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採用されない中高年の現実とは? 40代50代プログラマーが「年齢の壁」を突破する秘策

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採用されない中高年の現実とは? 40代50代プログラマーが「年齢の壁」を突破する秘策

最近HOTな「あの話」の実態

ひと昔前のプログラマーといえば、長時間労働が当たり前のブラックな仕事の代表格でした。そのため、「30代も半ばを過ぎると、体力的にも精神的にもツラくなる」という、いわゆる「プログラマー35歳定年説」がありました。

しかし、「働き方改革」の波がIT業界全体を覆い尽くした今日においては、この説を耳にする機会は急速に減り「生涯現役プログラマー」を貫く人も珍しくありません。

プログラマーにとって「年齢」は、さしたる障害ではなくなったように見えますが、本当でしょうか。そこで今回は40代、50代の中高年プログラマーに立ちはだかる「年齢」の壁と、突破するポイントについて話したいと思います。

博士(慶應SFC、IT)
合同会社エンジニアリングマネージメント社長
久松 剛さん(

@makaibito

2000年より慶應義塾大学村井純教授に師事。動画転送、P2Pなどの基礎研究や受託開発に取り組みつつ大学教員を目指す。12年に予算都合で高学歴ワーキングプアとなり、ネットマーケティングに入社し、Omiai SRE・リクルーター・情シス部長などを担当。18年レバレジーズ入社。開発部長、レバテック技術顧問としてキャリアアドバイザー・エージェント教育を担当する。20年、受託開発企業に参画。22年2月より独立。レンタルEMとして日系大手企業、自社サービス、SIer、スタートアップ、人材系事業会社といった複数企業の採用・組織づくり・制度づくりなどに関わる

中高年が敬遠される理由は“扱いづらさ”

念のため触れておきますと、2007年10月に改正された雇用対策法では「事業主は労働者の募集及び採用について、年齢に関わりなく均等な機会を与えなければならない」とされ、求人における年齢制限は禁止されています。

つまり、年齢を理由に求職者を選別するのは違法なのですが、現実には多くの企業でいまだ年齢による選別がされています。企業が採用目標人数を拡大していたエンジニアバブル下では中高年の活用がトレンドになりかけたのですが、定着する前にバブルが終わってしまいました。

企業から中高年を採用しない理由としてよく挙げられるのは「上司より部下が年配だと指示が出しづらい」「20代中心の組織に40代が入るとハレーションが起きるのでは」といった懸念のほか、実際に採用したものの早期離職や期待していた成果が残せなかったなど、何らかの失敗やトラブルに見舞われた経験からくる理由が大半を占めます。

多くの人が心のどこかで「扱いづらい中高年より、素直な若手がいい」という思いを共有しているからこそ「年齢」の壁が高く、厚くなっているのです。

しかし、優れた技術力やマネジメント経験があるエンジニアについては話が別です。むしろ経験豊富な40代以上は引く手あまたで採用意欲は高止まりしており、スタートアップや中堅以上の企業に、CTOやVPoEとして迎えられたり、場合によっては執行役員や取締役として処遇されたりすることも珍しくありません。スペシャリストとして活躍されている方であっても定年延長や、嘱託職員の待遇見直しの動きもあります。

しかし、三顧の礼で迎えられるほどの実績も名声もない40代、50代はどうでしょう。年を経るごとに転職が難しくなる傾向は否めません。

特に厳しいのは、リーダーやマネジャー経験がないまま年を重ねてしまった中高年プログラマーです。

「生涯現役プログラマー」を名乗る人のなかには、組織の後ろ盾がなくとも会社員以上に稼げる人はもちろん大勢います。

事実、巷にはフリーランスに仕事を斡旋するエージェントはたくさんありますし、「手を動かせる人」を必要とする企業は引きも切りません。

であれば「転職が難しいなら、独立して起業するか、フリーランスになればいいのでは?」と、思うかもしれません。

しかし、安定したサラリーマン生活に区切りをつけ、起業やフリーランスに踏み切れる人ばかりではありません。特に転職経験がなく一つの会社に長く勤め続けた方であればなおさらです。

ひとたび会社を離れれば、定期的な収入の保証はなくなるわけですから「まだ何年も残っている住宅ローンを返しながら、子どもたちを大学にやるための学費を稼げるのか」と家族に問われ、確信を持って説得できる人はそう多くないはずです。

むしろ反論できず、安定したサラリーマンの身分を捨てられない人が多いのではないでしょうか。

そうなると、多少不満があっても現職にしがみつきながら、狭き門を狙って腰を据えて転職先を探すことになりますが、なかには条件に合う転職先が見つからないまま、そのまま定年を迎えてしまうことすら珍しくないのが実情でしょう。

しかし長年、エンジニアの転職相談に乗っていると、「自分には他人に誇れるような実績がない」と感じている40代、50代の中高年プログラマーであっても、希望通りの転職先を見つけられることがあります。その経験からすると、条件さえ整えば「年齢の壁」を突破できるというのが私の感触です。

ここからは、転職に成功する中高年プログラマーの条件をご紹介します。

転職成功率をあげる「年の功」と「腰の低さ」

結論から申し上げると、転職に成功する中高年プログラマーの条件は次の三つに絞られます。

「年の功が光る強み」があり、かつ「腰が低く親しみやすい人柄」であること、そして「信頼できる人物からの紹介」であれば万全です。これらの条件が揃えば転職成功率は格段に高まります。

具体的に見ていきましょう。

「年の功が光る強み」とは何か。それは、効率化の波に取り残された領域での経験であり、技術の変遷を現場で経験したからこそ可能な勘所を押さえた対応が必要になることが多い領域における経験を指します。

具体的には、汎用機のメンテナンスやマイグレーション、セキュリティー対策などの領域での経験が該当します。運用から10年以上経過しているJavaやPHPのシステムのうち、売上が立っているものなどもこうなる可能性が高いです。フレームワークのないJavaで動作しているシステムなどは若い人がやりたがらないので、狙い目と言えます。

インフラ領域の場合、各クラウド事業者によって便利なマネージドサービスが普及しており、表面上は低レイヤーを意識せず構築に取り組めるようになりました。プログラミング領域の場合、プログラミング言語の高級化や、フレームワークやライブラリのリッチ化、計算機資源の上昇により低レイヤーを意識せずに開発ができるようになりました。

しかし、こうしたサービスがあらかじめ備えた機能が、ありとあらゆる用途に適応できるわけではありません。特殊な用途や複雑に絡み合う技術的課題を克服するには、ベテランの知識や経験を必要とする余地は今もたくさん残されています。

つまり、効率化の手がおよんでいない領域、若手が経験し得ない領域にこそ、中高年プログラマーの知見が生きる場があるわけです。もしこうした領域に自分の強みが見出せるなら、40代、50代であっても転職は可能といえます。求人数はまだまだ少ないですが、60代の採用がなされるケースもあります。

「腰が低く親しみやすい人柄」を感じさせる方は、既存の組織に入ってもスムーズなオンボーディングが期待されます。

私がこれまで見てきたなかで、華やかな肩書や経歴を持たず年を重ねたプログラマーでも転職に成功してきた方は、等しくこうした条件が揃っていた方でした。

とはいえ、20代、30代と比較してしまうと、中高年プログラマーで就社志向のある方の転職成功率は高くないのが実情ですし、条件のいい求人が狭き門であるのは紛れもない事実です。

では、どうすれば限りある採用枠をものにできるのでしょうか。

中高年プログラマーの転職は「運」ではなく「積み重ね」でつかめ

中高年プログラマーが転職を成功させるための条件として挙げた三つのうち、すぐに実践可能なのが「年の功が光る強み」です。

これを読んで「なるほど。であれば『年の功が光る強み』に当てはまる経験を、箇条書きで職務経歴書に書けばいいんだな」と、思ったあなた、それは早合点というものです。

企業が知りたいのは、あなたが経験したプロジェクトの概要や規模よりも、むしろ「あなたがその実績に対してどの程度関与したか」「その経験を通じてあなたが何を得たか」だからです。ですからプロジェクトの概要と年数だけがつらつら書いてあるだけではあまり効果がありません。

力を入れて書くべきは、プロジェクトに立ちはだかった課題と、その課題を解決までのプロセスが端的にイメージできるような「エピソード」です。特に、メンバーと協力して事を成し遂げた経験は再現性の高い経験として認められやすいので、思い当たる経験があるなら重点的に書きましょう。むろん過剰な装飾は不要です。

しかし、そうはいっても何年も前のプロジェクト詳細は思い出せないという方もいるのではないでしょうか。対処法としては、できれば半年に1回、少なくとも年に1回の頻度で、職務経歴書をアップデートするようにすれば、記憶の鮮度を保てるのでおすすめです。

また「腰が低く親しみやすい人柄」は、自己評価ではなくあくまでも他者から見たときのあなたの評価。付け焼き刃でなんとかなるようなものではありません。

信頼や信用は日頃の仕事ぶりや日常の振る舞いによって育まれるものと心得て人との接し方を考えて行動するようにしましょう。個人的にも心がけているのが「笑顔」です。上司や契約先が年下になることも多いIT企業において、『話しかけにくい不機嫌なおじさん』という感想を相手に抱かせるのは死活問題です。

また最近は、かつて同じ職場で働いた人物に求職者に対する印象を聞くリファレンスチェックを施す企業が増えていますが、推薦をお願いした人に対して「うまいこといっといてよ。今度おごるからさ」などというのは、冗談であっても慎むべきでしょう。忖度混じりの話にリアリティーはありませんし、そもそもこれは「買収」にあたる行為。結果的にあなたの印象が悪くなる可能性があるのでやめておいたほうが無難です。リファレンスチェックのスコアが良くても入社後の活躍とブレる、ズレることによってバレてしまう方が多いです。

「信頼できる人物からの紹介」で期待されるものは社員からのリファラルです。人物面の保証を対象企業の社員が行うことによって選考ハードルが下がる傾向にあります。

直近では「現場で一緒になった50代SES社員をリファラルする」ケースも目にしました。今現在友人・知人の輪が少ない場合であっても、社外の勉強会やカンファレンスなどを通じて親しい知人を増やすことをお勧めしています。

リアルでの交流に加えてネットでの情報発信も必須です。例えば、最近キャリア系SNSとして人気の「YOUTRUST」などで、日頃の仕事ぶりや興味・関心があることについて発信したり、仕事仲間や友人、知人のネットワークを増やしたりすることで、希少な求人情報が得やすくなります。友人・知人の数を増やした上で転職の意向を表明することで声を掛けてもらえる可能性は高まるでしょう。

すぐに転職に繋がらなくても、日頃からリアルな場での人脈づくりやネット上での繋がりはいざというときの助けになるので、意識して取り組んでも損はありません。

繰り返しになりますが、中高年プログラマーの転職は容易ではありません。だからといって、何もせず諦めてしまっては元も子もなくなります。先に挙げたポイントを踏まえれば、転職成功の確率は確実に上がりますし、結果的に起業やフリーランスを選んだとしても役立つものばかりです。

つまり、中高年プログラマーの転職は「運」ではなく「積み重ね」によってつかむもの。ぜひ今回お伝えした三つの条件を意識して転職確率を上げていってください。応援しています。

構成/武田敏則(グレタケ)、編集/玉城智子(編集部)

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