土砂災害を知る!釜石・甲子中、工事現場見学 「地域の守り手に」岩手県沿岸振興局、期待込め
釜石市甲子町の甲子中(山蔭深思校長、生徒112人)の2年生39人は6日、地元で進められている砂防工事現場を見学し、防災対策や建設業へ理解を深めた。土砂災害に関する出前授業もあり、座学と模型実験を行って有事に身を守る意識を高めた。
建設業の担い手確保などを狙いに、岩手県沿岸広域振興局(土木部)が主催。沿岸振興局が手掛ける「大松砂防堰堤(えんてい)改築工事」(同町大松地内)の現場見学では、土木部の職員や工事を担う山長建設(大只越町)、建設機械レンタル会社イブキ産業(本社・宮古市)の社員らが講師を務め、「土石流などの災害から地域住民の命や財産を守るため」に進める工事の概要を説明した。
もともとあった砂防堰堤は1961(昭和36)年に築造された石積みのもので、60年以上経ち老朽化していた。水漏れや土砂の堆積などにより崩壊し災害につながる恐れがあることから、2023年3月から補強する工事に着手。鋼製の型枠を設置し元の堰堤との間にコンクリートを流し込んで固める作業は数日前に終え、堤長約93メートル、堤高11.5メートルの堰堤本体が完成した。工期は今年8月末までで、今後は原状復旧などを進める。
生徒は、工事の計画づくりや進捗(しんちょく)確認などに使うドローンや土砂を掘削するのに使うバックホーの操作に挑戦。安全教育として仮想現実(VR)で落下物の事故に遭う体験、高所作業車にも試乗した。講師らは「建設現場では未来の形という最新技術をうまく利用している」とアピール。その形を生徒たちがつないで「建設業の未来をつくってほしい」と思いを伝えていた。
座学は学校で行い、土木部の職員が土砂災害の発生状況や土石流、地滑り、崖崩れの特徴を写真や映像で解説した。模型実験で生徒たちは、堰堤などの砂防施設が上流から流れる土砂を受け止め、勢いを弱める様子を見て、その役割を認識。安心感を得た生徒らに、講師は「必ず砂防堰堤があるわけではなく、あったとしても災害は想定を上回ることもある。大丈夫と思わず、逃げることを考えてほしい」と強調した。
建設業についての説明も。座学の講師を務めた沿岸振興局河川港湾課技師の三浦賢太郎さん(26)は大槌町の出身で、小学6年生の時に経験した東日本大震災とそこからの復旧、復興の歩みを見つめ建設業や土木関係の仕事に興味を持った。「地元のために役立てる仕事をと選んだ道。自分たちが計画した事業が形になった時の喜びは大きい。中学生に建設業に触れてもらってうれしいし、きっかけは何でもいいので興味を持ってほしい」と望んだ。
建設現場で働く姿を想像しながら、さまざまな体験活動に取り組んだと話すのは、小林悠人さん。「重機の操作は難しいけど、楽しかった。いろいろ覚えられるのもすごい。(建設業は)楽しさだけじゃない、どこかで事故が起きるかもしれない厳しさもあると感じた。知らなかった職業を知る機会になったのは良かった」と視野を広げた。
佐々木ひよりさんは「災害があったとしても生きていられるのは、こうした構造物をつくる活動のおかげで、感謝しながら生活したい。地域のことを考えて仕事をしていることが分かった。災害への備えも大事だと改めて感じた。防災マップを確認したり、家族が別々の場所にいた時の避難とか対策を考えてみる」とうなずいた。
中高生ら若い世代に建設業界の魅力を伝えようと実施する出前授業や現場見学会は本年度、計6回予定する。沿岸振興局調整課の本間健一郎課長(技術特命参事)は「楽しみながら体験することで、一人でも多く興味を持ってもらい、将来の選択肢に考えてほしい。地域、地元の守り手になってもらえたら」と期待する。