「予防授業」に参加する弁護士に聞く 増えるいじめ、どう防ぐ
文部科学省の発表によると、小中高などにおける2023年度のいじめ認知件数は過去最多の73万2568件(前年比5万620件増)になった。なぜ増加傾向にあるのか、どう防げばいいのか――。弁護士会の一員として、多摩地域の学校で「いじめ予防授業」を行っている弁護士の平野愛子さん(中町/町田シビック綜合法律事務所)=写真=に聞く。
――なぜ、増加している
「あくまで個人的な見解になるが、いじめ防止に関する法律が成立し、意識が高まったことが理由の1つとして挙げられると思う。ひと昔前ではいじめと認識されなかったことも顕著化されるようになり、それは歓迎すべきことと考えている。ただ、一方でSNSが浸透し、『攻撃しやすくなった』環境になっていることも事実だ」
――所属する弁護士会の活動として、「いじめ予防授業」の講師を務めている
「いじめは時に生きる権利をも奪ってしまう人権侵害。人権を守る弁護士が『いじめ予防授業』をすることには大きな意義があると思っている。子どもたちには人権はみんなが自分らしく生きる権利であることと伝えている。いじめが起きると不安になり、自信がなくなるなど、自分らしく生きられなくなる。すなわち、いじめが起こると人権が傷つけられると伝えている」
――見ているだけの人(傍観者)こそ、いじめを止める力があると
「子どもたちへの授業ではみんなが知っているアニメのキャラクターを通じて、いじめの四層構造(いじめっ子、いじめられっ子、おもしろがる人、見ているだけの人)を説明し、見ているだけの人はどうすればいいのか、止める力があるのではないかということを一緒に考えている。一人で止めるのは難しいことをみんなで共有したうえで、見ているだけの人が声をあげ力を合わせることができれば、いじめを防ぐことができるのではないか――と問いかけているところだ。子どもたちに話したことが全部伝わるとは考えていないが、心の片隅に残り、いじめをしないことはもちろん、気づいた時に止める人になってもらいたいと思っている」
――いじめられているなか、助けてくれる人が現れなかった場合は
「いじめは人が集まれば、大人の間でも起こるもの。孤立し苦しくなることもある。そんな時は逃げることを考えてもらいたい。例えば、学校に行かないことも選択肢の1つ。今は相談する場所、手段はたくさんある。私が所属する弁護士会でも電話などで相談を受け付けている。活用してもらいたいと思う」