どうなる、再稼働の議論。柏崎刈羽原発の現状
ニュースキャスターの長野智子がパーソナリティを務める「長野智子アップデート」(文化放送・月曜日15時30分~17時、火~金曜日15時30分~17時35分)、5月1日の放送に調査報道記者の日野行介が出演。「柏崎刈羽原発の避難計画に関する密室の議事録」というテーマで語った。この記事では柏崎刈羽原発の現状について解説した部分をピックアップする。
長野智子「まず東京電力柏崎刈羽原発について伺えますか」
日野行介「昔、オイルショックで田中角栄さんが誘致したといわれます。7基あって世界最大の原発、ともされます。でもけっこうトラブル続きで。2007年、中越沖地震のとき火事が起きて、全7基が運転停止した。その後、いったん再稼働して。福島第1原発事故のとき、運転を止めなかったことが巨大事故を起こした大きな原因なんですけど、その背景に、柏崎刈羽原発の経営側の懸念があったといわれていて。ある意味、福島原発事故の遠因になっている、日本の原発において非常に重要な立ち位置を占めている、と」
長野「大津波が来るかもしれない、という話はあったのに福島第1原発を止めなかった」
日野「安全対策を行うのは前提としても、その前にやるべきことがひとつある。止(と)めることなんですね。止めなかった原因は柏崎刈羽原発が再稼働したばかりで、影響を懸念して、運転し続けたのでは、といわれます」
長野「その柏崎刈羽原発で何が起きているんでしょうか」
日野「再稼働の議論が始まっていまして。国民的には再稼働に対して警戒感、懸念があります。4月18日に新潟県議会で、柏崎刈羽原発再稼働の是非を県民投票で問おうじゃないか、という条例案が出たんです。これが反対多数で否決された。新潟県知事はなんと言っているか。『賛成と反対の二者択一では多様な意見を把握できない』と」
長野「え?」
日野「消極的なわけですね。原発業者の歴史を振り返っていくと原発をめぐる住民投票ってけっこう行われていて。結局のところ住民が、投票というかたちで意見を可視化しなかったら、前に進むだけなんですよ。自治体のトップが住民投票に反対するということは、自分の判断でいつやるかというタイミングを計っている、ということしか考えられない」
長野「そうですよねえ」
日野「時間の問題という話なんだろう、いつなら自分は政治的なダメージが少ないか見計らっている、ということじゃないか、と思われて不思議ないわけです」
長野「多様な意見は吸い上げてほしいけど、まず住民投票で賛成か反対か、普通は可視化すべきですよね」
日野「ではなぜ原発の再稼働の是非を県民投票で決める、という発想になるか。法律的には再稼働の可否を判断するというのは原子力規制委員会の安全審査だと。この番組でも何度も言ってきたことです。でも原発事業者、電力会社は地元自治体と安全協定を結んでいる。これで新増設や再稼働に対しては自治体の事前了解をもらいなさい、と。それで地元の同意をとったよ、OKをもらったよ、そう『見せかける』……というとまずいですが」
長野「段取り的に必要ですよ、と」
日野「県知事が『事前了解しましたよ』という局面が、原発再稼働をめぐっていちばん盛り上がる。なぜかといえば安全協定で同意見を持っているからと。ただあくまで紳士協定なので法的な制限はない。逆にいえば県民投票条例が行われて反対が上回ったとして、法律、規制委員会の許認可も縛ることはできない。でも一応、原発行政はいつも地元の意見を尊重します、と言っているので、いったん立ち止まらざるを得なくなる。これも原発行政の矛盾のミルフィーユのひとつ、という感じです」