奥深い珠算の世界で成長する内田さら(大分商業高3年) 【大分県】
「第71回全国高校ビジネス計算競技大会」と「第76回全九州高校ビジネス計算競技大会」の県予選で団体優勝。九州大会、全国大会では共に準優勝に輝いた大分商業高珠算部。その部の中心に立ち、部員を引っ張るのが部長の内田さら(3年)だ。
そろばん教室に通い始めたのは4歳の頃。最初は数字を書く練習からスタートした。初めての大会は小学2年の時。大分県が主催する「そろばんコンクール」で3位になったが、同じ教室に通う友達に負けて悔しかった気持ちは今でも鮮明に覚えている。その後も検定に落ちるなど、落ち込むこともあったが、そろばんの楽しさの方が強く、そろばんをやめることなく自分と向き合った。「もっと、そろばんの世界を極めたい」という思いから大分商業に入学。その影には憧れの人の存在があった。「参加する大会で、卒業生の清家香穂さんとの出会いがあった。珠算の実力を含め、すべてが雲の上の存在だが、私もあんなふうになりたいと思った」。憧れの先輩の背中を追いかけた内田は、1年の頃から自分の弱点を克服するため猛練習。顧問の桑代智代教諭に相談しながら、苦手な応用計算を中心に人の何倍も問題を解き続けた。
「全国高校ビジネス計算競技大会」で2年連続準優勝
そんな努力が実を結び、2年生で大会メンバーとなり、全九州高校ビジネス計算競技大会で優勝する。それは大分県勢として63年ぶりとなる快挙。内田は「全員で涙を流し喜んだが、何よりうれしかったのは、メンバー外となった先輩に優勝旗を渡せたこと」と振り返る。「1年生の頃から、たくさんのことを教えてもらった先輩の分も結果を出したい」と挑んだだけに、その喜びは格別なものとなった。今年も同大会で準優勝と好成績を残したが、本人は悔しさをにじませる。「昨年の優勝もあり、今年は部長でもあったのでプレッシャーは大きかった。悔しくて泣いてしまったけど、全国大会で2年連続準優勝できたことは何よりの誇り」。引退後も部室に足を運び、後輩たちへ教えられることは全て伝えている。それは内田自身が先輩から受けた愛情や思いの表れであり、開校から続く珠算部の長い歴史を途絶えさえたくないという思いそのものだった。
珠算は自分と向き合う競技。3年間の部活動を通して内田は「大変なことも多かったが部長としての経験を経て、自ら進んで行動できるようになった。自分自身の成長につながった」と語る。将来は教員として母校に帰り、珠算部の顧問になることが目標だ。「桑代先生のようになりたい。いつも私たちのことを見てくれている。全国大会が終わった時、『頑張ったね』と抱きしめてくれたことは一生忘れない」
先生や先輩のアドバイスを聞き、毎日練習に励んだ
(塩月なつみ)