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福井県立恐竜博物館の主任研究員、小学生の質問に「怖くないよ!」ーーナイトミュージアムも実施する『巨大恐竜展』見どころ語る

SPICE

福井県立恐竜博物館 関谷透 主任研究員

この夏、大英自然史博物館から全長約37m、世界最大級の巨大竜脚類「パタゴティタン·マヨルム」の全身復元骨格標本が大阪初来日! 7月26日(土)~8月29日(金)の期間、大阪南港ATCホールにて開催される『巨大恐竜展 2025』では、 「どうして恐竜は大きくなったのか」「どうやって繁殖、進化したのか」など、恐竜の巨大化や繁栄の歴史について紹介する。さらに2日間限定で、閉館後の会場にて人数限定の「ナイトミュージアム」を実施。同展の監修を務める福井県立恐竜博物館の関谷透主任研究員による解説のあと、暗くなった会場内を懐中電灯で照らしながら、暗闇に浮かび上がるパタゴティタンの全身復元骨格や、場内にずらりと並ぶ古代~現代の様々な生物の標本を観察することができる。今回SPICEでは関谷主任研究員から、巨大恐竜の魅力や展覧会の楽しみ方だけでなく、ナイトミュージアムの内容もちらりと話を聞くことができた。夏休みの自由研究はもちろん、家族のお出かけにもぴったりな今夏注目の展覧会。その魅力にぜひ触れてほしい。


●大人でも見上げるほどのデカさにびっくり!

――7月から開催される『巨大恐竜展2025』は、見どころが盛りだくさんだと聞いています。

一番の目玉はやはり、世界最大級の竜脚類といわれるパタゴティタン・マヨルムの全身復元骨格ですね。全長が約37mととにかく大きいので、まずはその大きさに圧倒されてほしいです。そして「大きいな~」「すごいな~」で終わるのではなく、どうして恐竜たちはそこまで大きくなったのかが学べます。恐竜は絶滅して今の時代には生きていませんが、現代に生きるゾウやクジラをはじめとした大きな動物たち、絶滅の危機に瀕している動物たちを守るために、私たち人間がどんな活動をしていけばいいのか、そんなメッセージ性も持ち合わせています。

――ただ「楽しい」で終わらずにその先についても考えてほしいと。

そうなんです。今回の展覧会はイギリス・ロンドンにある大英自然史博物館の企画から生まれたイベントですが、国が違えども、私たち人間も動物たちを守るためにできることからやっていこうという気持ちが生まれるといいなと願っています。

――パタゴティタン・マヨルムの復元骨格は全身となると37mもの大きさ。目の前にそんな大きな恐竜が立ちはだかる経験はなかなか他では体験できないものですよね。37mはビルでいうと、10階ほどの高さになるそうです。しかも重さは69トン、これはおよそゾウ12頭分という調査報告があると聞きました。

大腿骨だけで2.4mもあり、大人よりも長いですからね。私も昨年横浜で開催された『巨大恐竜展』で初めて実物を見たのですが、大人でも見上げるような高さに大腿骨があって驚かされましたね。パタゴティタン・マヨルムが新種となったキッカケは大腿骨のほかにも肩甲骨にもあるので、細かく見てもらえるといいですね。

――展覧会のポスターに描かれている姿を見て、37mもの大きさの全身復元骨格標本が会場に入るのか心配なんですが……。

縦の高さではなく、横に長さのある恐竜なので、そこは大丈夫です(笑)。それでも、頭までの高さは4~5mはありますから、かなりの迫力がありますよ。恐竜以外にもナガスクジラやステップマンモスなどの大きな動物たちの展示もあります。それらの動物がどうして巨大化したのかがわかる展示にもなっているので、ぜひ注目していただきたいです。

『巨大恐竜展2025』メインビジュアル 復元画:月本佳代美

――そもそもなぜ、パタゴティタンはあんなにも大きくなったのでしょうか?

巨大化には4つの要因があります。ひとつはあまり噛まずにどんどんと食べ物を飲み込むこと。

――現代の食育とは正反対ですね。

人間はよく噛んで食べないとダメですからね(笑)。パタゴティタンは食べ物を噛む必要がないのでアゴの筋肉や骨が発達せず、頭が小さかったのです。そうすると長い首を持つことができますよね。首が長いと歩き回らずに遠くのものをたくさん食べることができるので、エネルギーをあまり使わずに食べ物を摂取できるんです。

――人間にはマネができない進化ですね。

2つ目は呼吸方法が鳥に似ていること。人間は肺の中で新鮮な空気と吐き出す空気が混ざってしまうので、呼吸の効率があまりよくない。でも鳥は空気が一方通行でしか通らず、酸素を効率よく取り入れることができるのでエベレストの山など標高の高い場所でも飛んでいくことができる。竜脚類も鳥と同じような呼吸の仕組みを持っていたのではないかと言われています。

――恐竜なのに鳥類と似ている、おもしろい生態ですね。

3つ目は……。

――まだまだ気になりますが、読者のみなさんには展覧会でその続きを学んでもらいましょう! 

●様々な草食動物の特徴を見比べられる展示に

パタゴティタン・マヨルムの全身復元骨格 (c) Trustees of the NHM, London

――関谷さんは福井県立恐竜博物館で主任研究員、さらに福井県立大学恐竜学部でも客員研究員を務めていらっしゃいます。恐竜のプロの立場から見ても、新種を見るとワクワクするものですか?

パタゴティタンのすごさは、新種なだけではありません。恐竜の化石の発掘というのは頭から尻尾まですべてが一度に発見されるわけではないんですよ。

――体の一部だけ発見されることのほうが多いんですよね。

そうです。でもパタゴティタンはそのなかでも保存の割合が高く、全体像が分かりやすい恐竜のひとつでもあります。

――関谷さんの研究のメインはパタゴティタンも属する竜脚類です。約46億年にもわたる地球の歴史のなかでも、史上最大の陸上動物とされているようですね。関谷さんにとって竜脚類の魅力とはなんでしょうか? 個人的には「デカイ!」が一番の魅力だと思っていますが。

それでいいと思います(笑)。私はいま竜脚類を専門としていますが、実は成り行きみたいなところもあるんです。大学院で中国に留学し、雲南省という場所で小さくて原始的な分類の恐竜を研究していました。小さいといっても4~5mはありますけどね。以降、その分類から派生するように研究をしたことで、竜脚類の研究をメインにするようになりました。

――現代の生き物たちのサイズから見ても、4~5mは十分な大きさですよね。

今回の展示では、原始的な恐竜のサイズから30mくらいまで大きくなっていく、竜脚類の進化の全体像を見渡せるようになっています。どう恐竜たちが進化したのかを調べられるので、おもしろい研究になると思います。

――最近は「恐竜博士」と呼べる子どもも多いですよね。インターネットやAIなど駆使して、誰でもいろんな情報を調べることができるのですごくマニアックな部分まで掘り下げて研究できる環境が整っています。

僕らでも知らない知識を持つ子どももいますからね(苦笑)。恐竜博士になりたい子どもたちには、世に出回っていない知識を得られる機会になると思います。​研究員の立場からすると、今回の展示は第1~5章にわけて展示しているのですが、その中でも第5章に展示している草食恐竜について、ぜひ注目してほしいです。数ある草食恐竜のなかでも、竜脚類だけが繁栄したわけではありません。草食恐竜にはアンキロサウルスのような鎧をもつ鎧竜類、トリケラトプスのように頭の周りに飾りを持つ周飾頭類などたくさんの分類があります。これらの恐竜が大きくなったのは、先にお伝えしたように植物をあまり噛まずに飲み込むことが大きな要因のひとつです。しかし発掘された化石を調べると、歯がみっちりと詰まっていて、よく噛んで食べるタイプの恐竜も同じ時代に繁栄していたことがわかっています。草食恐竜同士でも生存戦略の違いや生存競争があったのではないかという考察が、本展の第5章で触れられているのでぜひ注目していただきたいですね。

ーーちなみに、今回の展示では恐竜の化石や骨格標本など、どれだけの数の展示を予定しているのでしょうか?

これからどんどん決まっていきますが、完全骨格標本や一部分の標本など100点以上の展示を予定しています。

――100点以上ですか! 恐竜博士から、恐竜を好きになりはじめた小さな子どもまで、誰でも楽しめそうですね。今回の展覧会は夏休み期間での開催です。一緒に来場するであろうお父さんやお母さんに向けてのオススメの展示はありますか?

たくさんありますが……どれがいいでしょう。横浜会場でも楽しんでもらえたのが、第3章にあるインタラクティブ展示でした。これは大英自然史博物館で企画されたもので、見て触って楽しむ展示です。卵から恐竜の赤ちゃんを​孵化させて、色々な試練を乗り越え、最終的に何匹の恐竜が生き残るかをゲーム感覚で楽しみながら学んでいく。VRゴーグルなどを使わずに楽しめるので、小さなお子様でも体験できますよ。

――恐竜にまつわる展覧会はこれまでにも全国で数々開催されてきましたが、インタラクティブ展示だと、ただ鑑賞するだけよりも理解度がぐっと深まりそうですね。

その展示では恐竜が巨大化した要因のひとつとしてお伝えした、呼吸の仕組みも楽しみながら学べます。展覧会も昔のように、ただ物を並べるだけでは物足りなくなってきていますからね。こういった展示だと小さな子どもも楽しみながら学んでいただけると思います。

――今まで以上に興味を引く内容になっているのですね。ちなみに、関谷さんが一番興奮した展示はどのあたりでしょうか?

個人的には第4章ですね。私の専門は竜脚類とお話しましたが、その竜脚類を色々集めた展示があります。南米や中国、アメリカ、そして日本からは福井県など、たくさんの場所で発掘・発見されたものを集めています。ここまで竜脚類がたくさん集まる展覧会は他にはないと思います。

●小学生の疑問……夜だと恐竜たちは動くの?

関谷透 主任研究員

――関谷さんは7月26日(土)と8月8日(金)に開催されるナイトミュージアムで解説を担当されます。イベントはどんな内容になるんでしょうか?

『巨大恐竜展』としては大阪会場で初めてナイトミュージアムを開催するので、これから内容を決めていくところです。会場を暗くして、パタゴティタンの特徴的な部分をライトアップしたり、よりわかりやすく恐竜たちの魅力が伝えられる仕掛けを模索中です。私が普段勤めている福井県立恐竜博物館でもナイトミュージアムを開催したことがありますが、比較的暗い照明の博物館内でも、さらに照明を落とすと普段見る景色とは違って見える。明るい照明の時には気づかない部分を発見できたり、いつもとは違った体験ができると思います。

――夏休みの特別な思い出になりそうですね。当日は恐竜について気になる質問をぶつけても良いのでしょうか?

はい! 恐竜博士たちの質問に応えられるように、私もしっかりと勉強していきます!

――研究員は恐竜のプロ、そこは問題ないんじゃないですか??

いや、それが最近はなかなか鋭いところを突いて質問してくれる子どももいるんですよ。子どもたちが興味を持つものはそれぞれ異なります。でも、ティラノサウルスが好きならティラノサウルスの、草食恐竜好きには草食恐竜の、それぞれが興味を持った分野の展示をしっかりと楽しんでもらえたらいいですね。

――実は今回、小学生の甥っ子たちにナイトミュージアムの話をすると、すごく興味深そうにしていて。関谷さんに「ナイトミュージアムは怖くないですか?」と聞いてきてほしいと頼まれました。

福井県立恐竜博物館では研究員が夜の見回りをすることはありません。でも、研究対象の実物化石が展示場に出ているときはお客さんの目の前で研究するわけにはいかないので、夜に化石の近くにまで行き観察することがあります。怖くはないんですが、たまに変な音が聞こえることが……。

――関谷さん! それはリアルに怖い話です(笑)!! あと「動きますか?」という質問もありました。

会場には恐竜ロボットの展示はありますが…。映画『ナイトミュージアム』(2006年)のようなことは…ないと思います。あの映画は私も観ましたがおもしろいですよね。

スピノサウルスのロボット (C)ココロ

――ナイトミュージアムは限定的なイベントですが、それ以外でも何度も通いたくなる展示になりそうですね。

小さい子どもと一緒に見て回ると2時間かからないくらいでしょうか。第4、5章当たりの展示では色々な恐竜が出てきたり、第2章では恐竜の進化の過程を知ることができたり。それぞれの展示で疑問が出ても、ほかの展示でしっかりと解決することができるような仕組みになっています。時間の許す限りじっくりと観てもらいたいですし、何度も通ってもらうとさらなる気づきが出てくるかもしれないですね。

――最後に「夏休みの自由研究になりますか?」という質問もありました。

恐竜の巨大化の仕組みについて、ぜひ研究してみてください。ティラノサウルスやトリケラトプスなどの有名な恐竜も、原始的な仲間の恐竜はもっと小さいサイズなんです。それが進化しながら大陸を渡って大きくなっていった。今回の展示ではティラノサウルスの仲間である原始的な恐竜から、中くらいのサイズ、一番大きなサイズと揃えて展示をしています。それぞれを見比べてみて、どんな違いがあるのかを研究するのはいかがでしょうか。

取材・文=黒田奈保子

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