【死ぬほど暑い夏に聴くセクシー歌謡5選】夏木マリ、松坂慶子、山本リンダら美女大集合!
死ぬほど暑い夏に聴くセクシー歌謡5
暑い。とにかく暑い。日本列島全体に強烈な冷房を入れてほしいと思うきょうこの頃、皆さんいかがお過ごしですか? ただでさえ私は夏が苦手なのだが、ここ数年の気温上昇はマジで半端ない。連日内臓にくる暑さで、マジで倒れそうだ。
で、そんな猛暑の中、Re:minderから “死ぬほど暑い夏に聴くセクシー歌謡5選” というお題でコラム依頼を頂いた。こういうテーマは近年、特に放送業界では “ちとコンプラ上、アレでして……” と敬遠されたりするのだけれど、さすがはRe:minder、暑さにヤラれて思考能力が低下しがちな夏こそ、セクシー歌謡で脳に刺激を与えて元気を取り戻そう!という考え方はまったく正しいと思う。だって、私が大学生の頃(昭和末期)はまだ、新橋の屋上ビアガーデンで水着姿の外国人美女が “泥んこプロレス” をやってたんだから。すっかり絶滅してしまったあの素晴らしい文化をもう一度!
さて、本題に移ろう。5曲チョイスする前に、個人的な “セクシー歌謡” の選曲基準について触れておこう。下の5点を基準にそれぞれ1曲ずつ選んでみた。ぜひこの順番で聴いてみてほしい。
① エロいワードが一切入っていないのに、なぜか “そそる” 曲
② 曲が脳幹を突き動かすロックな曲
③ 気品あふれる中に、そこはかとなく色香が漂う曲
④ セクシーさが “どうにもとまらない” 曲
⑤ ジャケットも歌もセクシー度が高い曲
妖艶な黒のドレス姿で登場した松坂慶子
愛の水中花 / 松坂慶子(1979年)
セクシー歌謡というと、私の中で外せないのが松坂慶子だ。この曲は、1979放送のTBS系ドラマ『水中花』のオープニングテーマだった。ドラマの原作は五木寛之で、なんと作詞も五木先生ご自身。それだけ松坂に惚れ込んでいた証だ。
ドラマの主人公は、妹が作った借金を返すために、高級クラブでコーラスガールとして働くことになった女性。演じたのは松坂で、なんと劇中ではバニーガールの格好で歌うシーンもあった。当時中1だった私は、もうズッキュン!である。毎週テレビにかじりついて観ていたのは言うまでもない。
しかもこのドラマ、放送時間は木曜夜10時からだった。当時、TBSでその前の枠、木曜9時からの番組といえば… そう、『ザ・ベストテン』だ。妖艶な黒のドレス姿で登場。この曲を生で歌ったときの感動は今も忘れない。“チャンネルはそのままでドラマもご覧ください。もっと妖艶な衣装で出てきますから” という番宣も兼ねていた。そんなの、言われなくても観るに決まってるじゃないか。翌日、中学校では男子全員 “きのうの松坂慶子、観た?” という話題でもちきりだった。
歌詞も素晴らしい。作詞家でもある五木先生はさすがによくわかってらっしゃって「♪乾いたこの花に 水をあたえてください 金色のレモンひとつ 胸にしぼってください」って、使っている言葉はごく普通なのに、この官能的な響きはどうだろう? これぞ “ザ・セクシー歌謡” である。
実は五木先生が最初に書き下ろした歌詞は、まったく別のものだったそうだ。打ち合わせで五木先生に “こんな歌詞を書いてみたんだが、どうかね?” と感想を求められ “先生、実感がよくつかめないんですけど…” と正直に答えた松坂。それもすごい話だが、たぶん自信作だったろうに “そうか… わかった” と全面的に歌詞を書き直した五木先生も素敵すぎる。「♪あれも愛 これも愛 たぶん愛 きっと愛」… 愛があふれたこの曲を通じて、中坊の私は大人の世界を知っていったのである。
忌野清志郎作曲、本田美奈子. の1人ロックミュージカル
あなたと、熱帯 / MINAKO with WILD CATS(1988年)
本田美奈子.のセクシー歌謡というと「1986年のマリリン」(1986年)を思い出す方が多いと思うが、もう1曲、“ロックシンガー MINAKO” として女性だけのロックバンド・WILD CATSを従えて熱唱したこの曲を忘れてはいけない。
「♪私の名前は 密林の女王 百獣の王ライオンも 子猫のようにひざまずく」という強烈なフレーズで始まり、「♪あなたと熱帯 あなたと熱帯」とサビで連呼。“あなたと寝たい” とのWミーニングであることは言うまでもないが、この歌詞ですぐ連想するのが、彼女を愛車に喩えて「♪こんな夜に お前に乗れないなんて こんな夜に 発車(発射)できないなんて」と絶唱するRCサクセション「雨あがりの夜空に」である。
で、この「あなたと熱帯」を作曲したのは、実は忌野清志郎だったりする。でも清志郎が手掛けたのは作曲だけで、作詞は誰あろう、松本隆である。作曲者に敬意を表したこの洒落っ気がニクい。「1986年のマリリン」は、スレンダーな本田が無理やりマドンナに寄せていて、正直痛々しく感じたが、ロックに全振り、アマゾネスを演じたこの曲は本人も振り切っていて “1人ロックミュージカル” でもあった。脳幹を揺すぶる快作であり、早逝が本当に惜しまれる。
気品があって、キュートでかつ色っぽい坂本冬美のボーカル
逢いたくて逢いたくて / HIS(1991年)
オリジナルは園まりの1966年のヒット曲。西野カナの曲とは関係ない(笑)。もともとはザ・ピーナッツのシングル「手編みの靴下」(1962年)という曲で、作詞は岩谷時子、作曲は宮川泰。このザ・ピーナッツ版はヒットしなかったが、岩谷が歌詞を書き替え、園まりが歌ったところ70万枚を超える大ヒットになった。
それから25年後の1991年、細野晴臣・忌野清志郎・坂本冬美の3人がジャンルを越えてHIS(ヒズ)という異色のユニットを結成。坂本のボーカルでこの曲をカバーした。HISは3人の頭文字を取ったもの。細野と清志郎は学生服、坂本はセーラー服がユニフォーム。当時3人はその格好でよく歌番組に出ていたのでご記憶の方も多いだろう。
ほんのり艶のある園まりの歌声も大好きだが、坂本のカバーは絶品!当時の坂本はデビュー5年目の24歳。「能登はいらんかいね」(1990年)、「火の国の女」(1991年)を立て続けにヒットさせ、歌手として脂が乗りきった時期だった。初期は男歌も歌っていたけれど、この曲を歌う坂本は気品があって、キュートでかつ色っぽい。こういう声を本当のセクシーボイスと言うのだ。のちに「夜桜お七」(1994年)、「また君に恋してる」(2009年)、「ブッダのように私は死んだ」(2020年 / 桑田佳祐作)で見せたボーカリストとしての幅の広さはこのときからすでに発揮されていたように思う。
実は私、坂本と同じ1967年の早生まれなので、同い年の彼女が今も現役で歌い続けているのは大いに励みになっている。還暦を迎えたらぜひ、赤いセーラー服を着て、細野とAI清志郎をバックに「逢いたくて逢いたくて」を歌ってほしいものだ。
山本リンダ圧巻の女王様ぶり
じんじんさせて / 山本リンダ(1972年)
セクシーさが “どうにもとまらない” 曲といえば、山本リンダ一択だろう。1966年、アイドル歌手としてデビュー曲「こまっちゃうナ」をヒットさせたリンダは、その後大きなヒットに恵まれず、キャニオンレコードに移籍。のちにピンク・レディーを手掛ける阿久悠、都倉俊一コンビによってセクシー系歌手に “魔改造” され、1972年6月、ヘソ出しルックで歌った「どうにもとまらない」が大ヒット。みごと復活を遂げた。
1973年2月リリースの「狙いうち」で第2次リンダブームは頂点に達するが、個人的に最もセクシーさを感じる曲はその1曲前のシングル、1972年11月発売の「じんじんさせて」である。中華風のイントロから始まり、疾走感あふれるビートに乗せて「♪一人二人 恋の相手は星の数 誰も彼も花をかかえて扉(と)を叩く」って、どんだけだよ!すでにこの時点で“超濃厚” な阿久悠節だし、都倉節だ。
だが、こんなあり得ない世界の主人公になりきってしまえるリンダの没入ぶりもまた凄まじい。特に「♪だめだめ女を口説くのは どこにもあるよな手じゃ駄目よ 心がじんじん しびれてみたい」… この部分の “女王様ぶり” は圧巻だ。そして2番の締めはこれである。
「♪前に膝をついて この手にくちづけて 大の男 涙流してすがるけど それじゃまだ燃えないわ あきらめて」… ここまで来ると完全に “女帝” であり、何ならこの女性は手にムチでも握っていそうだ。だがその一方で、じんじんさせてくれる男を心待ちにしているところ、そこは王子の出現を待つお姫様風でもある。強さと可愛らしさが同居しているところ、そこがリンダの “どうにもとまらない” 魅力であり、セクシーたる所以だ。
すべてを脱ぎ捨てて心を裸にした夏木マリ
裸足の女王 / 夏木マリ(1973年)
夏木マリのセクシーソングというと、本名の “中島淳子” から芸名の “夏木マリ” に改名してリリースした第1弾「絹の靴下」を挙げる方が多いだろう。「♪もういや 絹の靴下は 私を駄目にする ああ抱いて 獣(けもの)のように 裸の私に火をつけて」と妖艶なフィンガーアクションで歌うあの曲も阿久悠作品だ(作曲は川口真)。
だが私は、その次にリリースした改名後第2弾「裸足の女王」を強く推す。これも阿久・川口コンビの作品だ。まずジャケットを観てほしい。パッと見、全裸に見えるこのジャケット、よく見ると肝心な部分は何も写っていない。実際は何も脱いでいないのに裸に見えるのは、間違いなくタイトルのせいだ。そう、“裸足の女王” が “裸の女王” を連想させ、脳内をミスリードするのである。このジャケットを考えたアートディレクターは天才だと思う。
曲も最高だ。前作「絹の靴下」ではまだギリギリ理性を保っていた主人公は、この曲では冒頭から “あちらの世界” に行ってしまっている。「♪ああ ああ ぬぎすてて 裸足で踊るわ」「♪私は野性の女豹 裸足の女王」って、ここも裸足=裸に聞こえるし、マリさんは心の中では全裸になったつもりで歌っている(はずだ)。
「♪ああ ああ ぜいたくなドレスは邪魔だわ 肌をつつむものは 少しでいいものよ」という挑発的な歌詞。「♪あなたも裸足で来てほしいわ」は、ここも真意は裸足=裸で、要は “アダムとイブに戻りましょう” というお誘いである。こういう世界観を歌で体現するためには、やはり心を裸にしなければならず、阿久悠は若き日のマリさんに “君にその覚悟はあるのか?” と問うたのだ。いまもマリさんが凜とした美しさを失わず、第一線で活動を続けていられるのは、20代のときにこの曲にめぐり逢い、すべてを脱ぎ捨てて心を裸にしたからだと私は思う。
ーー ということで、5曲選んでみたが、男性版も機会があったら選んでみたい。ただ、夏の時期に選ぶと暑苦しくて倒れそうなので、冬に依頼してください(笑)