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【静岡近代文学研究会発行「静岡近代文学39」 】 鈴木健斗さん(18歳)の「気球」が素晴らしい

アットエス

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は12月10日に発行(奥付)された静岡近代文学研究会の「静岡近代文学39」を題材に。

今号から始まった「招待席」は、10~30代の書き手に紙面を提供しようというもの。新井裕翔さん(静岡市、22歳)のエッセー「過ぎたるは猶及ばざるが如し」、眞田蓮太さん(静岡市、高校1年生)の短歌十首が掲載された。

中でも鈴木健斗さん(静岡市、18歳)の小説「気球」が素晴らしい。まさに文学しか達成できない表現を提示している。一人称で語られる小品で、どこを探してもあり得ない世界に読者を導く。たった4ページなのに確かな読み応えがある。

広々とした大地の向こうに見える気球に向かって歩き始める「私」。上空に浮かんだ気球を目指すが、いくら歩いてもたどり着けない。体力をすり減らし、歩くことさえままならなくなる「私」の気球に向ける一方通行の感情の描写が楽しい。

気球との関係維持のために「二酸化炭素を増やす」=「深呼吸し続ける」という発想にたどり着くのがおかしい。鈴木さんの「笑いのセンス」の良さを感じる。

最後には、一人称で語っていた「私」の実体がなくなってしまった。最終行は、おそらくは真っ暗闇であろう場所から発されたつぶやき。「見なければよかった。」。なんという不穏な終幕だろうか。(は)

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