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中高年が抱える「性の悩み」。知っておきたい受診のサインと今日からできるセルフケア【医師解説】

シニアカレンダー

性に関する悩みを「年のせいだから仕方ない」と諦めていませんか? たしかに年齢を重ねると、性欲が低下したり性交痛が生じたり性生活を営む上でさまざまなトラブルが出現するものです。しかし、これらの悩みは自然な体の変化であると同時に、適切なケアや治療によって改善できる症状でもあります。この記事では、シニア世代が抱える“性の悩み”に言及。中高年に起こりやすい性的トラブルや医療機関を受診すべきタイミングなどについて、ペアライフクリニック横浜院の百束全人(ひゃくそくまと)院長にお話を伺いました。

教えてくれたのは…

監修/百束全人先生(ペアライフクリニック横浜院 院長)
ペアライフクリニック横浜院 院長。「性感染症(性病)で悩む方を減らす」を理念に掲げ、プライバシーや匿名性に配慮し、受診しやすいクリニックを追求している。性感染症(性病)に対して正しく理解し、予防・早期発見・早期治療ができるよう努めている。

中高年が直面しがちな性のトラブルとは?

まずは、中高年が直面しがちな性のトラブルから見ていきましょう。

【男性に起こりやすい性トラブル】

ED(勃起不全):性行為をおこなう上で十分な勃起が得られない状態のこと。加齢や生活習慣病、精神的ストレスなどが主な原因とされる。射精障害:何らかの原因で射精できない、または射精のタイミングが正常にコントロールできない状態のこと。精液が出にくい・射精に時間がかかる・早漏・性行為の途中で中折れするなどの症状が見られる。性欲減退:性的欲求が減少すること。男性ホルモン(テストステロン)の低下や精神的ストレス、腎機能の低下などによって引き起こされる。

【女性に起こりやすい性トラブル】

性交痛:腟の粘膜が弱くなり分泌物が減少することで、性交時に痛みや出血を伴う状態。更年期以降においては、女性ホルモン(エストロゲン)の低下が主な原因とされる。腟の乾燥感:腟粘膜が薄くなりうるおいが減ることで、腟が委縮・乾燥した状態。かさつきや違和感、かゆみなどをもたらすほか、感度の低下にもつながる。排尿トラブル:頻尿や尿漏れなど、排出機能がうまくコントロールできない状態。膀胱や直腸などを支える骨盤底筋群の緩み、ホルモンバランスの変化などが影響することがある。

中高年にはこれらのさまざまな問題が出現する可能性がありますが、こうした性的トラブルは決して珍しいことではなく、誰にでも起こりうる自然な体の変化の1つです。自己判断で放置したり我慢したりするのではなく、必要なときは専門医へ相談することがより快適な性生活を送るためのカギとなります。

このサインが出たら要注意! 医療機関への受診を検討しよう

性に関する不調は、つい「年齢のせい」で片づけてしまいがちな問題です。しかし、中には重大な病気のサインが隠れていることもあります。以下のような症状が見られる場合は、早めの受診を検討しましょう。

【男性が受診を検討すべきサイン】

勃起がほとんど得られず性生活が成立しない性的興味や欲求が著しく低下した朝の自然な勃起が減少、または消失した夜間頻尿がひどく、睡眠障害まで引き起こしている状態男性器の違和感や不快感、痛みが継続する血尿が出ることがある

【女性が受診を検討すべきサイン】

生活に支障をきたすほどの強い性交痛や腟の乾燥がある不正出血がある頻尿や尿漏れなどの排尿トラブルが進行し、外出が億劫になってきた更年期症状(のぼせ・ほてり・不安感など)と性の悩みが重なるおりものが増えてきた

特に男性の場合、朝の自然な勃起(朝勃ち)は健康状態を表す1つのバロメーターとも言えます。通常、人は寝ているときにノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返していますが、睡眠中は副交感神経の働きが活発で、記憶の定着や体の基本的な機能調整などがおこなわれている状態です。このタイミングで起こるのが勃起。脳から神経を通じて信号が送られ、陰茎周辺の血流が促進されることで生じます。

このように、朝勃ちはレム睡眠下で引き起こされる生理現象であり、勃起がないということは血管や神経系に異常が起きている可能性が考えられます。動脈硬化をはじめとした生活習慣病やテストステロンの低下に伴う男性更年期障害、睡眠障害、過度のストレスなど、体に何らかの異常が起きているサインかもしれないので、日ごろから注意してみてください。

性生活を楽しむためには、性別や年齢に関係なく健康であることが大前提! 「なんだか変だな……」と思ったときは、男性の場合は泌尿器科やメンズヘルス外来、女性の場合は婦人科や更年期外来に相談し、自分の健康を守る行動を心がけましょう。

性のトラブルを改善するための治療法・セルフケア

性に関するトラブルは、病院での治療とセルフケアで改善できる可能性があります。ここでは、医療機関で受けられる代表的な治療法と、日常的に取り入れたいセルフケアについて紹介しましょう。

医療機関で受けられる治療の一例

男性が抱える性のトラブルには、ED治療薬の処方やテストステロン補充療法が適応となることがあります。EDの主な原因は血管や神経の障害、テストステロン(男性ホルモン)の低下、精神的なストレスなど。血管や神経に起因する器質性EDの場合は、まず原因となっている病気を治療することが基本ですが、それと並行して「PDE5阻害薬(血管を拡張し血流を改善する薬)」と呼ばれる内服薬が処方されることがあります。

また、テストステロン補充療法は、テストステロンの低下がEDや性欲減退の原因として考えられる場合に考慮される治療法。塗り薬や注射などでテストステロンを補充し、性欲の改善や勃起機能の回復を目指します。

一方、女性の場合は、ホルモン補充療法(HRT)が更年期障害における治療の第一選択肢。年齢とともに減少するエストロゲンを内服薬や貼り薬、塗り薬などで補い、更年期症状の緩和や改善を目指します。これにより、のぼせやほてり、イライラといった症状の改善が見込めるほか、腟粘膜の潤いが保たれることで性交痛や乾燥感が和らぎます。

そのほか、夫婦で受けられる治療法として「認知行動療法」や「カップルカウンセリング」が検討されることも。認知行動療法は、起きている問題に対して考え方や行動を変化させることで気持ちをラクにする心理療法です。性生活に対しての不安やプレッシャーを軽減し、性的満足度を高める効果が期待されます。

カップルカウンセリングは、性生活の悩みをパートナーと共有し、改善策を見つけるためのカウンセリング。カウンセラー指導のもとで対話を深め、すれ違いやコミュニケーション不足を解消することで、2人が抱える問題を解決へと導きます。

治療と並行して取り入れたいセルフケア

性のトラブルを解消するには、治療と並行して以下のようなセルフケアを取り入れることも効果的です。

骨盤底筋トレーニング:膀胱や腟、直腸などを支える骨盤筋肉群を鍛えることで、尿漏れの予防や性機能の向上などにつなげる。開脚ストレッチ:血流やリンパの流れを改善し、疲れにくく腰や膝が痛くなりにくい状態に導く。保湿ジェル・潤滑ゼリーの活用:腟の潤いを補い、乾燥や痛みなどの不快感を和らげる。メンタルヘルスケア:瞑想などのリラックスタイムを設けることでストレスが軽減し、自律神経が整う効果が期待できる。

また、パートナーとのコミュニケーションを深めておくことも重要なセルフケアの1つ。会話やスキンシップを通じて日ごろから信頼関係を深めておくことが、2人の関係性をより良い方向へと導くことにつながります。

パートナーとの関係を深めるコミュニケーション術

性の悩みを解消する上でパートナーとのコミュニケーションが大切なのはわかっていても、実際には言葉にしにくかったり切り出すタイミングに迷ったりすることもあるでしょう。そんなときに心がけたいのは、「話し方」や「タイミング」を少し工夫すること。以下のようなポイントを取り入れることで、性についてパートナーとオープンに話し合える関係性を築けるかもしれません。

リラックスできる時間と場所を選ぶ雑談の延長でさらりと切り出すお互いに「健康を保つための話題」として捉える相手の気持ちを配慮し、非難せず話を最後まで聞く「責める」「我慢する」ではなく、2人で問題を共有・解決する姿勢を忘れないテレビ番組やメディア記事をきっかけに自然に会話を始めるピロートークとして話し合う。

性の話題はデリケートですが、話すことで気持ちが軽くなったり、パートナー同士での関係が深まるきっかけにもできます。とはいえ無理は禁物。焦らず、自分にできる範囲で取り入れてみてください。

まとめ

中高年になると、誰もが加齢による体の変化や、それに伴う性の悩みに直面する可能性があります。デリケートな問題だけに、誰にも相談できず我慢してしまう方もいるでしょう。しかし、こうしたトラブルは医療的アプローチや適切なセルフケアによって改善が見込めます。年齢を重ねても、自分らしく、そしてパートナーと一緒に充実した性生活を送れるよう、今日からできることを始めていきましょう。

※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。

取材・文/生垣育美
産科・婦人科領域の医療現場において医師の事務作業を専門にサポートする産婦人科ドクターズクラークとしての勤務を経て、第1子出産をきっかけにWebライターへ転身。夫・息子と3人暮らし。やんちゃな息子に振り回されながら、なんとか仕事と家庭を両立させる日々……。

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