介護職に向いてる人ってどんな性格?介護現場の現状からみる向き不向きとは
介護職に向いている人の性格とは?
共感力・思いやりがある人
介護職においては、利用者への共感力と思いやりはとても重要です。高齢者の多くは身体的な不調や認知機能の低下、そして家族との関係性の変化など、不安を抱える方も少なくありません。そんな状況で介護職員に求められるのは、利用者の心境を理解し、寄り添う姿勢です。
例えば、認知症の方が同じ質問を繰り返す場面があります。このとき「相手は不安だから確認したいのかな」と考えられる人は、自然とやさしい対応ができるものです。高度な共感力を持っている必要はなく、相手の立場に立って考えようとする心構えが大切になってきます。
思いやりを持った対応は、利用者との信頼関係構築にも繋がります。身体介護や生活支援を行う際、利用者のプライドを傷つけないよう配慮したり、その人らしい生活を続けられるよう工夫したりする姿勢がポイントです。
こうした気遣いができる人は、利用者から「この人になら任せられる」と信頼を得やすくなります。
また、適切に相手を思いやるには相手を日頃から観察し、小さな変化にも気づいて対応することが大切です。いつもより食欲がない、表情が暗いといった変化を見逃さず、適切な対応につなげることで、重篤化を未然に察知できる可能性が高まります。
利用者の尊厳を大切にし、一人ひとりの個性や価値観を尊重する姿勢こそが、質の高い介護サービスの提供につながるのです。
コミュニケーション能力がある人
介護は、一人で完結する仕事ではありません。看護師、医師、栄養士、理学療法士など、多くの専門職と連携しながら進める「チームケア」が基本となります。そのため、さまざまな人とのコミュニケーションを円滑に行える人は、介護現場で力を発揮しやすいでしょう。
利用者とのコミュニケーションでは、相手のペースに合わせた会話が大切になります。聞こえにくい方には聞こえづらい方にはゆっくり・はっきり声を届けたり、認知症の方には分かりやすい言葉を選んだりと、相手に応じた伝え方の工夫が必要です。
また、言葉だけでなく、表情や身振り手振りも重要なコミュニケーション手段となります。
現場では利用者だけでなく、利用者の家族とのコミュニケーションも必要になってきます。利用者の状況を分かりやすく説明したり、家族の不安や要望を聞いたりする場面があります。
その際には医療的な専門用語を使わず、相手が理解しやすい言葉で伝えるといった配慮ができると良いでしょう。
職場内でのチームワークも重要な要素です。申し送りでは正確な情報共有が求められますし、忙しい時間帯には同僚と協力して業務を進める能力が求められます。「困ったときはお互い様」という気持ちで、助け合える関係性を築ける人は、職場で歓迎されやすいかもしれません。
高度なコミュニケーション能力を最初から持っている必要はありません。相手の話をしっかり聞こうとする姿勢や、分からないことは素直に質問する謙虚さがあれば、経験を積みながらコミュニケーション能力を磨いていくことができます。
几帳面で真面目な人
介護の現場では、利用者の安全と健康を守るために、細かな記録や観察が欠かせません。几帳面で真面目な性格の人は、こうした業務に取り組みやすいかもしれません。
毎日の介護記録では、利用者の体調変化や食事量、排泄状況、睡眠時間などを正確に記録する必要があります。
これらの情報は、医師や看護師が利用者の健康状態を判断する重要な材料となるため、「だいたい」ではなく「正確に」記録することが求められます。細かな作業を継続的に行うことが苦にならない人は、この点で力を発揮できるでしょう。
また、薬の管理や服薬介助も責任の重い業務です。指示された時間と量を、正しい利用者に確実に提供する必要があります。一つ間違えれば利用者の健康に影響する可能性があるため、確認作業を怠らない慎重さが大切になります。
介護現場では利用者の生活を支えているという責任感とプロとしての意識が常に求められます。
介護職に向いていない人の性格とは?
極度に清潔志向な人
介護の現場では、排泄介助や入浴介助、食事介助など、日常生活全般にわたる身体介護が中心となります。そのため、清潔さにこだわりすぎる傾向がある人にとっては、ストレスを感じる場面が多いかもしれません。
排泄介助では、おむつ交換やトイレ介助を行います。においや汚れへの感受性が高い場合、これらの業務にストレスを感じやすい傾向があります。
また、認知症の方のなかには、食べ物をこぼしてしまったり、衣服を汚してしまったりする場合もあります。こうした状況に対して汚いという感情が先立つと、適切な介護を提供することが難しくなるでしょう。
ただし、こういった性格だからといって、絶対に介護職が向いていないわけではありません。清潔への意識は感染予防の観点では欠かせませんし、それに対してストレスを感じてしまうことも人として自然なことです。鍵となるのは、自分の特性を理解し、それにどう対処するかを考えることです。
介護職を検討している人は、事前に実際の現場を見学したり、体験実習に参加したりして、自分がどのように感じるかを確認してみることをおすすめします。想像と現実のギャップを事前に把握することで、より適切な判断ができるようになります。
短気・せっかちな性格
介護の現場では、利用者一人ひとりのペースに合わせたケアが基本となります。そのため、物事を効率よく素早く進めたいと考える人にとっては、もどかしさを感じる場面が多いかもしれません。
高齢になると、若い頃と比べて動作がゆっくりになる傾向があります。着替えに時間がかかったり、食事のペースが遅かったり、歩行に時間を要したりすることは自然なことです。また、認知症がある方を介助する場合、同じ説明を何度も求められたり、理解に時間がかかったりすることもあります。
こうした状況で「早くしてください」「もう説明しましたよ」といった急かしは、利用者にプレッシャーを与えてしまう可能性があります。利用者にとって介護職員の急かすような態度は、不安やストレスの原因となり、かえって動作が遅くなったり、混乱を招いたりすることもあるのです。
業務に追われがちな介護現場では、時間に追われてしまうことも頻繁にあります。しかし、そうした中でも利用者の尊厳を大切にし、その方が望む生活リズムを尊重する姿勢が不可欠です。
ただし、せっかちな性格が必ずしもマイナスになるわけではありません。緊急時の対応や効率的な業務の進め方など、スピード感が活かされる場面もあります。大切なのは、場面に応じて自分の行動をコントロールできるかどうかでしょう。
自分の性格を理解し、利用者との関わりで意識的にゆっくりとしたペースを心がけることができれば、現場で活躍できる可能性が高まります。
優しすぎて自分を追い込みがちな人
他人への思いやりが深く、常に相手のことを優先して考える人は、一見すると介護職に向いているように思えます。しかし、優しすぎる性格の人が陥りやすい落とし穴もあります。
介護の現場では、利用者の要望にすべて応えることが必ずしも良いケアとは限りません。例えば、転倒リスクの高い利用者が「一人で歩きたい」と希望された場合、安全を考慮して制限をかける必要があります。
しかし、相手を傷つけたくないという気持ちが強すぎると、適切な判断ができなくなってしまう場合もあります。
また、利用者の感情に深く寄り添うあまり、仕事とプライベートの境界線が曖昧になってしまう人もいます。
自分の限界を無視して働き続けてしまう人は、結果的に体調を崩したり、燃え尽き症候群に陥ったりするリスクがあります。心身に負担を感じる場合は、早めに職場や相談窓口への相談を行いましょう。
優しさは介護職にとって大切な資質ですが、同時に自分自身をケアする意識も必要です。適度な距離感を保ち、自分の健康状態にも注意を払える人の方が、長期的に質の高いケアを提供できるでしょう。
「利用者のために」という気持ちを大切にしながらも、「自分が健康でなければ良いケアはできない」という視点を持つことが不可欠です。
介護人材の現状とは?
採用と離職の傾向
介護業界の人材確保は、日本の高齢化社会において重要な課題となっています。令和4年度介護労働実態調査では、「大いに不足」「不足」「やや不足」と回答した事業所が66.3%で、半数以上の事業所が人材不足を感じているという結果が出ています。
このような人手不足の環境では、一人ひとりの負担が大きくなる傾向があり、介護スタッフ自身が負担を抱え込んでしまいやすい体制になりがちです。
また、同調査によると介護職員の採用率は16.3%、離職率は14.9%となっており、採用が離職を上回る状況が続いています。
介護業界の離職率は全産業平均と同程度で、介護業界特有の高離職という印象はやや改善傾向にあります。
また、現在の職場で働き続けたいと考えている介護職員は58.2%となっており、多くの人がこの仕事にやりがいを感じていることも事実です。
介護職を検討している人にとって重要なのは、自分の生活スタイルや価値観に合った職場を見つけることかもしれません。
採用面では、無期雇用職員と有期雇用職員で異なる傾向が見られます。有期雇用職員の方が採用率・離職率ともに高くなっており、雇用形態によって働き方に違いがあることが分かります。
これから介護職を目指す人は、こうした雇用形態の違いも含めて検討することが大切でしょう。
65歳以上雇用の割合と多様な人材の現実
介護業界の特徴の一つとして、幅広い年齢層の人材が活躍していることが挙げられます。令和4年度介護労働実態調査によると、65歳以上の労働者を雇用している事業所は69.1%に達しており、約7割の事業所で高齢者が働いています。
職種別に見ると、訪問介護員では65歳以上の労働者が全体の26.3%を占めており、4人に1人以上が65歳以上という計算になります。続いて看護職員の14.2%、サービス提供責任者の12.3%となっています。
高齢の介護職員が多い背景には、人生経験の豊富さが介護の現場で活かされているという側面があります。特に訪問介護では、利用者との一対一のコミュニケーションが重要になるため、豊富な人生経験や落ち着いた対応ができる高齢者の存在は貴重です。
また、高齢者自身が介護を必要とする年代に近いため、利用者の気持ちを理解しやすいという利点もあります。近しい経験を積んでいることから、より共感的なケアを提供できる場合もあるのです。
ただし、体力的な面での課題もあります。身体介護が中心となる施設では、高齢の職員には負担が大きい業務もあります。そのため、職場では年齢に応じた業務分担や、経験を活かした指導的な役割を担ってもらうなど、多様な働き方が模索されています。
介護職を検討している人にとって、年齢は必ずしも制約にはなりません。むしろ、それぞれの年代が持つ強みを活かせる職場が介護業界の特徴といえるでしょう。
施設ごとに求められる能力
介護職といっても、働く施設や事業所によって求められる能力や適性は大きく異なります。自分の性格や得意分野に合った職場を選ぶことで、より充実した介護職としてのキャリアを築くことができるでしょう。
特別養護老人ホーム(特養) 要介護度の高い利用者が多いため、入浴介助や移乗介助など、体力を要する業務が多いのが特徴です。 そのため、体力に自信があり、重い責任を担うことにやりがいを感じる人に向いているかもしれません。 また、医療的ケアが必要な利用者も多いため、正確性と冷静な判断力も重要になります。 訪問介護 利用者の自宅で一対一のケアを提供するサービスです。一人で判断し、対応する場面が多いため、 コミュニケーション能力と柔軟性が特に重要になります。 利用者や家族との距離が近くなりやすく、個別性の高いケアが求められるため、 相手に合わせて対応を変えることが得意な人に適しているでしょう。 デイサービス 利用者が日中を過ごすためのさまざまなプログラムを提供します。 レクリエーションの企画・運営や、イベントの準備などが業務に含まれるため、 企画力や創造性を活かしたい人にとって魅力的な職場かもしれません。 明るく積極的な性格の人が力を発揮しやすい環境といえるでしょう。 グループホーム 認知症の方が共同生活を送る施設です。認知症ケアに特化しているため、 利用者の心理状態を理解し、寄り添うことができる共感力と根気強さが重要になります。 一つの「家」として機能するため、家庭的な雰囲気作りが得意な人に向いているかもしれません。
ただし、ここで記載した内容は一般的な傾向であり、実際には施設によって業務の幅や重視しているケアは大きく異なります。
同じ特養でも、レクリエーションに力を入れている施設や、医療的ケアに特化した施設などがあり多種多様です。そのため、求められる能力や適性にも違いが生まれます。
介護職への転職や就職を検討している人は、施設のパンフレットやホームページなどの資料を確認したり、面接や施設見学の機会を通じて、実際の業務内容や職場の雰囲気を確かめることをおすすめします。
自分に合った職場を探すことが、長く充実した介護職としてのキャリアを築く第一歩となるはずです。