麻生区有志 戦争の記憶、動画で残す 地域の語り手の声を収録
終戦から79年が経った。戦争経験者の高齢化が進む中、当時の様子を知る地元の人たちの証言を、動画共有サービスのユーチューブで残そうという取り組みが麻生区内で進められている。
取り組みは、麻生区在住でケアマネジャーの小泉悦子さんと高齢者施設や訪問型サービスなどを展開する(株)ソエルテ(麻生区高石)代表の山上剛史さんが始めた。「世界中、一触即発で不穏な時代。次世代に戦争のない平和な世の中を残すため今、何ができるか」という思いのあった小泉さん。介護職に従事する中で高齢者からさまざまな戦争体験談を聞いていた。そこで「経験者の貴重な声を知り、皆に平和の意識を高めてほしい」と山上さんに相談。その考えに元幹部航空自衛官で戦史にも造詣の深い山上さんが賛同し、小泉さんの義理の息子でカメラマンの河村哲晴さんも協力して、1年ほど前から本格的に撮影などを開始した。ユーチューブチャンネルを開設し、『先人の声』と名付けた。
「地域にいる人の話を聞いて、身近に感じてもらいたい」と小泉さん。動画には麻生区や稲城市に住む男性4人と女性1人、85歳から93歳の5人が語り手として登場し、インタビュアーを山上さんが務めている。編集は完了しており、随時公開していく予定だという。
「避けるわけには」
1話目に登場する月野光雄さん(麻生区在住)は1935(昭和10)年に生まれ、小学生の頃に戦争を経験した。「空爆を散々受け、その悲惨さをさまざま思い起こすと、気分が悪くなるぐらい嫌な思い出。でもそれも避けるわけにいかない」。月野さんはそう話を切り出すと、戦局が悪化する中でも軍の情報統制により日本の勝利を信じる人たちが多かったこと、当時近隣に住んでいる時にあった名古屋大空襲の様子など、約1時間にわたり戦前、戦中、戦後を語る。そして「平和は黙っていては来ない。何をすれば良いかということを自分の頭で考えてほしい」と願う。
「一人でも多くの人に語ってもらい、一人でも多くの人に聞いてもらいたい」と山上さん。今後は上映会などの企画も模索していきたい考えだ。
『先人の声』は、以下のURL(https://m.youtube.com/@senjin_no_koe)で検索して閲覧できる。