強い不安を抱えがちで、他人の視線も気になる性格…とても生きにくて困っています。【お悩み#83】
はーいみなさん、ごきげんよう!満島てる子です。
みなさんは、自分の生き方について定期的に色々調べたりするタイプ?
いや何が言いたいかというとね、あたしは割とそっち寄りで。
例えば、他人の感情をはじめとしてさまざまな外的情報を敏感にキャッチしすぎてしまう「HSP」という単語に「なるほど〜、自分も思い当たる部分があるなぁ」と共感したり。
性格累計を16パターンに分ける「MBTI」について、友人から教えてもらい「自分も調べてみようかなぁ」とテストを受けてみたり(ちなみにINFJ-Tなんだとか。とはいえいまだにいろんな意味でこれ、半信半疑なんだけどね)。
それだけでなく、前も書いたことがあるけれど。
人生が上手くいかなくてものすごく苦しんでいたときに、心療内科を訪れて「発達障害の疑いがある」と医者から判断されてね。
⇒【過去コラム参照】
それまでの他者との予想外の軋轢(あつれき)たちを思い返して、「ハッ!」と気づきを得たりしたの。
診断名も含めて、様々な生き方に関する「ラベル」が飛び交う中で(その功罪、いずれにしても大きいわよねぇ)、わたしたちはこの社会を居場所としているわけですが。
そのひとつのラベルとともに過ごしている方から、今回はお手紙をいただきました。ご紹介したいと思います。
読者のお悩み: 強い不安を抱えがちで、他人の視線も気になる性格…とても生きにくて困っています。
おお、非常に率直で、かつ真剣なお手紙。
けろりんさん、まずはこのお悩み相談ルームに投稿を寄せてくれて、どうもありがとう!
そして、打ち明けづらいであろうご自身の障害について、ここで語ってくださったこと。
あたしは相談に乗る者としての責任を感じると同時に、その自己開示にあたってけろりんさんの要したであろう勇気を、「ありがとう」と讃えたい気持ちで今いっぱいになっています。
あたしも思い当たる節があって…
あたしも発達障害というラベルと付き合っていくことになった人間として、あなたの語ってくれている「とても生きにくい」状況には、感じるタイミングや出会う条件の差こそあれど、思い当たる節があるの。
たとえば、不安症状について。
これ、大変だよね。あたしも自身の発達障害の傾向を知ったのは、クリニックで「全般性不安障害」(日常生活のいろんなことに不安や心配を過度に抱いてしまう症状があること)の診断を受けた際のこと。
その頃はすごく顕著にメンタルの揺れがあって、塩焼きそばを食べただけでいろんな悲しみが止まらなくなって泣いてしまう、なんてこともあったりしたわ(なぜか塩焼きそばを食べると必ずだったの。不思議……)。
他にも、おそらく別の人にとっては些細なことが、どうしてもあたしにとっては許せなかったり、辛く受け止めてしまったりで。
感情的な反応って、自分自身でも思うようにコントロールできるものではないから、本当にしんどかったのよねぇ。
「近くの笑い声や視線すら、自分に向けられてるのではないかと思ってしま」うことも、すごく身に覚えがあるの。
以前、社交不安障害について書いたコラムの中に、一部詳しく書いたけれど。
⇒【過去コラム参照】
セクシャリティにも関連する個人的な劣等感から、他人の目線を忌避する癖がそもそもあたしにはあるんだ。しかもそれにとどまらず、なんなら相まって。
自分の発達特性(特定のものへのこだわりや、固定の所作の繰り返しなどについて、自覚があったりするのよね)が見えやすいものになっている気がしたときに、それが「周囲の人間の目に変に映っていないか」を、今でもどこかしっかり心配しちゃうんだよね。
「大丈夫かな、やらかしていないかな」「おかしなこと、笑われるようなこと、知らない間にまたやっちゃってんじゃないかな」って、そう考えることがほぼ癖になっちゃってるのよ。
想像するに、全く同じとは言えないだろうけれど。
けろりんさんもきっと、こうしたあたしが経験してきた諸々と、似たような心理状況にあったりするんじゃないかしら。
そりゃ「ポジティブになりたいのに、なかなかなれ」なくても仕方がないよね。
だって、自分としてはただ生きているだけなのにさ。
その生き方がときに足かせになっちゃうかもしれないって、そんなネガティブな可能性と常に睨めっこせざるをえないとなれば、明るい方に目線を向けるなんてなかなかできなくなってしまうもの。辛いわよねぇ。
お手紙からも滲み出てはいるけれど、いろいろ苦労したんじゃないかしら。
けろりんさんの現在のあり方を、自分の種々の経験から慮りつつ。
ここまで書いてきたような発達特性に基づく悩みは、ようやく「見える」化されてきたところがあるものの、まだまだ広く知られているわけではないんだよなぁと、当事者性を抱いている者としてはこの社会の現状を歯痒く思ったりしていたのでした。
あたしなりのAnswer
さて、けろりんさん。
あたし、どれぐらいエンパワメントに資するものをお届けできるかはわからないけれど、あなたの求める「これからの力になるような言葉」を、自分なりにここからつづってみることにするわね。
そうそう、まずこれは伝えておかなきゃ。
以前も類似のお悩みに回答したときにも、あえてはっきり書いたことと同じ内容なんだけれど。
もしけろりんさんが自身の抱える発達特性について、現在日常を送るのも大変なレベルで耐え難い苦しみを抱いているのなら、どうかお医者さんを頼ることをいとわないでほしいの(すでに主治医がいるのなら、無理ない範囲でいいから、通院というケアを定期的に試みてほしい)。
薬の処方や、カウンセリングをはじめとする様々な療法が確立されているから、けろりんさんにとって小さくない助けとなるはず。
最近は自分の脳神経的な発達状況について、SNSなどに溢れる情報をもとに個人判断で「自分は〇〇だから」とか「こうすれば大丈夫」とか考えてしまう人もいますが。
専門家の声を聞くことで、安心で安全な情報が手に入るよってことは、最初にお話しておこうと思いました。
その上で、なんだけどね。
けろりんさん、あたし率直に思うんだけどさ。
うちら、無理して自分からポジティブになる必要、ないんじゃないかしら?
……いやごめんごめん、「ポジティブになりたい」って相談だったのに、元も子もない話をしてしまっているようだけれど。
でもね、あたしこれ、結構本気で言ってるの。
だってね。
そもそもあたしたちさ、普段から生きるためにいっぱいエネルギーを使っているじゃない。
周囲の目線や反応がどうしても気になるし、それが引き金になっていろんな不安や心配を抱えちゃったりもする。
そんな自分の自然な「こころのうごき」って、おいそれと変えられるものじゃない。強制的に変えていいものでもない。
だとすれば、一般的に言われている「ポジティブ」を目指そうとするのって、あたしたちにとっては、それこそしんどいものになるんじゃないかなぁ。
そう、自分たちは自分たち。周りと同じ基準で生きなくていいんです。
なんなら、そんなおのれ自身のあり方に素直になることこそ、メンタルの状況や生き方を整えるための第一歩になってくれるよなって、そうあたしは思っているのよね。
「まず、これでいいんだ」と自己受容することができれば、周囲を見る目も、自分の生きづらさについての考え方も変化していきます。
「あたしはどうしてこうなんだろう。どうしてこんなに生きづらいんだろう。」ではなく、「そうか。これって誰かが悪いとかではなくて、今の社会のかたちや常識が、自分も含めたいろんな人の"生きづらさ"を作っちゃっているのかも」と、目線をより広い方向に移すことが、その人には可能になっていきます。
けろりんさん、あなたにはぜひそんな広い視野をもって、物事を見つめてみてほしい。
そうすれば、今まで抱いてきたモヤモヤもハラっと解けるタイミング、どこかで来るんじゃないかしら。
少なくとも、生きづらさを自分だけに閉じ込めないよう意識してみること。それだけでも、ある程度の重荷を下ろすことができるはず。
……少し小難しい言い方になっちゃったかな。
でもけろりんさん、ぜひここにあたしが書いたこと、できる範囲で構わないので自分なりに実践してみてください。
それがきっと、あなたの生き方を彩豊かなものにしてくれるはずだから。
周りと異なる特性とともに生きていくことは、簡単なことではありません。
でも大丈夫。様々なサポートはもちろんのこと、開かれた目線を獲得するという明るい道が、あたしたちにはきちんと開かれています。
けろりんさんと同じく、ニューロマイノリティの名の下に生きている自覚のある人間として。
これからもあなたのことを、やたらと試され続ける北の大地から、あたしもひとりの仲間という立場でずっと応援していますからね!
ま・と・め♡
というわけで、今回は自分も当事者性を抱える話題について、お手紙をもとに向き合ってみました。
いろんなラベルが溢れる世の中だけれど。
そのラベルに対して所与のものとされ、あたかも「これが自然で当然」って感じで振る舞う"意味付け"というか、凝り固まった常識(ときに偏見)みたいなものから自由になっていきたいなぁって、やっぱり思うんだよね。
これからも、そんな自由を開くことのできるような文章を書き続けていければなぁと、そんな風に思います。
ではではみなさん、また次回。
Sitakkeね〜!
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文:満島てる子
イラスト制作:VES
編集:Sitakke編集部 ナベ子
編集後記:編集担当ナベ子より、愛を込めて…
本コラムの立ち上げから約4年間、編集を担当してまいりました。このたび異動に伴い、2025年4月からは新しい担当者へと担当を引き継がせていただくことになりました。
記事を日々読んでくれた読者の皆さま、勇気を出してお悩みを打ち明けてくださった皆さま、そして、読者と共に頭を抱えながら、愛ある言葉を紡いでくれたライターの満島てる子さん。皆様に心より感謝申し上げます。
私自身、寄せられるお悩みの一つひとつに深く共感し、ときに心を震わせながら読んでいました。皆さまの言葉に触れるたびに、このコラムが誰かの支えになっていることを実感し、編集者としてかけがえのない時間を過ごさせていただきました。
連載80回を超えたこの長寿コラム。その一つひとつの記事が、私にとって宝物のように大切なものです。
読者の皆さまに、心からの感謝を込めて。今後とも本コラムをどうぞよろしくお願いいたします。
本当にありがとうございました! したっけ、またね~!
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満島てる子:オープンリーゲイの女装子。北海道大学文学研究科修了後、「7丁目のパウダールーム」の店長に。 2021年7月よりWEBマガジン「Sitakke」にて読者参加型のお悩み相談コラム【てる子のお悩み相談ルーム】を連載中。お悩みは随時募集しています。