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2億年前から変わっていない『カブトガニ』はカニではなクモの仲間 生態や秘密に迫る

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カブトガニ(提供:額田善之)

カブトガニは「生きた化石」と呼ばれる節足動物で、クモの仲間です。約2億年前からほぼ変わらずに生き残っています。

(アイキャッチ画像提供:額田善之)

カブトガニとは?

カブトガニは水生生物として進化を続けてきましたが、現在では4種しか存在しません。

カブトガニ全体図(撮影場所:カブトガニ博物館)

日本やアジアに生息するカブトガニ Tachypleus tridentatus は他の3種よりも大きく、最大で70cmほどの大きさです(上部写真の①前体部と④後体部で35cm、⑨尾剣部が35cm)(「カブトガニ」ー環境省せとうちネット)。なお、オスよりもメスの方が大きく、オスとメスで形態が多少異なります(頭の先端や⑧の長さ、⑮はオスだけなど)。

目は前体部の背中側に単眼と複眼、腹側に複眼がありますが、あまり視力はよくないようです。脚は前体部の腹側に6対あり、1対目の短い脚で脚の付け根にある口に餌を運んで食べるそうです。なお、後体部の腹側に鰓があり、鰓呼吸をします。

カブトガニは生息環境の悪化で、環境省レッドリストでは絶滅危惧種I類(CR+EN)に指定されています。しかし、カブトガニ自体は天然記念物ではなく、岡山県や佐賀県、愛媛県の生息地が天然記念物に指定されている不思議な生物です(「生き物が絶滅しないためのルール ワシントン条約・レッドデータブック・天然記念物」-一般社団法人 大日本水産会 魚食普及推進センター)。

カブトガニの分布

カブトガニは日本では、瀬戸内海沿岸の一部(岡山、山口、愛媛など)と九州北部に生息しています。また、アジア(台湾、中国、フィリピン、インドネシアなど)にも生息していることが確認されています。

4種類のカブトガニ亜種とその分布について、以下で簡単に紹介します。

アメリカカブトガニはアメリカ東海岸とメキシコに分布します。上写真上部にある地図だと青色あたりです。

カブトガニは日本、アジアに分布しており、上写真の赤色のあたりに生息しています。

ミナミカブトガニはインドのベンガル湾沿岸、ミャンマー、タイ、マレーシア、インドネシアに生息しています。上写真でいうと黄色のあたりです。マルオカブトガニはミナミカブトガニとほとんど同じ場所に分布しています。

カブトガニは、波の静かな内湾に小河川が流入して多少の干潟が形成される場所で繁殖・生育するため、戦後の干拓事業や河川護岸改修などでそのような場所が激減したことで、絶滅の危機に瀕しています。

カブトガニ解説展示(撮影場所:カブトガニ博物館)

カブトガニの生態

カブトガニは夏から初秋の大塩の満潮時に、雌の甲羅の後ろに雄がつかまり交尾をし、波 打ち際で直径2ミリほどの卵を数千個産卵します。

卵は砂の中で50日以上かけて孵化し、幼生は砂を掻き分け水中に泳ぎ出します。その後、保育場にあたる干潟に潮流で運ばれてたどりつき成長し、段階的に沖に出ていくようになるそうです(「カブトガニの形態・生態と流れの関係」ー日本流体力学会誌「ながれ」20 巻[2001]5 号P.365-374)。

成体では年に1回ほど脱皮をすることで成長とともに損傷部位が修復され、25年くらい生きるといわれています(「カブトガニ」ー環境省せとうちネット)。

カブトガニの血液

「カブトガニの血は青い」と言われていますが、実は乳白色です。取り出したあと、酸素に触れることで酸化して青くなります。

これは、節足動物の一部やイカやタコなどの酸素運搬はヘモシアニンという銅を含むタンパク質が担っているからです。ちなみにヒトでは鉄を含むヘモグロビンが酸素運搬を担うため、血は赤色になります。

医療現場などで活用

カブトガニの血液成分は菌の成分と反応して固まる性質があるため、病原菌に侵されているかを診断する検査薬などに使われています。筆者も食品会社で働いていたころ、よく使っていました。

カブトガニが多く生息するアメリカでは年間数十万匹も捕獲され、血液を抜かれたあと海に戻されますが、かなり高い確率で死んでしまうそうです。

アメリカでも他の地域と同様に生息数が減少していることが分かっています。このままでは、医療関連での検査ができなくなる恐れがあり、化学合成で代替品を開発することが必須です。

アメリカでも研究開発が進んでいますが、未だに全ての要求を満たす物質は見つかっていません。カブトガニの絶滅を防ぐためにも、なんとしても開発が成功することを祈ります。

カブトガニの家悦章成分が使用されている検査薬(撮影場所:カブトガニ博物館)

カブトガニを守る活動

岡山県笠岡市や愛媛県、福岡県などでカブトガニの保全活動が行われています。

カブトガニ(撮影場所:カブトガニ博物館)

川岸や河口、干潟の清掃や、人工繁殖させた幼生の放流などにより、少しでも生残数が増えるようにボランティアの方々が尽力されています。

「ゴミのポイ捨てをしない!」など自分たちにもできることもあるので、みなさんもご留意ください。

カブトガニ博物館

カブトガニのことなら、世界唯一のカブトガニ専門の「カブトガニ博物館」に行けば何でも分かります。

カブトガニが誕生した約5億年前に存在した恐竜の化石や像が博物館内外に展示されているので、カブトガニは生きた化石であることを実感できますよ。

興味がある人はぜひ訪れてみてはいかがでしょうか?

カブトガニ博物館(撮影:額田善之)

笠岡に行ったら「かぶとがに饅頭」を食べよう!

笠岡名物「かぶとがに饅頭」は、老舗の和菓子屋である玉利軒が作っている緑茶あんが入ったカブトガニの形をしたまんじゅうで、優しい甘さと皮のほろ苦さがとてもマッチしていて、おすすめです。

色々な大きさがあり、SNSでも人気を博します。笠岡に来たら是非一度購入してみてくださいね。

かぶとがに饅頭(撮影:額田善之)

SDGsを意識してカブトガニを守ろう!

生息環境を奪われて絶滅の危機に瀕している動植物は、世の中にたくさんいます。カブトガニも例外ではありません。しかし、自分たちでもできることがあるのです。

SDGsを推進し、「ゴミはゴミ箱へ」「ゴミや廃液を違法投棄しない」ことを遵守し、少しでも環境保全に努めましょう。

未来に向けて生物多様性や豊かな自然を残していくことは、私たちの役目です。

カブトガニの生息地(撮影:額田善之)

<額田善之/サカナトライター>

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