怖がりな5歳発達グレー息子に虫歯が…!このままだと全身麻酔?大変すぎた歯科治療
監修:鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
小さい頃から怖がりだった息子
しのくんは発達障害グレーゾーンの男の子。現在6歳で小学校へ通っています。
しのくんは昔からとっても怖がり。爪切り、耳掃除、髪の毛をカットするのもすべて怖がります。なので、赤ちゃんの頃から、寝ている間にこっそり素早く済ませるのが習慣になっていました。
もちろん「歯磨き」も苦手で、怖がってなかなか口を開けてくれず暴れてしまうので、私はしっかりと仕上げ磨きができないことに悩んでいました。
歯磨きを怖がる息子に、とうとう虫歯が……!
そんな怖がりのしのくんに、保育園の年中になって、急に虫歯ができてしまいました!
しのくんの抵抗にあいながらも仕上げ磨きはしていたし、保育園の歯科健診ではいつも問題がなかったので、これには私もショックを受けました。
お菓子が大好きなしのくん。年中になってできることが増えてきたので行動範囲が広がり、時々、戸棚からお菓子を探し出して勝手に食べていたからかもしれません……。
とにかく、虫歯になってしまったからには仕方ありません。小児歯科を探してしのくんを連れて行くことにしました。ところが、何とか歯科医院には連れてきたものの、しのくんは歯医者さんをとっても怖がり、診察台に寝ころぶこともできません。
このままだと全身麻酔するしかない!?
当時5歳だったしのくんはかなり力も強くなっていたので、歯医者さんには「このままだと、全身麻酔で治療できる病院に行ってもらうかも」と言われてしまいました。
ですが、全身麻酔の治療となると、入院もしなければならないので、できれば回避したい……!ということで、虫歯の進行止めのお薬を塗って様子を見てもらうことになりました。
その様子見の間に、歯医者さんにあるいろんな機械を触らせてもらったり、寝ころぶ練習をしたりして、慣れてから治療に進もう!という計画だったのですが……。
直後に虫歯が悪化!治療することに
そんな思いも虚しく、歯科医院にいった数日後に、しのくんの虫歯が痛くなってきてしまいました!歯の痛みが強かったので、その歯科医院で急きょ治療することになりました。
私はしのくんの上に馬乗りになり、しのくんの腕と足を抑える担当です。しのくんの頭と足は看護師さん達に抑えてもらい、5人がかりで治療が始まりました。
あまりの怖さに泣き叫ぶしのくん。緊張が走る治療の最中、歯を削る時に水が出る機械がまさかのタイミングで故障してしまい、現場は一時的に大パニック!
ここまできて治療を中断するわけにはいかないので、凄まじい緊張感の中、先生が手早くなんとか治療を完了してくれました。
現場は水浸しになり、私はしのくんにひっかかれて流血……。しのくんは泣きすぎて目の周りが点状出血してしまいました。
こんな怖い思いをしたら、もう二度と歯医者に行ってくれないのでは?と心配していましたが、小学生になった現在は、嫌がりながらも病院にはちゃんと行ってくれています。
嫌だけれど行かなければいけないと分かってきたのかな?と成長を感じています。
執筆/keiko
(監修:鈴木先生より)
ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんは初めてのことが怖い傾向があります。動画があればあらかじめ見せて予習してから行く方法もあります。しかし、今回のような歯科治療や予防接種などはあらかじめ見せても余計に怖がるかもしれません。私の外来でもASD(自閉スペクトラム症)のお子さんの予防接種は、激しく暴れる場合には安全性を優先して、お子さんには壁に向かって立ってもらい、親御さんとスタッフで動かないようにサポートしてもらいながらやることもあります。このように多少強引にではあっても、予防接種ができた時には褒めます。ただ、それ以上のことはしないと分かれば、だんだんと分かってくれるものです。そして、ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんの怖がりの裏には感覚過敏がある場合が多いのです。そのため、爪切りや耳掃除、髪の毛カットも嫌います。できるだけ早いうちから慣れさせて習慣づけてしまえばお互いに楽なので、少しずつスモールステップで慣れるようにしていくといいでしょう。もしできなくても叱らず、できたらたくさん褒めてあげるといいですね。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。