突然の帝王切開宣告。不安の中、覚悟を決めて挑んだ出産体験
6歳の娘・3歳の息子の子育てに奮闘中のママライター、Tomomiです。現在は、フリーランスのライターとして在宅ワークをする傍ら、週に数回ホテリエとしてホテルのフロント業務をかけ持ちしています。私が第1子を妊娠出産したのは、結婚から3年目の30歳。妊娠がわかってからはとても幸せな日々を過ごしていました。しかし、そんな私に想定外の「帝王切開」の判断が下されることになったのです。
願いも努力も虚しく、「予定帝王切開」が決まった日
3年間の不妊治療を経てようやく授かった第1子。想像以上につらかったつわりも腰痛も、そのすべてが幸せに感じられる日々を送っていました。頭の中で思い描いていたのは苦しくも幸せな「自然分娩」での立ち合い出産でした。そんな日々に暗雲が立ち込めたのは、妊娠29週目のとき。
大きな胎動はあまりなく、足で蹴るばかりの娘、そして蹴られる場所はいつも下腹部。不安は的中し、健診では「逆子であること」、「この週数で逆子だと、戻る可能性が低めであること」を告げられました。それからは、逆子体操やお灸に通い、外回転術などについて調べ、暇さえあれば携帯で検索をしていました。
自分の理想のバースプランが崩れ、ただただショックを受けたのを覚えています。「帝王切開は楽」「帝王切開は産みの苦しみを感じない」そんな心ない言葉が飛び交い、ネットで検索をすればするほど落ち込む日々。そんなとき、私を救ってくれたのは同じ経験・同じ思いをした友人やネット上の体験記事でした。ネットで落ち込み、ネットに救われ、一喜一憂しながらも刻一刻と出産の日は迫っていました。
命を守るために必要な「帝王切開」という選択!
逆子のため、予定より早く里帰りし、出産する病院を訪ねたのは妊娠34週目。とても丁寧にエコーをしてもらうことができ、ここで驚愕の事実が発覚しました。
娘の首には、へその緒が2周も巻かれていることが分かったのです。大きな胎動がないのは、身動きが取れなくなっているからだと告げられました。逆子発覚から出産までの8週間以上、娘もとても苦しかったのだなと、自然と「娘の命を守るため」に帝王切開をするのだと思えるようになりました。
もしもへその緒に気が付かず逆子で自然分娩を強行していたら…。娘の命はなかったかもしれないと思うと、医療機器の発達や多様な出産方法がある現代に出産できることに、感謝しかありませんでした。
そして、予定日前日に入院をし、翌朝麻酔の処置を行い手術室へ向かいました。手術室では緊張と不安で血圧が急上昇し、機器のアラーム音がさらに不安を煽りました。初めての下半身麻酔だったので、不安なことを伝えると、看護師さんが何度も声をかけてくれ、優しく手を握ってくれました。
手術室の天井を見つめながら待っている時間は永遠にも感じましたが、娘がお腹から出てきたときの喜び、産声を聞いたときの感動、胸に抱いたときの温かさは今でも忘れられません。元気な娘に会えた喜びで、出産の方法はどちらでも良いのだと思うことができました。
家族の支え、麻酔と痛み止めで乗り越えた産後の激痛
感動の出産を終えた安堵感からか、下半身麻酔の影響からか、娘を胸に抱いた直後からの数時間、私は意識が飛んでしまっていたようです。目覚めたときには病室で、夫と両親が心配そうに私を見つめていました。その後半日は意識がもうろうとし、下半身の不快感に苦しみながらも、家族と生まれたばかりの娘との時間を過ごしました。
夜になると麻酔が切れ始め、手術跡が痛み始めました。ここから数日間は痛みとの戦いです。背中に入れられたチューブから定期的に麻酔を入れ、ベッドから起き上がる、歩く、トイレに行く練習でした。院内では、同じように帝王切開をしたママさんの、よろよろと前傾で歩く姿を見て思わずお互いにニッコリ。
退院してからも痛みは続き、痛み止めを飲みながらの授乳やお世話。普通に歩けるようになったのは、産後20日目位だったでしょうか。洗濯などの手を上にあげる家事はつらく、里帰りを選択して本当に良かったと感じながら、母のサポートを受けて過ごした1ヶ月でした。
「帝王切開は楽でいいね」そんな言葉に苦しんだ私。でも、実際に経験してみて、「楽な出産なんてないのではないか?」と思いました。命を懸けて、麻酔や手術の恐怖と闘い、産後の痛みとリハビリを乗り越え、娘と元気に退院できたことを、今ではとても誇りに思っています。
現在6歳になる娘に、お腹の傷について聞かれたことがあります。出産には自然分娩と帝王切開があること、娘はお腹から生まれてきたことを説明すると、傷を優しく触り、「ママ痛かったね、頑張ったね」と褒めてくれ、思わずジーンとしてしまいました。今では、私にとって帝王切開の傷は立派な出産の勲章です。
37週6日、予定帝王切開で出産した我が子は、体重2780g・身長47cmの元気な女の子でした。自然分娩に憧れたり、帝王切開にショックを受けたり、帝王切開という出産への偏見に苦しんだりと、妊娠・出産期間中に感じた葛藤は、今となってはとてもいい思い出です。出産は十人十色で、どの出産も命がけで尊いものだと思います。たくさん悩んで向き合ったからこそ後悔はないし、何より、我が子を胸に抱いた瞬間に、そんな悩みは吹き飛んでしまうほどの幸せを手にすることができました。今では、「帝王切開」は命を守る立派な出産だと胸を張って言えます。怖くてたまらなかった手術も、産後の痛みも、お腹の傷も、そのすべてが私の宝物で、娘への愛情の証です。
[Tomomi*プロフィール]
20歳で日本を飛び出しオーストラリアで就職。現地で出会った夫を日本に連れ帰り、茶畑に囲まれたのどかな土地で一姫二太郎の育児に奮闘中!
休日は、夫と子どもたちと“旅行”“フェス”“アウトドア”を楽しみながら、語学力とホスピタリティー業界での経験を活かして、ホテリエとライターを兼業する36歳、在宅ママライター。
※この記事は個人の体験記です。記事に掲載の画像はイメージです。