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小説で沖縄の問題提起 「観光以外の側面知って」 戸塚区矢部町・照井裕さん

タウンニュース

『復国の大地 第2部』を持つ照井さん

1964年戸塚区矢部町生まれの照井裕さん(60歳)は、小説を通して沖縄の歴史や戦争を語り継いでいるひとりだ。

照井さんの著書『復国の大地』シリーズ(沖縄タイムス社/全5部予定)は、ボリビアへ移住した沖縄県人が主人公。東京に住んでいる曾孫にあてた手紙を通して、自らの一族と沖縄の歴史・戦争を語り継ぐ書簡体小説だ。

帰郷後の違和感から執筆

照井さんは大学進学を機に沖縄に移住。また、戦後、沖縄県から大規模な移民があった南米・ボリビアでの生活も経験した。現地の人から多くの体験談や基地問題の話などを聞き、照井さんは「今沖縄で生きる人は、戦争を生き抜いた人や、その体験談を聞いて育った人がほとんど。歴史の上に社会はできている」と実感した。

一方で、本土の人が考える沖縄は、一大観光地としての認知が圧倒的。照井さんは帰郷してから、現地の人が持つ意識との激しいギャップを感じたという。

自身が覚えた違和感から、多くの人に沖縄の歴史と戦争について知ってほしいと、10年ほど前から同シリーズの執筆を開始した。「現在の問題は歴史につながっている。この小説が、問題意識を持つきっかけになれば」と思いを語る。

戸塚区に帰ってきた今も「沖縄の状況は常に新聞などで把握するようにしている」という照井さん。日本にある米軍基地のうち約70%が沖縄県に集中し、県の総面積の約8%を占めていると言われる。環境や騒音の問題、性暴力事件など一般住民への弊害も多くあるという。

照井さんはこのような現在の沖縄の問題を「そもそも論を考えるとやはり戦争。現在の政治的状況だけで判断してはいけない」と指摘する。

史実もとに丁寧に描く

歴史書ではなく物語にした理由を、照井さんは「小説であれば素人なりに知識を嚙み砕いて、読者に分かりやすく伝えらえると考えた」と話す。

今年5月に発刊された第2部では、沖縄であった1944年10月10日の大規模な空襲から、45年4月1日の本島上陸が始まるまでの半年間が描かれている。

ページの随所には、数々の史料から参照された地図や写真が掲載され、臨場感とリアリティあふれる物語になっている。書籍はAmazonで購入可能。問い合わせは沖縄タイムス社出版部【電話】098・860・3591。

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