亡祖父の思い受け継ぎ唐獅子絵馬奉納
亡祖父が52年前に奉納した絵馬を後世に継承しようと、東有年の農業、平尾年正さん(64)と会社員の弟秀行さん(62)が東有年八幡神社に唐獅子の絵馬をこのほど奉納した。
平尾さんの祖父、故清吉さんは1972年10月、当時古希を迎えたのにあたり、「70歳になっても健康で、毎日元気で働くことができるのは、氏神様のおかげ。お礼に神に仕える唐獅子の立派な絵馬を奉納しよう」と、交友のあった高雄在住の画家、杉本白象(1898―不詳)に作画を頼み、雌雄の唐獅子を描いた1対の絵馬を奉納した。当時小学6年生だった年正さんは、奉納を伝える新聞記事を読む清吉さんの満足そうな表情を覚えているという。清吉さんは1990年に86歳で亡くなった。
絵馬は拝殿正面の高い位置に掲げられていたが、昨年11月に向かって左側の1枚が落下して破損。天井の雨漏りで腐食した留め金具が外れたものとみられる。このことを知った年正さんら兄弟が「じいさんが奉納した絵馬。片方だけにしておくのはしのびない」と作り直して再び奉納することを決め、相生市若狭野町入野の絵師、舟丘恵凡さん(73)に制作を依頼した。
新たに完成した絵馬は従来と同じ縦約2メートル、横約1・4メートルの大きさ。枠の部分は元の絵馬のものを再利用した。
「絵馬が一対に戻ってよかった。じいさんも喜んでくれていると思う」と年正さん。清吉さんは用務員として勤めた有年中にも白象の絵画を寄贈するなど地域思いだったといい、秀行さんは「地域の縁を大事にせえよ、というじいちゃんからのメッセージを受け取った気がする」と祖父を偲んだ。