『ある魔女が死ぬまで』声優インタビュー連載第7回:メグ役・青山吉能さん |今回が最終回かと思えるくらい綺麗にまとまっていた11話。メグを演じる上で大変だったことは「全部」!?
2025年4月より放送中のTVアニメ『ある魔女が死ぬまで』(以下、ある魔女)。電撃の新文芸で刊行中の坂先生によるライトノベルを原作とした作品で、呪いによって余命1年を宣告された見習い魔女・メグと、その師匠である魔女・ファウストが過ごす日々が描かれます。
アニメイトタイムズでは、『ある魔女』に出演するメインキャスト陣へのインタビューを連載形式で更新中。
いよいよ放送もクライマックスとなる連載第7回では、主人公・メグを演じる青山吉能さんを直撃。物語の中心人物であるメグを演じる際に感じた重圧や苦労、アニメ第11話までに描かれたエピソードについてのお話をお聞きました。
積み重ねてきたメグの成長や仲間たちとの絆が形になったエピソード
──まず、第11話の台本を読まれた時の感想を教えてください。
青山吉能さん(以下、青山):今まで『ある魔女』って、一話完結型の物語が多かったんですけど、第11話では前後編みたいな形で物語が続いたことが衝撃だった、というのが最初の印象でした。
今までずっと同じ街の中で過ごして、どこかに行くことがあっても、また街に帰ってきて終わっていたので、すごく新鮮な感じもありましたね。
──演じ終えていかがでしたか?
青山:もう本当に、とても綺麗にまとまったお話だったなと。個人的には、もうこの回が最終回なんじゃないかと思えたくらいでした。
それくらいメグの色々な成長とか、皆との絆とか、今まで積み上げてきたものが形になってて、その上でこれからのメグにも繋がっていて、クライマックスに近い心境で演じていました。
──新キャラクターとして、七賢人の一人であるジャックも登場しました。
青山:今まで七賢人って呼ばれている人たちは女性が多かったので、「そりゃあ男性だっているよね」と。
その上でジャックは中井和哉さんが演じられていて、実際掛け合いもやらせていただきましたが、もう言葉に説得力があるというか、圧倒的な雰囲気を感じました。
ソフィさんも祈さんもエルドラさんもそうだったんですけど、特にジャックさんからパワーみたいなものを感じて、素直にカッコいいという印象を受けましたね。
──確かに、中井さんの声だと只者ではなさそうな雰囲気がすごいです。『ある魔女』では、男性のメインキャラクターというのは珍しいですよね。
青山:そうですね。終盤だったので、アニメとしてはゲスト的なポジションになってはいますが、七賢人みたいな重要なポジションで男性キャラクターが登場するのはジャックさんが初めてかなと。
ジャックさんが登場されたことで、またちょっと作品としての幅が広がったというか、生命の賢者であるジャックさんならではの視点のお話が聞けたのも印象的なエピソードでした。
──ファウストとメグの出会いについても明らかになりました。
青山:口止めされていたのに、院長さんから全部聞いてしまって(笑)。そんな話しちゃっていいのか、ちょっとツッコみたくはなったりもしましたけど、それを知れたからこそ、メグも自分が何をするべきなのかが初めて分かったと言いますか。
メグって、最初は「楽しければいいじゃん」みたいなところがあったと思うんですけど、今までいろんな人たちとの出会いを経て、自分が人のために何かできることがあるんだって気づきを得られた回でもあったなと改めて思います。
──過去を知ったことで、青山さんのファウストへの感情が変わった部分はありましたか?
青山:正直な話をすると、青山吉能としては最初から、ファウスト様が何の理由もなくメグを引き取るわけはないだろうっていう予想はあったんです。ただ、それはメタ的な見方なので、メグとしての演技には絶対反映しないように意識していました。
特に私は原作を読んでいたので、ファウストがなぜメグを引き取ったのかもずっと前から知っていたんですけど、初めて知った時には、「やっぱりそうだよね」っていう、自分の中の予想との答え合わせができた納得感があったのはすごく覚えています。
──ファウストはなぜメグに隠そうとしたんでしょうか。
青山:いろんな想いがあったと思いますが、メグに何も知らずにのびのびと暮らしてほしい願いはあったのかなと。それを知ることによって、メグの人生を縛ってしまう怖さみたいな部分もあったのかもしれないですね。
──『ある魔女』って、シリアスな空気感の中に唐突にギャグが入ることも珍しくないと思いますが、そうしたシリアスとギャグの急な切り替えには、お芝居として難しさもあるのでしょうか。
青山:あります。実際、めちゃくちゃ難しいです(笑)。
お芝居も普通の会話と同じで、相手の気持ちを受け取って返す、一種のキャッチボールみたいなところがあって、辛そうな人には共感して寄り添ったり、楽しそうな人には一緒に喜んだり、空気を読み合いながらやっていくんですけど、メグはあえてそれを無視するところが結構あるんですよね。
シーンの切り替えも早くて、1秒後には数日経っている展開も珍しくないので、そういう時の感情のコントロールってすごく技術がいることなんだなと、難しさを実感しながらの収録でした。
──本来は空気を読めるけど、あえてそれをしないところがありありますよね。現実でもそういうムードメーカーな人っていると思うんですが、青山さん自身はどんなタイプですか?
青山:いや、私はその人が病んでたら、完全に自分も一緒に病んじゃうタイプです(笑)。なのでメグみたいなタイプにはすごく憧れますね。
──ただ、メグが面白いことを言っても、スルーされることが結構あったり。
青山:そうなんです。最初は祈さんとかめっちゃツッコんでくれていたんですけどね(笑)。話が進むにつれ、段々スルーされる頻度が高くなっている気がしますね。
メグとの出会いが、新しい演技の引き出しを増やしてくれた
──『ある魔女』の収録は結構少人数で行われることも多かったみたいですが、第11話に関してはいかがでしたか? 今回はキャラクターもたくさん出ていました。
青山:確かにそうですね。アフレコの椅子もほとんど埋まるくらい人がいて、結構ドキドキしていました。
4人くらいで収録する時は、ブースのマイクをほぼ一人ずつ専用で使えるんですけど、第11話はすぐに次の人に譲らないといけなくて、「マイクワークってこうだったよな」と、忘れていた感覚を思い出したりしていました(笑)。
あと、人数が少ない時は1回でガヤを録りきれないので何回かに分けて収録してたんですけど、大人数だと1回で終わったりするという違いもありましたね。
──ソフィが初登場からは想像できない感じになっていたのが面白かったです。
青山:もう最初の頃とは比べ物にならないくらい感情を出してくれるようになりましたよね。わざとメグに冷たくするみたいなところもあって、メグとソフィがより親密になったからこその掛け合いみたいが見れたのも嬉しかったです。
第11話は結構シリアスなシーンも多かったので、祈さんやソフィと喋っているときは日常の穏やかな感じに戻った感じがあって、私自身安心できましたし、シーンとしても良い緩急になっていたと思います。
──いつのまにかフィーネとも仲良くなってもいたり。
青山:意外ですよね! メグだけじゃなく、フィーネもすごく人たらしなところがあるので、学校でも人気者みたいですから。メグ的には「そうやって皆私をおいて仲良くなっていくんだろうな」とか思ってるかもしれませんが(笑)。
──とはいえ、メグの方もいろんな子に粉をかけまくっていますよね。
青山:今回も「結婚しよう」とか言ってますからね……(笑)。ただ、もう言っても軽くあしらわれるのがお決まりというか、一種の芸風みたいな感じに定着しちゃってて、ちょっと切なさもあります。
──メグを演じることは大変だったと思うのですが、苦労したり印象に残っていることはありますか?
青山:いや、もう本当にメグは全部が大変だったっていう印象が強いです。
覚えているのは、第1話にメグの脳内会議みたいなシーンがあって、最初は勝手に一人で怒ったり落ち込んだりして、結構感情が自己完結してたんですけど、話が進んでいく内にソフィや祈さんと仲良くなって、自分の中じゃなく周囲に発散するようになってきている傾向があると感じていました。
個人的にはその変化は良いことだと思っていて、『ある魔女』って人同士の交わりがメインの物語だと思うんですけど、それを通してメグ自身にも変化が生じているのが嬉しいなと。
演じる分には、やっぱり最初の頃の自己完結していた時はとくに大変でしたね。掛け合いがないので、芝居の温度感を上げるのにもすごくパワーが必要だったんです。
──『ある魔女』は、キャラクターの登場に少し間があることも多いですが、収録に出ずっぱりだったのは青山さんと榊原さんくらいだったのでしょうか。
青山:そうですね。私と榊原さんの他は、カーバンクルの花井さんの3人だけだと思います。シロフクロウもいない回があったりするので。
実際の物語でも、少し前の話に出てきた家族の人たちが数話ぶりに再登場するような展開があるじゃないですか。私達キャストも同じような感じだったので、一話完結型だからこその、再会できた時の喜びは私自身の気持ちとしても感情移入しやすかった部分でした。
『ある魔女』って、1話のあとに何話か飛ばして見ても、ある程度ストーリーについていける作品ではあるんですけど、ちゃんと全部を追っていると「あの時の家族だ!」のように気がつける喜びもあって、いろんな楽しみ方ができる作品だと思います。
──全話に参加していると、ゲスト的に参加されるキャストの方から作品について聞かれることって多いんでしょうか。
青山:結構聞かれますね。ただ、私はその度にどこまで喋っていいのか悩むタイプで(笑)。
私は最初の頃から、ざっくり原作のどのあたりまで描くのかは聞いていたんですけど、結構ふわっとした理解だったのでちゃんとした説明はできなくて。さっきもお話したファウスト様とメグの過去エピソードとか、メグを演じる時には絶対意識しちゃ駄目だと心に蓋をしてるんですけど、それを皆に話してもいいのかとか、すごく考えちゃいますね。
──確かに、知らない方が演じやすいということもありますよね。
青山:そうなんですよ。しかもそれがその人の役によって結構違っていて、「この人には言った方が良さそうだけど、この人には言わない方が良さそうだな……」みたいなこともあったりして難しいですね。
──あえて原作を読まないキャストもいらっしゃるというお話も耳にしますが、青山さんはどんなタイプですか?
青山:私は、純粋に続きが気になって我慢できなくなるタイプなので、先に読む方です。でも、読み終わった後で「マジかぁ……!」みたいになって後悔することも結構あって(笑)。収録では頑張ってその気持ちに蓋をして、台本だけに向き合うように意識しています。
──『ある魔女』は、本当にメグのお話として描かれている作品だと思います。そんな作品で座長を務められることの重圧はありましたか?
青山:そうですね。やっぱりセリフの量でも、メグが中心になってお話を動かしていくであろうことは最初から分かっていたので、「自分に務まるんだろうか」みたいな不安は少しありました。
でも、原作や台本の中でものすごく生き生きとしたメグのセリフを読んでいく内に、メグに「どこまででもやっていいんだよ」と言われているような気になって。
文字で書かれていること以上に、本当のメグはもっと思いっきりやりたいんだろうな、みたいな気持ちが見えてきて、「ここは付け足してやってみよう」って気持ちが自然と湧いてくるような、不思議な現象がありました。台本や原作を読んだ時に感じた躍動感みたいなものに、私自身も引っ張られたというか。
──メグからの刺激みたいなのも受けながらの収録だったと。
青山:座長として100点を取ろうというよりは、とにかくメグとしてやれることを全部やりきろうみたいなスタンスでやらせていただきました。
でも今思い返すと、そのスタンスで取り組めたのは、他のキャストの方々がお芝居で支えてくださったからこそだという感覚があります。そういう意味でも、他のキャストの皆さんへの感謝の気持ちが強いですね。
──メグのような面白いキャラクターは、青山さんが結構得意とされている系統の役柄でもあると思うのですが、今回でよりレベルアップできたような感覚はありますか?
青山:『ある魔女』でギャグシーンをやる時に最初の頃から言われていたのが、「高いレンジでギャグを連発するんじゃなく、低いレンジも使ってほしい」というディレクションだったんです。
最初に原作を読んだ時、メグって結構ハイテンションな高いレンジでのギャグが多いイメージを抱いていたんですけど、いざ演じてみると、実は低いレンジでボソッと呟いたりするタイプも多いことに気づいて。
──確かに、シュール方向のギャグが結構あるんですよね。
青山:私はまだシュールギャグは習得しきれてなかったので、「ボケにもツッコミにも、こんなにバリエーションがあるんだ」と気づけたのは、メグのおかげの部分が大きいです。
音響監督の森下(広人)さんからも「低いレンジでも結構できるね」といったお言葉をいただけて、自分の演技の新しい引き出しを増やせたような実感はあります。
もし余命一年になったら、毎日外食をして悔いなく過ごしたい
──物語も終盤になりましたが、印象が変わったキャラクターはいますか?
青山:最初から好きだったんですけど、もっと好きになったという意味だと祈さんでしょうか。
私って基本的に強い女性キャラクターが好きで、祈もまさに自分の力で何もかも掴み取るタイプのカッコいい女性なんですけど、足が臭すぎるっていう弱点があって(笑)。よくありそうな「料理ができない」とかじゃなく、よりにもよって「足が臭い」っていうギャップが物凄くツボだったんです。
その上で、第11話ではアクアマリンまで一緒に旅もしましたけど、やっぱりすごくしっかりしていて、ブレない自分の軸を持っている人であることが改めて分かってきて。隣にいる祈に心強さを感じつつ収録させていただきました。
あとはもう、とにかく伊藤静さんのお声が素敵すぎる……! 隣で伊藤さんがお芝居をされていると、そっちの方向を向いて喋りたくなるんですよね。
メグがボケた時とか、めちゃくちゃ辛辣なツッコミが帰ってきたりするんですけど、それが本当に完璧で。私が真似ようとしても、絶対に到達できない声とか表現をすごく感じながら、贅沢な時間を過ごさせていただいていました。
──もしメグと同じように、青山さん自身があと一年しか生きられないとなったら、どういう風に行動されますか?
青山:実はそういう話、たまに他の人ともすることがあって、私は圧倒的に自分が死ぬタイミングを知りたい派なんですよ。
どうしてかというと、人生っていつ終わるか分からないじゃないですか。80年生きるかもしれないし、明日突然交通事故で死ぬかもしれない。そういう不明瞭なのが苦手なんです。
あとは私自身、いつでもいいことは先送りにしちゃいがちなタイプなのもあって、普段なら明日に回すようなことでも、残り時間が分かっていたら、やっぱり今日やろうと思い立ったりもするでしょうし、1日1日を無駄なく過ごすようになるんじゃないかなと。
──確かにその側面はありそうです。
青山:あとは食事とかも、忙しいとつい適当に済ませがちになっちゃいますけど、残りあと何回食べられるのかを数えたりしたら、1回1回の食事をすごく大切にしますよね。
だから、もし残りあと余命が1年と宣告されたら、もう毎日外食したいなと。一人じゃ入りにくかった店にもガンガン入って、テーブルマナーが守れていなくても知らんがなくらいの気持ちで、悔いのないように食べまくりたいです(笑)。
──ついに放送も残すは最終話のみとなりました。最終話の見どころをお願いします。
青山:きっとご覧になっている皆さんも、第11話を見て「いい最終回だった」と思っていらっしゃると思うんですけど、エルドラさんを始め、まだ残された謎があります。『ある魔女が死ぬまで』という作品がどんな結末を迎えるのか、最後まで見届けていただけると嬉しいです。
──ありがとうございました。
[取材・文/米澤崇史]