井上尚弥の対戦相手キム・イェジョンの対日本人全戦績、油断できない韓国の“日本人キラー”
サム・グッドマンのドタキャンで急遽変更
プロボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(31=大橋)の次期防衛戦(1月24日・有明アリーナ)の相手が、IBF・WBO同級1位サム・グッドマン(26=オーストラリア)からWBO同級11位キム・イェジョン(32=韓国)に急遽、変更された。
当初、昨年12月24日に対戦予定だったグッドマンがスパーリング中に左まぶたをカットしたため、試合の10日前に1月24日への延期が決定。このたびグッドマンが再び負傷して試合キャンセルを申し出てきたため、大橋秀行会長はリザーブとして同日の第1試合に出場を予定していたキム・イェジョンが代役として井上の相手を務めることで関係各所に了承を取り付けた。
まずは興行自体が中止にならず、セミファイナルの東洋太平洋&WBOアジアパシフィックウエルター級王者・佐々木尽(八王子中屋)vs坂井祥紀(横浜光)などのアンダーカードも無事に行われることに、大橋会長ら関係者の努力に敬意を表したい。
昨年末は井上の試合が延期され、大晦日に行われる予定だった井岡一翔(志成)の試合もWBAスーパーフライ級王者フェルナンド・マルティネス(アルゼンチン)がインフルエンザに感染したため中止。ボクシングに飢えたファンが1月24日を心待ちにしていることは想像に難くない。
井上も二転三転した末、直前の対戦相手変更となり、心理面やコンディション調整への影響が心配ではあるが、予定通りリングに上がれることは歓迎材料だろう。
日本人相手に7戦7勝5KO
急遽、代役に決まったキム・イェジョンはWBO11位、他3団体ではノーランクと世界的には無名に近い存在だが、決して弱い相手ではない。
2012年2月にプロデビュー以来25戦して21勝(13KO)2敗2分け。しかも、そのうち7戦は以下の通り、日本人相手に全て勝っているのだ。
4戦目 2012年7月 三浦崇史(川崎新田)2回TKO勝ち
6戦目 2013年4月 冨田正俊(川島)4回判定勝ち
11戦目 2014年4月 松本章宏(カシミ)9回TKO勝ち(WBCユーススーパーバンタム級王座獲得)
13戦目 2014年11月 高林良幸(RK蒲田)7回TKO勝ち
15戦目 2015年7月 宇津見義広(ワタナベ)7回TKO勝ち(IBFアジアスーパーバンタム級王座防衛)
18戦目 2016年11月 ストロング小林佑樹(六島)12回判定勝ち(IBFアジアスーパーバンタム級王座防衛)
21戦目 2019年5月 小坂遼(真正)9回TKO勝ち(WBAアジアスーパーバンタム級王座獲得)
直近では2024年5月にラケシュ・ロハブ(インド)に5回TKO勝ちでWBOオリエンタルスーパーバンタム級王座を獲得している。
韓国18年ぶりの世界王者へビッグチャンス到来
身長163センチのオーソドックスなボクサーファイターだが、スイッチすることも多いテクニシャン。映像を見る限り、スピードはないものの防御勘が良く、かつての韓国に多かったゴリゴリのファイターではない。
韓国は1980年代から90年代にかけて数多くの世界王者を輩出。井上が所属する大橋ジムの大橋秀行会長も何度もコリアンファイターと対戦し、死闘を繰り広げた。
大橋会長が現役時代に2度敗れ、WBCライトフライ級王座を15度防衛した張正九氏とは現在も親交が深く、大橋会長のSNSにたびたびツーショット写真が投稿されている。そんな縁もあって、大橋ジムは韓国でも興行を打つなど、韓国ボクシング界ともパイプがある。
ただ、韓国人ボクシング界は長く低迷しており、2007年に池仁珍がWBCフェザー級王座を剥奪されて以来、世界王者が誕生していない。井上も韓国人選手とは初めての対戦だ。18年ぶりの世界王者誕生へビッグチャンスが巡ってきたキム・イェジョンは、国民の期待を背負っていると言っても過言ではないだろう。
現在はオーストラリアに滞在し、2月24日に東京・有明アリーナで那須川天心(帝拳)と対戦するジェイソン・モロニー(オーストラリア)のスパーリングパートナーとして調整中。グッドマンが迫力不足のためイマイチ盛り上がりに欠けた今回の防衛戦だが、俄然、注目度が高まってきた。
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記事:SPAIA編集部