マンションの消防設備点検とは。不在時の対応やペナルティは?
そもそも消防設備点検とは何なのか
賃貸、分譲問わずマンションなどの集合住宅に住んでいると、ときどき消防設備点検の通知を受ける。室内の点検に立ち会ってほしいということだ。しかし、中にはさまざまな事情で立ち会えない、または立ち会いたくない人もいるだろう。そこで、そもそも消防設備点検とは何なのか、協力できなかったらどうなるのか、などを解説しよう。
点検・報告の流れ
マンションやビルなどの建物には、消火器やスプリンクラー、自動火災報知設備などの消防用設備が設置されている。火災発生時にこれらの設備が正常に作動しなければ、人命にかかわることになる。そのため、消防法第17条の3の3にて消防用設備等点検報告制度が設けられている。これは設備を定期的に点検し、その結果を報告書にして、管轄する消防署または出張所へ提出するものだ。
報告義務を負っているのは、建物の所有者など消防設備に対する権限を持っている者。つまり入居者・居住者が義務を負うものではない。点検自体は、消防職員ではなく、専門の事業者が行う。このような事業者を消防署が紹介することはないが、「消防設備 点検 都道府県名」といったキーワードで検索すれば、複数の会社が見つかるはずだ。
点検・報告の流れは次のようになっている。
1.依頼
消防設備点検を行う事業者に電話やインターネットなどで点検を依頼する。
2.点検
消防設備士などの資格者が、建物に設置されている消防設備を点検する。
3.報告
管轄する消防署または出張所へ点検結果報告書を提出する。設備に不具合があった場合は、改修の予定を記載した「消防用設備等点検報告改修計画書」も同時に提出する。
4.改修
点検の結果、不具合が見つかった場合は改修をする。
入居者・居住者が点検に立ち会うのは1年に1回
点検対象となる消防設備は、消火器、自動火災報知設備、スプリンクラー、屋内消火栓、非常ベル、避難器具、誘導灯などだ。点検には、機器点検と総合点検の2種類がある。機器点検は、6ヶ月ごとに行い、外観からまたは簡単な操作によって設備を確認する点検。総合点検は、1年ごとに行い、設備を実際に作動させて全般的な機能を確認する点検だ。そして、点検結果は3年ごとに消防署などへ報告することになっている。
専有部に設置された設備の点検も必要となる総合点検は、居室内に入って行う必要がある。したがって、入居者は1年に1回、点検に立ち会わなければならないということになる。
マンションといった集合住宅では、ポストへの投函や掲示板などを通じて点検の日程が告知されることが多い。入室して点検を行う部分は、主に自動火災報知機とバルコニーの避難はしごだ。自動火災報知設備は、住戸によって異なるが、一般的にキッチン、寝室、クローゼットなど複数箇所に設置されている。バルコニーの避難はしごは、点検者がはしごの動作確認を行う。それゆえ、バルコニーに物などを置いて確認の妨げになる場合は、事前に整理しておきたい。そもそも確認の妨げになるということは、いざ避難というときにも邪魔になるので片付けておくべきだろう。
点検に立ち会えない場合の対処法
点検の所要時間は、一住戸につき10分程度だ。しかし、仕事をはじめさまざまな理由で、立ち会えないケースもあるだろう。その場合、賃貸物件ならば賃貸借契約を結ぶ際に入居者不在時は管理会社の立ち会いの下で事業者が入ることを同意していれば点検は実施される。一方で分譲マンションの場合は、居住者の許可なく事業者が専有部分に入ることはない。
「立ち会えない。でも、不在時に部屋に入られるのは嫌だ」という場合は、点検日自体を変更してもらうことは困難だが、点検する住戸の順番は変更してもらえる場合がある。指定された日にちで都合がつきそうであれば、とりあえず点検を告知してきた管理会社へ相談してみよう。
点検に協力しなくても罰則はないが、損害賠償請求を受けることも
とはいえ、「日にち自体が合わない」「立ち会うことを忘れて外出してしまった」「そもそも他人を家の中に入れたくない」といったケースもあるはずだ。このような理由で点検に協力しないとペナルティはあるのだろうか。結論からいってしまうと、消防設備点検は入居者の義務ではないので、協力しなくても罰則はない。ただし、分譲マンションの場合は、正当な理由なく立ち入り点検を拒否していると、管理規約違反になることもあり得るので注意が必要だ。
また、消防設備点検の協力を拒み続けた状態で火災が発生し、設備の不具合によってほかの住戸に被害が及んだ場合、損害賠償保険の対象にならない可能性がある。このようなケースでは、直接損害賠償請求を受けることもあり得る。
消防設備点検に協力しないことには以上のようなデメリットがある。さらに言うまでもなく点検は住民の財産や命を守るために必要なことだ。そのことをよく理解し、できる限り点検に協力してほしい。
なお、一戸建ての住宅用火災警報器については、点検義務はない。しかし、万一の事態に備えて所有者自身が定期的な点検を実施するべきだろう。自身で引き紐を引くか警報停止ボタンを押して、正常に動作することを確認できる。自動火災報知設備は古くなると内蔵電子部品の寿命のために火災を感知しない恐れがあることから、一般社団法人日本火災機器工業会などによると、10年を目安に交換することが推奨されている。本体に記載されている製造年等を確認しておきたい。
【関連リンク】
【総務省消防庁】消防用設備等点検報告制度とは(PDF)