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【組織づくり】MVVの言語化がチームを強くする|関本大輔(株式会社アドハウスパブリック)#8

にいがた経済新聞

こんにちは。株式会社アドハウスパブリック代表の関本大輔と申します。

このコラムでは、「ブランディング」をテーマに、その本質や大切にしたい考え方について弊社の事例を交えながらお伝えしています。

今回のテーマは、コーポレートアイデンティティの言語化。私たちアドハウスパブリックのチームづくりを例に、ブランディングにおけるチームの重要性や、言語化によるチーム強化についてお話しします。

ぜひ最後までお読みいただけると幸いです。

チームこそがブランディングの要

チームの在り方は、ブランディングにおいてとても重要な役割を果たします。

なぜかと言うと、会社の方針や指針が一貫性を持ってお客さまに伝わることで、はじめてファンになってもらえるから。そのため、企業の軸となる想いや、それに基づく行動がブレてはいけません。そして、一貫性を保ちながら実際の行動に移していくことが、チームの役割なのです。

今回は、私たちアドハウスパブリックのチームを例にあげてみます。

我々のチームは、部署の垣根があまりなく、プロジェクトごとに必要な人材がアサインされて、目的に応じたメンバー編成で取り組むという、フレキシブルな体制になっています。これは、お客さまのオーダーがプロジェクトごとに異なるため、成功には柔軟なチーム編成が必要だからです。

これにより、業務上のチームと会社運営上のチームの役割が分かれている、というのも我々の特徴のひとつ。例えば、取締役・部長・課長といった会社を動かすための役割がありつつ、同時にプロジェクトごとのリーダーが仕事を動かす役割を担っています。

現在の体制は非常に柔軟で理想的だと思いますが、はじめからこの形が確立されていたわけではありません。自分本位な行動をする人やルールを守らない人がいたりと、モヤモヤした時期が何年もあったように思います。

そんな中で組織としての在り方が明確になり、現在の形へと進化するきっかけとなったのが、「うちの会社ってこうだよねという共通認識を持てるようになったこと。

そして、その要となったのがMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)と行動指針の言語化でした。これにより、一貫した組織文化を築き上げることができたのです

MVVと行動指針の言語化に至るまで

私はもともと、会社のビジョンなどを言語化したいタイプではありませんでした。まだまだ道半ばで、ゴールは先にあるような感覚があり、途中で言語化することにためらいがあったのです。

ただ、その間も成長したいという気持ちはずっとありました。「ただのデザイン事務所のままではいけないな」と、もがいていた時期だったのだと思います。

そんな中で、アドハウスパブリックが提供したいサービスの方向性が徐々に明確になっていきました。「うちは、コーポレートアイデンティティ・ヒューマンアイデンティティ・ビジュアルアイデンティティを組み合わせたところが勝負どころだ」と見えてきたことで、ようやく言語化できる道筋が立ちました。

現在のホームページにも掲げているMVVと行動指針が出来上がったのが、約7〜8年前のこと。振り返ってみると、この言語化によってチームの結束力が高まり、事業のスピードも加速していったように思います。

行動指針については、社員でコピーチームを組んでみんなで考えました。私が考えたバリューと、行動指針の根本になる考え方を伝えた上で、現場でみんなが大切にしていることを交えながら言葉を作り上げていったのです。

▲アドハウスパブリックの行動指針

例えば「仕事を“自分で”楽しむ人じゃないとだめだよね」とか「絶対に仲間と自分を一緒に考えられる人じゃないと厳しいよね」とか。うちの行動指針は、これがないとこのチームではやっていけないという、ある種の“部族のルール”みたいなものかもしれません。

出来上がった言葉は社内で説明会も実施しました。現場の声を取り入れたことで、私と働くみんなの双方が納得感を持って指針を掲げることができたと思っています。

アイデンティティの言語化がもたらしたもの

それまで何となく全員が感じていた「うちってこういう会社だよね」「こういう行動はだめだよね」という感覚的な認識。これらが共通言語化したことで、会話のスピードや意思決定の精度も上がりました。このおかげで、プロジェクトごとに指示役が変わるフレキシブルなチーム体制でも、みんなで良いチームワークを発揮できているのだと思います。

また、MVVや行動指針を明文化したことで、それを軸に採用活動を展開できるようになったことも大きな収穫でした。とくに3〜4年前に本格的な採用活動を始めてからは「この考え方が好きです」と共感してくれる人も増え、より社内の団結心が高まっていると感じます。

さらに、「これだけは守らないとだめ」という約束ごとが社員教育の基準にもなり、人材育成の面でも良い効果が生まれています。

MVVを“生きたもの”にする

コーポレートアイデンティティは、言語化しただけで終わらせずに日々の現場で活用すること、また定期的に再確認する場を設けることも大切です。

私たちの場合は、毎週月曜日の全社会議、決算期ごとのキックオフミーティング、季節ごとのイベントなど、意識的にコミュニケーションの場を確保するようにしています。

業務の生産性だけを考えたら、そういった時間を削るべきという考え方もあるかもしれない。でも、あえてその時間を守ることが、仲間とともに仕事を楽しむという社風を育む大切な機会になっていると思います。

もちろん仕事は本気でやるけど、遊ぶのも本気。日常的に“ちょっとしたユーモアとアイデア”をみんなで楽しむことが、私たちのカルチャーとして自然に根付いています。

また、アイデンティティの言語化は、私たちのチームにとって非常に大きなターニングポイントでした。その価値を実感したのは、言語化した瞬間よりも何年か経ったときの“浸透感”でした。

言葉として見える化することで、単なるスローガンではなく、日々の意思決定や行動の指針となる。そして、いつの間にか自分の中に“ルール”として定着し、チームにとって当たり前の文化として浸透し、社風になってきたのです。

このプロセスを経て、MVVの言語化は、強いチームをつくるための重要なポイントだと確信しています。ブランディングにおいても、組織のまとまりにおいても、アイデンティティを明確にすることがいかに大切かを、改めて実感しています。

今回はここまでとなります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

関本 大輔(せきもと だいすけ)

株式会社アドハウスパブリック代表取締役。新潟デザイン専門学校を卒業後、東京の出版社でデザイナーとして勤務。その後、父が設立した会社を継ぐため帰郷し、2013年に代表取締役として就任。

お客さまの本質的な課題解決につながるインナーブランディングと卓越したデザインで、さまざまな企業や事業のブランディングに携わる。過去1,000件以上の実績で、地域・業界を問わず評価されている。

米国ギャラップ社認定ストレングスコーチのほか、越後雪室屋ブランドディレクター・理事、新潟県6次産業化プランナー、新潟市異業種交流研究会協同組合理事長を務める。

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