【農口尚彦研究所】農口尚彦研究所‐石川県 ときを超えて受け継がれる想いと深まる味わい
地域で愛される酒蔵の銘酒に着目し、酒蔵からの生の声と和酒情報を読者の皆様にお届けする連載企画。今回は、石川県小松市(こまつし)の農口尚彦研究所(のぐちなおひこけんきゅうしょ)を特集します。
観音下の美しい自然が醸す酒
―酒蔵の歴史や地域について教えて下さい。
農口尚彦研究所がある小松市観音下町(かながそまち)は、美しい自然が残る山里です。その名の由来でもある観音山(かなんぼやま)の山頂付近には観音様がまつられ、その目線の先に研究所があります。水の化身とされる観音様に見守られて、こんこんと湧き出る霊峰・白山の伏流水を仕込み水に、酒造りの神様とも呼ばれる農口尚彦の酒が生まれます。
農口尚彦は、昭和7年(1932年)に現在の石川県・能登町に生まれ、16歳から酒造り一筋に生きてきた伝説の杜氏。28歳の若さで杜氏になり、能登杜氏四天王の一人と賞されます。失われかけた山廃仕込み復活の立役者であり、「おいしい酒を造りたい、飲む人に喜んでもらいたい」という想いで、70年以上酒を造り続けてきました。その精神と腕に惚れ込んだ蔵元が「農口尚彦の生き様を未来に残したい」と立ち上げたのが現在の農口尚彦研究所です。
―代表銘柄は?
「 純米大吟醸 無濾過原酒 」
黄桃やパイナップルのトロピカルなニュアンスにドライマンゴーのアロマ。凝縮感のある旨味が心地よく、上品な苦味と共に骨格のしっかりしたバランス。熟成によるわずかなキャラメルのような風味が、果実感や旨味と共に複雑に呼応し、余韻長く楽しめるお酒です。
お薦めの飲み方:冷、常温
「観音下 無濾過原酒」
穏やかなアロマで、バナナブレッドやドライいちじくなどのニュアンスを持ちます。
とても優しい口当たりで、それぞれの味わいがよく溶け込んでおり、旨味と共にわずかに黒糖やスパイシーな風味がボリューム感のある余韻と共に残る辛口のお酒です。
お薦めの飲み方:冷、常温、燗
次世代へ受け継ぐ技術と酒造りに懸けるこだわり
―酒造りで心がけていることは?
酒造りに必要な米・酵母・水・気候。農口尚彦により選ばれた若き蔵人たちは、農口尚彦と共に常に変化するこれらに寄り添い、多岐にわたる工程を丁寧に行います。新しい技術は積極的に導入してきましたが、テクノロジーを取り入れるところと、人が手をかけるべきところは明確に線引きする。それが農口尚彦の流儀。完全手造りの時代から数値を分析し続け、近年は最新技術を用いたデータも取り入れながらおいしいお酒を醸していきますが、人の手が必要なところにはとことん目をかけ、妥協することはありません。
技術の伝承はもちろんのこと、農口尚彦研究所が重要視しているのは、農口氏の生き様を次世代に伝えること。愛情を持って醸し、自分を犠牲にしてでもお酒と向き合う。そうしたうえで飲む人が本当にうまいと思うお酒を造ること。これこそが、農口尚彦研究所がめざすお酒です。
―酒蔵や地域、観光などでオススメポイントや盛り上がっている話題を教えて下さい。
農口尚彦研究所の東には、国会議事堂にも使用されている銘石が採石された「観音山(かなんぼさん)」があります。この「観音山(かなんぼさん)」の山頂までの道中は階段が続いており、そこには三十三体の観音菩薩像が安置されており、山頂の祠には三百年前から安置されている木彫りの観音菩薩像が佇んでいます。
数百年もの間、この土地の人々に慈悲を与え続ける観音菩薩像の目先に、肥沃な圃場が広がる観音下(かながそ)があります。
また酒蔵併設のテイスティングルーム「杜庵」があり、農口尚彦研究所のお酒に合わせたおつまみとともにお楽しみいただけます。
今回ご紹介した酒蔵について
【石川県】
株式会社農口尚彦研究所
石川県小松市観音下町ワ1番地1
https://noguchi-naohiko.co.jp/