤマガブランクス・フィールドスタッフの船津さんとともに2024年9月に行なった釣行の模様を通じて、「バトルウィップIM/OR」に新たに加わったイカメタル&オモリグモデルの活用術を紹介していきたい。

ベイトタックルから始める理由

アジ曽根は世界遺産・軍艦島から南西へ約37kmに位置する一級の漁場で、ジギングや泳がせ釣りによるカンパチや大型根魚ねらいをはじめ、カツオのキャスティングゲーム、中深海ジギングまで、実に多彩なオフショアゲームが展開されている。イカメタルの好ポイントとしても知られ、夏場になると長崎・熊本の両県から多くの遊漁船が集結する。

この日は日没前にポイントへ到着。水深90m前後のエリアにパラシュートアンカーを投入し、広大な瀬を広く探っていく展開となった。黒潮の分流の影響を受けるため、日によって潮が激流になることもあれば、まったく動かない日もある。刻々と変化する潮の状況に応じてイカメタルとオモリグの使い分け、仕掛けのウエイト調整、そしてロッドの選択が重要になる。

夕暮れ前、アジ曽根に到着。海面に沈む夕日を眺めながら、準備を進める。

この日、序盤は潮の動きが読めない状況だったため、船津さんはベイトモデルのバトルウィップIM511/Bを手に取った。ベイトタックルの大きな利点のひとつは、カウンター付きリールを使用することで水深を正確に把握できること。イカメタルゲームでは「その日のアタリ水深をいかに早く見つけるか」、そして「刻々と変化するレンジを正確に探り続けられるか」といった要素が、釣果を大きく左右する。もちろん誘いのパターンやスッテのカラー選択も重要なファクターではあるが、まずは正確な「レンジ攻略」がゲームの軸となる。そうした意味でも、とくに水深の深いポイントでは、まずはベイトタックル投入がセオリーだ。

実際、日没後に集魚灯の効果が出始めたタイミングで、船津さんはボトムから徐々にレンジを刻みながら誘いを入れ、45m付近でファーストヒットを得た。サイズこそ小ぶりではあったが、以降も終始そのレンジでアタリを捉え続け、安定して釣果を積み重ねていった。

ベイトタックルでレンジを丹念に刻みアタリが連発

イカメタルロッドに求められる本質的な性能

ここで序盤から感じていた二枚潮の影響が顕著に現われ始めた。上潮と底潮が異なる方向に流れる二枚潮の状況が強まると、ラインが大きく膨らみ、アタリが極端に取りづらくなる。加えてスッテ同士が絡むなど、イカメタルゲームにおいては最悪の状況のひとつだ。

これは全国どのエリアでも発生し得る状況であり、対処方法としてアングラーが最初に試すべきは、スッテのウエイトを重くすることだ。こうしたタフな状況下で頼りになるのが、高い感度と幅広いウエイトへの対応力を兼ね備えたロッドだ。新機種開発にあたってまず突き詰めたのは「イカメタルロッドに求められる本質的な性能とは何か?」という問い。

その答えとして真っ先に挙がったのが「感度」である。これは多くのアングラーにとって最も共感していただける要素ではないだろうか。今回新たに加わった追加機種でも感度を最重視して設計を進めた。

ロッド全体の「スピード感」にもフォーカスした。レングスは5フィート後半のショートレングス設定とし、微細なアタリも即座に察知して掛けにいけるロッドを目指した。

そのうえでさらに求めたのがタフな状況下でも釣りを成立させる「状況対応力」だ。IM511/Bは、15〜50号という幅広いスッテに対応。取り回しのよさに加え、強い反発力を活かし、ヘビースッテも軽快かつ機敏にアクションできる操作性も併せ持っている。

中にはタイラバロッドなどで代用しているアングラーも見かけるが、潮流の変化やアタリを正確に捉えることが難しくなる。アタリが極小になりがちな二枚潮下では、適度な張りと明確な手感度を持つ専用ロッドの重要性が際立ってくる。

IM511Bは、状況が厳しくなるほどに真価を発揮する1本。

浅場ではスピニングタックルが活躍

二枚潮に苦戦し、さらにイカも小型サイズが多かったこの日のアジ曽根。釣行中盤に差しかかると、イカのアタリ水深がさらに浅くなり、10〜35mのレンジでヒットするようになってきた。

そこで船津さんは、スピニングモデルのバトルウィップIM511/Sにチェンジ。キャストで広範囲を探りつつ、35mまでの水深をテンポよく探っていく作戦に切り替えた。浅場にイカが浮いた状況や、ボトムを探る機会が多いデイイカメタルでは、スピニングモデルが優位となる場面も多い。とくにキャストによって広範囲を探れ、シェイキングなど多彩な誘いを軽快にこなせるショートレングスのスピニングタックルは、1本持っていると明確なアドバンテージとなる。

IM511/Sも状況対応力を備えつつ、さらに感度を特化させた設計となっている。自重80gという軽さで微細なアタリを明確に感じ取り、フッキングまでのレスポンスも極めてシャープ。ティップには他モデル同様にカーボンソリッドティップを採用。目感度と手感度の両立によって、極小のアタリもしっかりとアングラーに伝えてくれる仕様だ。

IM511Sは2500番クラスの軽量スピニングとのバランスが抜群で、繊細な操作も思いのまま

イカメタルで手に負えないならオモリグの出番

イカメタルと並び、近年その存在感を増しているオモリグの強みは、なんと言っても「シンカーの重さを柔軟に調整できること」、そして「長い枝スによってエギを安定させられること」にある。これが最大限に活きるのは、メタルスッテではもはや対応しきれない速い潮流や二枚潮だ。

たとえば山陰エリアのように激流かつアンカリングスタイルの釣りや、今回のような深場で二枚潮がきつい状況では、明らかにオモリグのほうが釣果に繋がりやすいと感じた。とくにラインが大きく斜めに払い出されるような場面では、枝スの長さが生むエギの安定感が大きなアドバンテージとなる。また、荒天による船の揺れがエギに伝わりにくい点も、長い枝スならではの強み。

激流攻略の切り札「オモリグ」。長めの枝スと重めのシンカーが、激流下でもエギをしっかり泳がせる

そして釣行も終盤、さらに二枚潮がきつくなり、水深75〜80m付近でアタリが出始めたタイミングで、船津さんが投入したのがベイトオモリグ専用ロッドバトルウィップOR60B/C。オモリグと言えばスピニングタックルが主流だが、このOR60B/Cは次に書くようなベイトタックルの特性を活かした設計により、さらに戦略の幅が広がった。

ベイトオモリグの主なメリットは、

ヒットレンジを正確にキープできること巻き上げ力が高く、長時間の釣りでも集中力を維持しやすいこと重めのシンカーを楽にキャストでき、広範囲を効率よく探れること

OR60B/Cは、ショートレングス&オールチューブラー設計によって、微細なアタリや違和感をダイレクトに伝える感度を実現している。釣行の終盤、アングラーの集中力が試される時間帯でも、船津さんはこのロッドでボトムに張り付く良型のイカを見事に釣りあげていた。

潮流の変化に即応しながら、オモリグの強みを最大限に引き出すベイトタックル

こうして、序盤・中盤・終盤と刻々と変化する状況に対応しながら、確実に釣果を積み上げ、2024年のイカメタルシーズンを見事に締めくくる釣行となった。

イカメタルゲームで筆者が最も面白いと感じるのは「状況の変化に対応し、その結果として釣果に繋がった瞬間」だ。そのためには経験値はもちろん、状況に応じたタックルの選択がカギになると思う。2025年のイカメタルシーズンも、ぜひ変化を味方につけながら、新たなスタイルにチャレンジしてほしい。それが、イカメタルの世界をより深く、より楽しくしてくれるはずだ。

※このページは『つり人 2025年8月号』を再編集したものです。

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