入札で落札業者誤り工事完了 消防団3400人の源泉徴収誤記載 新年度予算の資料も間違いだらけ 上越市事務ミス相次ぐ
新潟県上越市で事務のミスが相次いでいる。本年度の工事入札で誤った業者を落札者として決定し、工事と代金の支払いを終えていた。また、約3400人の消防団員に誤記載のある源泉徴収票を送付。さらに市議会で審議している新年度予算案の資料にも、例年になく多数の間違いがあった。2025年3月12日、市側が市議会総務常任委員会に報告し、陳謝した。過去に例のないミスだといい、いずれもここ1年で起きていることから、議員からは「市長のガバナンス問題だ」などの声も上がった。
工事入札で落札者誤り
本年度に総合評価方式を採用して入札が行われた河川災害防止工事1件で、地域貢献度や技術力など入札価格以外の一部の評価点に誤りがあり、本来落札できた業者が落札できなかった。
昨年6月の下水道工事の入札に参加した業者が今年2月、自社の評価点に加算がされていないと市に問い合わせたことから発覚した。資料が残る2016年度まで遡って調べたところ、総合評価方式の23件のうち、指摘を受けた下水道工事を含む工事4件で同じ誤りが見つかった。4件とも本年度の入札だった。3件は正しい評価点でも落札者は変わらなかったが、残り1件の河川災害防止工事は落札業者の決定が異なることが判明。工事も終わり、すでに代金も支払われている。
原因は、担当職員が過去の評価点に変更はないと思い込んで最新の評価点に更新せず、また事業者の申告内容を転記する際に間違うなど初歩的なミスだった。評価点については複数人でチェックしていたが、原本と突き合わせず、誤って転記した数値で確認するなどチェック作業が機能していなかった。
市は本来の落札者だった業者に謝罪したという。
柳澤祐人財務部長は「あってはならないことで、過去にはこんなことはなかった。公平公正を信条とする入札制度において、公平公正でないことに直結する」などと述べて謝罪した。
市は今後問題の全容を究明した上で、職員の処分について検討するとしている。
消防団員の源泉徴収に誤記載
市は2023年度と2024年度に市消防団員3409人に支給した報酬の源泉徴収票の「支払金額」欄に、本来は課税対象額を記載すべきところ、誤って非課税分を含めた支給総額を記載していた。追加徴収はないが、支払金額が多く記載されたことにより、住民税や所得税が過徴収となった団員がいることが分かった。
市は、2023年度に報酬の支給方法を部や分団から団員個人に変更した際に、記載方法について国からの通知や税務署への確認を怠っていた。
市は今後、団員3409人に正しい源泉徴収票を送付し、住民税の過徴収分を還付する。また修正前の源泉徴収票で確定申告をした団員には、所得税の修正申告を依頼する。住民税の課税状況によって国民健康保険税や保育料などの行政サービスへの影響も調査し、対応するという。影響を受けた団員数や還付金の総額は調査中で、判明次第、公表するとしている。
新年度予算の議会資料も間違いだらけ
新年度予算案の委員会資料などについて、例年以上に訂正が相次いでいる。事業説明の内容が全く間違っていたり、誤字、脱字などが多数あり、正誤表が配布された。八木智学副市長は「複数の委員会資料に誤りがあり、おわび申し上げる」と陳謝した。
例えば、事業の説明で、本来春の桜まつりについて述べるところに、雪室の雪を活用した真夏のイベントの説明が書かれていた。また「改修」とすべきところを「解体」と書くなどの間違い、人名の間違い、数字の間違いなどが多数あった。
工事入札の誤りに源泉徴収票誤記載の報告もあった中で議員からは「今議会(の資料などに)はミスが多いと感じていたら、この期に及んで重大なミス。市長のガバナンスの問題だ。行政はたるんでいるのではないか」との意見が出た。
笹川正智総務部長は取材に対し「おろそかになっていたということはないが、担当課や総務課で(間違いを)見つけ切れなかった部分があった。今回は多かったので、きちんと確実な点検を徹底していく」と話した。
八木副市長「信頼を損なう事案」
相次ぐ事務のミスに八木副市長は「正確性や公正性が担保されるべき業務の誤りは、市に対する信頼を損なう事案として重く受け止めている。改めて全ての事務の点検を徹底するとともに、担当者任せではなく組織で対応するよう、市長から幹部職員に直接指示があった。全庁を挙げて、市民、事業者の信頼回復に向けて取り組んでいく」と述べた。
今後、開会中の市議会3月定例会で中川幹太市長が謝罪する予定だという。
▼市が多数の事務ミスなどを報告した市議会総務常任委員会の動画