酸素のせいで光合成の効率が悪くなる?【眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話】
Q 酸素のせいで光合成の効率が悪くなる?
A ルビスコという酵素が原因。でもこれが大事
光合成は、地球の生物を支える最も重要な化学反応といわれています。光合成を行う微生物のシアノバクテリアが出現したのは、約27億年前の海の中でした。その頃の大気中の酸素濃度は1%もありませんでした。そして徐々に酸素が増えていき、現在は21%です。酸素によって生物が繁栄できたのですが、酸素を連綿とつくってきた植物自身は、光合成に苦労するというジレンマに直面しています。それは光合成を担うある酵素が、二酸化炭素だけでなく、酸素も捕えてしまうので、効率が悪くなっているからです。
光合成を行うときには、取り込んだ二酸化炭素を固定しなければなりません。それを担っているのが、「ルビスコ」とよばれる酵素です。
ルビスコは、とても原始的な酵素で、二酸化炭素分子と酸素分子の区別がまったくできません。さらに、二酸化炭素を捕まえることはかなり難しいので、植物は多くのルビスコを使います。しかし光合成の暗反応のとき、酸素も捕らえてしまうため、非常に効率の悪いことをしているように見えます。
では、ルビスコを捨てればいいかというと、そうはいきません。ルビスコという酵素は、世界でもっとも数の多いたんぱく質といわれ、すべての植物はルビスコを使って光合成をしています。ルビスコはまた、二酸化炭素を4つ捕らえるごとに、酸素も1つ捕えています。この酸素からある有機物がつくられ、それがミトコンドリアという細胞内小器官に送られて、ミトコンドリアは二酸化炭素を排出します。これを「光呼吸」とよびますが、光呼吸の途中でできた有機物は、葉緑体に戻って再び光合成に寄与します。光合成はかなりややこしい反応です。
ルビスコは 27億年前のシアノバクテリアにもあった
約27億年前、海で発生したシアノバクテリアは、明反応でできた酸素を捨て、暗反応でルビスコによって二酸化炭素を捕まえて有機化合物(糖)を合成した。ところがそのうち、捨てたはずの酸素も取り込んでしまうようになり、それが現在の多くの植物にも受け継がれている。
ルビスコは糖の合成に必要だが 、効率が悪い
ルビスコが捕まえた酸素は、ミトコンドリアという細胞内小器官に送られ、二酸化炭素を出す。これを「光呼吸」といい、光呼吸の途中でできた有機物は、葉緑体に戻って再び光合成に寄与する。
すごい!光エネルギー
二酸化炭素分子と酸素分子の区別ができないルビスコは、植物にとってジレンマの酵素。なければ光合成はできず、あっても効率が悪いからだ。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話』監修:稲垣栄洋