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「障害のない自分に生まれ直したい」小3での障害告知。涙する息子の「一筋の光」となったのは【専門家アドバイスも】

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「障害のない自分に生まれ直したい」小3での障害告知。涙する息子の「一筋の光」となったのは【専門家アドバイスも】

監修:初川久美子

臨床心理士・公認心理師/東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち

就学のタイミングでの障害告知は……まだ早い?

息子のスバルは1歳半健診で言葉の遅れを指摘され、2歳から何度か受けた発達検査では「言葉が遅いだけ」と診断されました。3歳になり言葉が溢れたもののASD(自閉スペクトラム症)と診断され、現在は自閉症・情緒障害特別支援学級に通っています。

特別支援学級に通うと決断した時、お友だちとは少し違う道に進むことをスバルに説明する必要がありました。当時、幼稚園の年長クラスだったスバルは、みんなが当たり前にできることが自分にとっては難しかったり、先生のサポートが必要であることに気づいた時期でした。そのせいもあり「みんなと同じでありたい」「みんなと同じことがしたい」という気持ちが強く出ていました。

そんな時期にみんなと同じではない少数派の道へ進むという話は、きっとスバルを傷つけることになるので慎重になっていました。
この時に「ASD(自閉スペクトラム症)」や「発達障害」などの言葉を使っていわゆる障害の告知を同時に行うべきか悩みました。スバルはきっと「なぜ自分がお友だちとは違う特別支援学級に行くのか」という理由を知らなければ納得してくれないと思ったからです。

しかし障害の告知をするのはまだ早すぎると思いました。私は、スバルが3歳でASD(自閉スペクトラム症)と診断された時「この子には障害があるのだろう」と納得してその日を迎えました。なんなら「早く療育とやらを勉強したいな」なんて前向きな気持ちでした。でもいざ目の前に「発達障害」「障害者」などの言葉が書かれた書類を置かれた時、私は呼吸ができなくなるほど泣いてしまいました。

「ASD(自閉スペクトラム症)」や「発達障害」などの言葉は、たった3年前に話し始めたばかりで、ぷくぷくほっぺで、牛乳を飲んだら口の周りにヒゲができちゃう6歳のわが子にはまだ重たすぎると思いました。

結局この時は障害の告知を行わず、遠回しに「視力の弱い人が眼鏡を使うように、足が不自由な人が車椅子を使うように、スバルの苦手なことを助けてくれるクラス」というような説明をしました。やはりスバルは納得しきれず、入学するまで何度か「みんなと同じクラスが良かった」と呟いていました。

特別支援学級に入学後、近所の6年生のお兄さんに言われた言葉を聞いて

入学後は特別支援学級に仲良しの友だちができ、みんなそれぞれ苦手がありながらも工夫し、時には助け合う生活を通して「みんなと同じ」に対するこだわりが薄れていきました。特別支援学級は居心地の良い居場所になりました。

そんなある日、スバルは学校の帰り道がたまたま一緒になった近所の6年生のお兄さんに「スバルくんは特別支援学級なんだ。じゃあ何か障害があるの?」と聞かれ、スバルは「ないと思うけど……」と答えたそうです。

帰宅したスバルからキョトンとした顔でそんなエピソードの報告を受け、いつか「ぼくって障害があるの?」と聞かれた時のために準備だけはしておかなければならないと思いました。

障害告知の準備

それからインターネットやSNSで先輩たちの障害告知エピソードを読み漁りました。その中であるエピソードに出合いました。

得意分野で活躍している発達障害がある人のドキュメンタリー番組を家族で観ている時に「ぼくってこの人と似ているところがいっぱいあるね。もしかしてぼくも発達障害?」と聞かれ「そうだよ」と答えたというエピソードです。

このエピソードは発達障害のマイナス面から告知がスタートしないので、とても良いなと思いました。そして『「ぼくはなんでみんなと同じようにできないんだ!もしかして発達障害?」「そうだよ」』のようなマイナス面から始まる告知はどうにかして避けようと思いました。

障害告知により、おそらく目に見えない何かを背負うことになると思いますが、少しでもそれを軽くしたいのです。できることなら、その時はもう少し先の高学年くらいの年齢だと良いな、と思いました。

スバル小学3年生。障害告知の時がきた……!?

スバルが3年生になったある日、テレビを観ていると、医療的ケアが必要な小学生が小学校に通う様子が映されました。スバルは同じ年齢の子が困難に立ち向かいながら学校に通っていることに感動していました。その番組の中で放課後等デイサービスが登場しました。

スバルも放課後等デイサービスに通っているので、少し驚いた顔で「ぼくもこの子と同じ病気なの?」と聞きました。私は「違うよ」と答え、ついにこの時がきたか!と覚悟しました。しかしスバルから次の言葉はありませんでした。(えっ。この場合は私から切り出したほうが良いの……?)と悩んでいるうちに話題が変わってしまい機会を失いました。

翌日からスバルは図書室の本やインターネットでいろいろな子どもの病気を調べ始め、気になる症状を見つけるたびに「ぼくってこの病気?」と聞くようになりました。私は「違うよ」と答えました。スバルの質問に対して年齢に合わせてぼんやりとした表現でごまかすことはありましたが、嘘はつかないと決めていたのでこのままASD(自閉スペクトラム症)や発達障害にたどり着いたら正直に話をしようと思っていました。しかしなかなかたどり着きませんでした。

スバルはまごうことなきASD(自閉スペクトラム症)なのですが、多岐にわたるチェック項目と照らし合わせると微妙に当てはまらない項目が多いのです。それから数週間後にとうとう「ぼくって発達障害?」と聞かれました。その顔は「まあ違うだろうけど、一応聞いておこう」くらいの軽い表情でした。

逆に言いづらい……と思いながらも「そうだよ」と答えました。スバルは目を見開いて固まり、明らかに動揺していました。

私はずいぶん前から話す言葉を用意していたのに、いざ説明を始めるとしどろもどろになりました。

説明するにあたりASD(自閉スペクトラム症)からくる不得意面は避けて通れませんでしたが、好きなことに対する集中力や記憶力、発想の面白さについてもたくさん話し、ポジティブな言葉が中心に来るように気をつけました。

それからスバルに写真と本を見せました。3歳の頃のスバルが部屋中に車を並べている写真と発達障害の本の挿絵に描かれた車を並べる男の子のイラストです。それまで硬い表情で聞いていたスバルでしたが「これはぼくだ!」と言って笑いました。

将来の不安に涙する息子。息子の「一筋の光」になったのは……

告知して良かったと思うのは、スバルが苦手なことに対して解決方法を相談できるようになったことです。

同じような苦手を抱えた人の対策例を調べ「これは人目が気になる」「これならできるかも」と前向きに話し合っています。
以前なら「なんでみんなと同じようにできないんだ」と嘆いていたようなことも「じゃあどうすれば良いかな」と日々の不安に対して少しだけ肩の力が抜けたように感じます。

逆に発達障害があると知ったことで、将来に対する不安を口にすることも増えました。「なんでみんなと同じようにできないんだ」と思っていたことが障害によるものなら大人になってもできないままなのではないか。それによって将来、部活選びや学校選び、就職にも影響があるのではないか。自分が進む道はこの先に繋がっていないのではないか。

そんな不安を拙い言葉で話し「お母さんのお腹に戻って障害のない自分に生まれ直したい」と泣きました。どんなに愛を伝えたって、どんなにスバルの良いところを並べたって不安がなくなるわけではありませんでした。

ある時テレビに映った有名人を見て「この人は発達障害を公表している人だよ」とスバルに教えました。スバルもいろいろな番組で見たことがある人だったので驚いていました。それから2人でインターネットで発達障害を公表している有名人を調べました。さまざまなジャンルで活躍されている方々が出てきて、2人で驚きました。

発達障害がある人もない人も同じように何かを成し遂げられるという事実が、スバルにとって一筋の光になりました。

もちろん不安は消えないし落ち込む日もありますが、将来に対する前向きな言葉が増えました。今のスバルの心の中には「発達障害があってもこの道の先にはたくさんの道が繋がっている」という気持ちがあると感じています。

執筆/星あかり

(監修:初川先生より)
スバルくんの障害告知に関する迷いや準備、実際にされてみての感触、その後のスバルくんの様子まで、一連の流れあるエピソードをありがとうございます。今回のエピソードは、同じようなテーマで悩む保護者の方にとってとても参考になる内容だと感じます。また、これまでのスバルくんの育ちや園生活のいろいろを歴代コラムで拝読してきた者としては、「スバルくん、ここまで育ったのか……!」ととても感慨深くも感じました。

さて、障害告知に関してですが、タイミングと内容についてどうしたものかと悩まれる保護者の方は多くいらっしゃいます。あかりさんが考えられたように、通常学級とは違うクラスに入学する(あるいは転籍する)といったタイミング、また現状に苦戦が募ってきたタイミングなどに告知をすることで本人の努力不足などではなく、どうしても苦手なことがあること、ただ、支援や手助け、工夫によってそこは乗り越える・うまく付き合うことができるかもしれないこと、だから本人の協力や理解が必要となるような場合に告知を検討されるかなと思います。

今回、あかりさんがされたように、まずは障害名を伝えるのではなく、苦手がある・それを助けてくれる場があるなどの説明であったり、あるいは、「こんなところが得意だけど、こんな苦手があって、その差がとても大きくて、つらいときがあると思うんだよね」など、得意不得意がある(苦手のレベルが激しかったり、得意と不得意の差が大きかったり)といった説明から入ることがまず1つの方法としてあります。

私もまずはこうした説明をすることをお勧めすることが多いです。お子さんが自分のことを客観的に理解することはある程度の年齢にならないと難しく、また、苦手なことに日々苦しんでいる場合は客観的に自分というものを理解するよりも先に、「自分はダメだ」など、悲観的に感じていたり、傷ついていたりすることも多いです(いわゆる二次障害的な面でここは注意しておきたいところです)。苦手なことだけではなく、得意なことや好きなことなど、さまざまな面も一緒に伝え、自分というものの理解に奥行を持たせるイメージで説明できるといいなと感じます。

自己理解をしていくことは、一度きりの話ではなく、成長過程でずっと続けていくことです。その1つの段階だと捉えると良いと思います。その中で「発達障害」や診断名に関しては、その扱いを慎重にされたほうがいいと思います。その言葉の意味がまだ理解できない、あるいは誤って伝わっている場合もあります。そして一度の告知でそこまで扱おうとすると情報量が多すぎて処理しきれないという現実的な課題もあると思います。あかりさんがされたような段階をふむことはとても大切な手立てです。

ただ、生活していく中で、どうしても「障害」という言葉にふれたり、自分で気づく場合もありますが、周りの人にそう言われてしまうこと(悪気の有無にかかわらず)もあります。今回も上級生との会話からそうした話が入ってきました。そういうタイミングはいつ来るかわからないですし、お子さんの発達段階によってはそういう不意なタイミングではなくそろそろその話を理解できそうだという時かつ、そうした話題が世間的に扱われやすい時期(例えばニュースの特集で扱われた、そうしたテーマのドラマがあったなど)などに、「障害」について話をしていくことがあるように感じます。

まずは、そうしたタイミングが来てもいいように、“説明する言葉”を保護者自身が持っておくことが大切だと思います。教科書的な説明のみならず、保護者の理解として何を伝えたいかを考えておく、お子さんにできるだけ齟齬なく伝わる言葉や説明を考えておく。そんな準備ができるとよいでしょう。医療機関で主治医の先生に相談してみるのも1つですし、学校の先生や、相談機関にかかっている場合は担当のカウンセラーと一緒に考えるのも良いと思います。主治医から説明してもらう、お子さんと保護者で一緒に障害理解の絵本を読んでみるなどのやり方もあります。

そしていよいよ伝えた際に、一度で全て分からせようとするのではなく、都度説明を加えながら、少しずつ理解できるように(一度の説明を何度かで咀嚼しながらのみ込めるように)、そんな心づもりも大事だと思います。スバルくんのように、告知して良かったこともあれば、将来に対する不安がふくらんでつらくなることなど、さまざまな反応・影響があると思います。特に、つらそうな反応をされると保護者もつらくなることもあると思います。不用意に告知してそうなったなら、(不用意に)告知したことを反省したら良いとは思いますが、準備も相談も葛藤も覚悟もして告知した場合には、告知そのものをしなければ良かったと反省するのではなく、その次の段階に進んだのだということを心に留め置きたいところ。子どもからしたら、まだ分からないことが多い「障害」というものに不安になるのは当然ですし、障害がなくとも自分の人生がどうなっていくかなんて誰にも分かりません。

一つひとつの不安を受け止め、今できていることを確認しつつ、地に足を付けて深呼吸しながら進んでいくイメージで対応されるとよいと思います。そういう意味で、お子さんと障害告知に関する話をするぞ(したぞ)という際には、担任の先生や関係する支援者の方々にもお知らせいただき、一緒に見守っていけるといいと思いますし、保護者の方もきっと心強くなられるのではと思います。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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