史上最大の肉食哺乳類は絶滅したクマだった?【眠れなくなるほど面白い 図解 古生物の話】
アルクトテリウム・アングスティデンス
史上最大のクマは、史上最大の肉食哺乳類か
史上最大のクマとされるアルクトテリウム・アングスティデンス。この巨大クマが登場したのは新生代の新第三紀に続く、第四紀(約258万年前から現代)の前半である更新世(約258万年前から約1万年前)の南アメリカ大陸です。
パンゲア大陸が分裂して以降、南アメリカは大きな島大陸でした。ところが、約300万年前の鮮新世中期に南アメリカと北アメリカがくっついて、ナマ地峡が形成されました。陸地を渡って南北の行き来ができるようになったことで、同じグループの生物が南北それぞれの環境で独自に進化する現象『南北アメリカ大陸間大交差』が起こりました。
南米に生息していたアルクトテリウム・アングスティデンスは、吻部が短いのが特徴の絶滅種である“ショートフェイスベア”と呼ばれるクマの仲間ですが、北米にいる親戚よりもはるかに巨大でした。
これまで「史上最大の陸生肉食哺乳類」とされてきたのは、新生代古第三紀始新世にモンゴル周辺で生息していた肉食哺乳類のアンドリューサルクスです。全身骨格は見つかっていませんが、頭の骨の巨大さから体長4メートル近く、体重400キロとも推定されています。
頭骨や歯の形からメソニクス類であるという考えが主流でしたが、最近ではそれを否定する研究も出てきました。
アルクトテリウム・アングスティデンスも肉食です。鋭利な歯と巨大な牙、骨を粉砕できるほどの丈夫な臼歯をもっていました。足も長く、現在のクマよりも速く走れたようですから、かなり強力な肉食ハンターだった可能性が高いとみられています。今後「史上最強の陸生肉食哺乳類」の座は、この巨大クマに冠されることになるかもしれません。
史上最大のクマは史上最大の肉食哺乳類か
アルクトテリウム・アングスティデンス
新生代第四紀更新世
哺乳類 有胎盤類 食肉類
クマ類
新世代の二大巨大肉食陸獣
アルクトテリウム・アングスティデンスは二足で立ち上がることも可能だったと考えられている。
もうひとつの巨獣 アンドリューサルクス
古第三紀中頃のユーラシア大陸に生息していた。体長(推測)3.8メートル頭骨しか見つかっておらず、残りは推測。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 古生物の話』代表監修:大橋 智之