発達障害娘、4歳で一度あきらめたトイトレが、5歳で突然成功!理由を分析してみると?
監修:井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
3歳でトイトレスタート!結論から言うと……
マユユは、4歳の終わりまで『トイレでおしっこを出す』という最初の目標を達成できませんでした。
3歳でトイレトレーニングを開始した頃はまだ説明して教えられるほど理解が進んでいなかったのですが、それでも“トイレに頻繁に連れていき、おしっこが出そうなタイミングと合えば出るだろう”と思っていました。
しかし何度トイレに座っても、長い時間座っても、オムツがしばらく濡れていなくても、おしっこが出てくることはなかったのです。いろんな方法やトイトレグッズも試してきましたがどれも成功はしませんでした。
4歳のある日
長時間オムツが濡れておらず、食事や水分も充分にとれている状態でトイレに誘うことができました。
“これは絶対、おしっこが溜まっているはず!今日こそは!”と意気込む私。いつもより長めにトイレに座れるよう、普段は見せない動画(トイレ関連のもの)も見せて、「おしっこが出たらおやつを食べようね」など声をかけつつ心待ちにしていました。
しかし、やはりいくら待ってもおしっこは出せませんでした。
“こんなに時間があいているのに、どうして?”
そう思いながらあきめてトイレから出た直後……なんとオムツにおしっこをしたマユユ。それを確認した瞬間に私はポッキリと心が折れたのを感じました。
“まだ今はトイレでできないんだ”
“この子はまだまだずっと、トイレではできないのかもしれない”
もともとトイトレを頑張る精神的な余裕が少なく、ほどほどでやっていたのですが、この時からさらにのんびりやることにシフトチェンジしました。
「日々成長はしているから、マユユの理解面やコミュニケーション面が伸びてきて、よりスムーズにトイトレできる時期がいずれ来るはず」
進展がないので焦っていましたが、少し待ってみようと決心しました。
突然訪れたその時
習慣的なトイトレをいったんやめたまま5歳になったマユユ。
保育園にも入ることができ、改めてトイトレについて考えていた時でした。
おしっこを溜められるようになっているし理解も伸びてきている。やはりさまざまな準備はできているように感じているけれど……
この頃も余裕があればトイレに入ってみたり、かわいい服装に興味を示すことが増えたので「おねえさんパンツかわいいねぇ」など話してみたりはしていました。
そして、5歳になりすぐの休日のこと。私はひとり買い出しに出かけたのですが「オムツがしばらく濡れてないからトイレに誘ってみて」と夫に言い残して家を出ました。
すると、なんと……
本当に突然の出来事でした。
とくに前触れもなく、トイレへの誘導もいつものように気楽な気持ちで伝えていました。
そこからは、あっという間に日中のおしっこがトイレでできるように。
さらに、なんと数日後、トイレでおしっこをさせている時に「うんちも出してみる?」と軽い気持ちで伝えてみると……
まさかの「うん」という返事。トイトレ絵本のうんちのページをお手本にして見ながら「う〜〜ん」と頑張りはじめ、初めてのトライで成功。
とんとん拍子に進み、日中は基本的にパンツで過ごせるようになっていきました。
マユユは“変化”がとても苦手です
これがトイトレが進まなかった大きな要因なのでは?と思ったりします。
ただ、最終的にはグッズも特別な方法もなく進みましたが、これまでの試行錯誤は無意味じゃなかったと思えています。
ずっと見ていた動画や絵本から得ていた
・おしっこが出そうな感覚はモジモジだと知っていること
・トイレに入ってから手を洗うまでの一連の動作
などの知識はしっかりマユユの中に入っていて、初めて出せた日からとてもスムーズにできるようになっていました。
トイレという場所にすっかり慣れていたのも良かったです。
体の準備・知識・興味・場所への慣れ・気持ちの整理など、私が一気に教えようとしてしまったものを、マユユが自分で自分なりにスモールステップで進んでくれていたのかもしれません。
まだ課題はあるけれど
今はまだ夜間はオムツで過ごしており、多くの場合朝までに排泄していることも確認しています。また「トイレに行きたい」という申告が間に合わず漏らしてしまうことも……
まだまだコミュニケーションの問題や、感覚的な問題もあるのかもしれません。いつ頃までには 頑張らないといけないのかな、と不安になることもあります。
しかし、今回の経験を経て改めて「なにごともスモールステップ」「焦りすぎず適度に本人のタイミングを確認していこう」と思っています。
執筆/サチコ
(監修:井上先生より)
排泄指導は、焦らずスモールステップでやっていくことが大切ですね。親御さんも便座に座る習慣づけやトイレ・排泄に対する知識を教えたり、時間を測ってどれだけおしっこをためられるかと調べられたり、細かくアセスメントしておられ、今回の成功は、そういったご努力もベースにあったのではないかと思います。
昼間におしっこをためる力が徐々についていくと、夜間のオムツも取れていくと思います。オムツに対するこだわりや感覚過敏の強いタイプのお子さんについては、環境調整やより細やかなアセスメントとステップが必要になってくると思います。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。