ニュージーランドで山に人と同じ権利が。世界に広がる「自然の権利」
ニュースキャスターの長野智子がパーソナリティを務める「長野智子アップデート」(文化放送・月曜日~金曜日15時30分~17時)、2月19日の放送に毎日新聞論説委員の小倉孝保が出演。ニュージーランドで山に人と同じ権利が認められた、というニュースについて解説した。
鈴木敏夫(文化放送解説委員)「ニュージーランドで1月30日、山が人間と同じ法的権利を持つ、というタラナキ山の集団救済法案なるものが可決されました。山などの自然は祖先であり生き物である、という先住民マオリの世界観が認められたかたちです。なぜこのような法律が生まれたのか、今後どうなっていくのか、解説していただきましょう」
小倉孝保「僕は先々週かな、毎日新聞のコラムに書いて。結構、反響があったんです。恐らく日本のあちこちで自然破壊が進んでいることを危惧する人が多いんでしょう。本来、日本はこういう話し合いをしたらいいのでは、という反応を何人かからもらいました」
長野智子「そうでしたか」
小倉「ニュージーランドって北と南に島が分かれていて。北側の島の南にタラナキ山はあるんです。写真を見ると、ものすごくキレイで富士山みたいな山です」
長野「(写真を見て)あ、富士山に形が似ている!」
小倉「山好きの人にはそういうことで有名みたいです。『ラスト サムライ』という映画あったでしょう。あの辺で撮影をした。少し日本に似ているからじゃないですか。標高2518メートルだから富士山より低い。地元の先住民族マオリの人々からすれば神なる山みたいなものだったわけです。そこにイギリス人が移り住むなどして白人主導の国ができていく。ニュージーランドではここ10年や20年かけて、先住民族の権利をしっかり守っていこう、という動きが高まっていて」
長野「はい」
小倉「たとえば言葉を残そう、文化を残そう。そのうちのひとつの流れが(これ)。マオリの人たちは昔から、自然を自分たちと同じ人格、権利を持った存在、という考え方で来たみたいです。僕が考えるに、これって日本人は理解しやすいんです」
長野「そうですよね」
小倉「日本が明治維新で開国して、欧米から学んだから法律体系はヨーロッパの法律が入ってきたから、たとえば権利を主張する、というのは人間もしくは法人ですよね。ニュージーランドは自然物にも。今回は山ですけど、その前もたとえば『自然区域に権利を与えよう、義務も課そう』。山は主張できないじゃないか、というのがあるけど」
鈴木「はい」
小倉「調べたら、1970年代の初めにアメリカの環境活動家でありカリフォルニアで学者を『自然にも権利を与えよう』という動きを始めているんです。50年経っていろんな国がやりだした。今回はニュージーランドの国会がこういうことをしたから話題になりましたけど、たとえばアメリカのペンシルベニア州の小さな村、南米の国に憲法でそういうことを書く国が出てきた。これは司法判断で若干分かれているけど、インドのガンジス川にそういう権利を認めるべきでは、という議論も出ているんです」
鈴木「聖なる川」
小倉「では、どう自然物の権利を主張するか。今回のニュージーランドの場合は、具体的には恐らく、委員会みたいなものをつくって、先住民や地元の人やいろんな人が入って、山だったら権利を主張してくるか。人間って人類中心の考え方をするから、少々、自然物を傷めても結果的に人間の幸せにつながるなら進めよう、と流れがち。マオリの人たちはもともとそういう考え方ではなかったようなんです。一歩引いて、人間にはいいかもしれないが山にとってはどうなの、というのでいろんな判断をしていこう、ということのようです」
長野「山の主権は山にある」