藤枝MYFCの前田翔茉(清水桜が丘高出身)が集団食中毒に揺れるチームを救う劇的ボレー!プロ初ゴールが決勝弾に!
試合2日前に選手・スタッフ計25人が集団食中毒に陥った中、藤枝MYFCがブラウブリッツ秋田2-1の逆転勝ち。前半終了間際に浅倉廉選手がチームの今季初得点、クラブJ2通算100ゴールとなる同点弾。浅倉選手は後半、相手シュートを顔面ブロックしたことによる脳しんとうで途中交代しましたが、担架で運ばれる時に「大丈夫だ。任せろ」と声を掛けた同期入団の前田翔茉選手が後半43分に逆転弾となるプロ初ゴールをたたき込みました。
異常事態を乗り切ることができた裏には何かあったのか。主将の中川創選手と、決勝点を決めた前田翔茉選手に話を聞きました。
中川創主将「100分後、誰かがヒーローに」
ー今シーズン初勝利。率直な思いを。
みんなで勝ち取った試合だと感じていますし、大変イレギュラーな状況の中で今まで頑張ってきた選手が結果を残してくれたのはすごくうれしいです。
ー自身の体調は。
少し崩しましたけど、絶対に試合に出てやるという気持ちでした。気持ちで治した感じです。やれる選手とやれない選手がいましたし、相当な人数がプレーできないという状況でした。今週1週間の準備という視点では、過去に例がないくらい準備できませんでした。その中でやってきた選手たちの一体感はすごくあって、試合に勝つための準備はできたと思います。
ー試合前はチームにどんな言葉を。
誰も望んでこんな状況になったわけではありません。その中でチャンスが巡ってきた選手には「100分後、この中の誰かがヒーローになっているよ」と自信をもたせるような声を掛けさせてもらいました。
慣れないポジションの選手は褒めようと。長所を出すのが最優先だったのでノビノビやってもらおうと思いました。翔茉(前田)もノビノビ頑張ってくれたと思うので、ゴールを取ってくれて隣でプレーしてきた身としてすごくうれしかったです。浅倉も含めて2人で結果を残してくれてうれしかったです。
ーセットプレーから失点したが、粘り強く守れていた。
正直危なかったです。何度も危ないシーンがあって、打たれていたら決まりそうな場面も何度かありました。それでもみんなでゴール前で体を張って、浅倉なんかは顔でブロックしてくれました。みんなでゴールを守ることを100分通してできました。
ー価値ある1勝。ホイッスルの瞬間はどんな気持ち。
昨年から試合に出てきましたが、勝てない時期が続いていて払拭したいと思っていました。須藤監督と最後に抱き合って「良かったな」と感じています。試合前からサポーターも相当な熱量で応援してくれていると感じていました。こういうときだからこそ一体感をもってやろうと後押しされたと思います。まずはみんなが体調を戻して、週明けからギラついて、一体感をもって甲府戦に向かいたいと思います。
決勝点を挙げた前田翔茉「大丈夫。任せろ」
ー待ちに待ったプロ初ゴール。
素直にうれしいです。ここまでいろいろな思いをしてきました。多くの人に支えられ、刺激をもらい、引っ張ってもらいました。その方々に恩返しできたかなと思います。何もない自分でも淡々と準備すれば、おのずと結果が出るということを証明できたかなと思います。
ー決めた瞬間、すぐにベンチに走り出した。
自分は何も症状が出なかったので、それも含めて自分がたぐり寄せられたものだと思います。でも、戦えないメンバーがいましたし、普段と違うポジションでプレーする選手もいました。一体感を掲げているクラブなので、全員で戦っているということをベンチの人たちにも直接、感謝を伝えようと決めていました。
ーCKのこぼれ球をグラウンダーで蹴り込んだ。どんな光景だったか。
自分の特長はシュートのパンチ力ですが、脚を振りすぎて枠外というシーンをサッカー人生で何度も経験してきました。とにかく抑えるという気持ちだけでシュートを打ちました。うまく流し込めて良かったです。
ー開始直後から積極的にシュートを打った。
超・超・超攻撃的と掲げている以上は、センターバックでもシュートを狙わなければいけないし、得点を取らないといけないと思っていました。積極的にファーストシュートを打てたのは良かったです。
最近は(右センターバックの)久富選手と一緒にいる時間が長くてプレーをよく見ていました。久富選手のようにやれば大丈夫かなと。感謝のLINEも入れましたし、楽しかったです。前のポジションで点を取ることにこだわりたい思いはありますが、こういったチャンスをものにするのも特長かなと思っているので、どのポジションでも点を取れればと思います。
ー先制ゴールが同期の浅倉。その後の体を張った守備も含めてどう映ったか。
高校時代から知っていますが、あそこまで守備をするイメージはなかったのですごく体を張ってくれたと思います。ロッカールームで「ナイスだね」と。脳しんとうも大丈夫そうなので安心しました。
ー調子は良かった。
それは実感していました。久富選手と話をして自分の中でプレーが整理できましたし、幅が広がりました。試合前も連絡をして「大丈夫。ここまで来たら楽しんでこい」という言葉ももらいました。久富選手のプレーをよく見ていた自分だからこそ、まだまだの部分はありましたが冷静に対応できたのかなと思います。
ー同期の浅倉が脳しんとうで途中交代。自分としてはどんな思いだったか。
担架で運ばれているところに「大丈夫。任せろ」と声を掛けました。あいつも「頼むよ」と。(浅倉の)同点弾を無駄にしたくなかったので、ゴールにつなげられて良かったと思います。
ー昨シーズンは浅倉のプロ初ゴールをアシスト。巡り合わせがある。
いつも一緒にいますし、練習後には食事に行って「今年は俺たちがやらないとな」と話していました。プライベートでも仲がいいからこそ、こういう場面で結果が出るのかなと思います。先日、永田貫太と和田伊吹マネジャーを含めた同期4人でラジオ出演した後に食事に行き、「いつか同期3人スタメンで出たいね」と話していました。今回、食中毒がある中ですけど、それを初めて実現できたことは良かったです。