神戸・花隈のバー『SAVOY hommage』流麗な技が生み出す“日本”を感じる一杯 神戸市
三宮の繁華街から少し離れた閑静な雰囲気の花隈エリアに、神戸のバー文化の中でひときわ存在感を放つ『SAVOY hommage(サヴォイ・オマージュ)』(神戸市中央区)があります。
高台から神戸の街が見下ろせる『花隈公園』のほど近くに立地しており、オーナーバーテンダーの森﨑和哉さんは、「サントリー ザ・カクテルアワード 2024」など、数々のコンクールで優勝した経歴の持ち主。
森﨑さんは、神戸のバー文化を牽引してきた伝説的なバー『サヴォイ』の創業者・小林省三さんのもとで修業を積み、2007年に独立して同店をオープン。現在はオーナーバーテンダーとして第一線で活躍する傍ら、コンクールへの参加などを通して“後進の育成”にも力を入れられています。
お店は“大人の隠れ家”を体現したようなオーセンティックバーで、艶のある深紅のカウンターテーブルが目を引きます。
初代「サヴォイ」から受け継いだカウンター上のランプや、師匠の小林さんを描いた切り絵、小林さんの奥様が好きだったというフランスのブリュットを生み出したマダム・ポメリーが描かれたポスターなど、インテリアの一つひとつに物語があるのも魅力的です。
今回は「サントリー ザ・カクテルアワード 2024」で最優秀賞を受賞した、森﨑さんのオリジナルカクテル「てふてふ(蝶々)」を作っていただきました。
上品な甘さと、大人のスモーキーさが波のように押し寄せるプレミアムウイスキー「碧Ao」を用いた「てふてふ(蝶々)」は、瑞々しいフルーツ本来の旨味を活かした、爽やかなカクテル。アルコールは20度とやや高めですが、お酒が得意ではない人も飲みやすい“のどごしの良さ”も魅力です。
「喜び」や「生まれ変わり」を意味する蝶々をモチーフに、巨峰やゆずといった和素材のフルーツが用いられた日本的な情緒の溢れるカクテルには、「海外から神戸を訪れる人にも、日本の爽やかなそよ風を感じてもらいたい」という森﨑さんの思いが込められています。
2024年当時、森﨑さんはすでにコンテストの第一線から退いていました。
しかし、1970年の「大阪万博カクテル大会」で小林さんが世界チャンピオンになったことや、兄貴分である『SAVOY KITANOZAKA』の木村義久さんが同じサントリー系列の「トロピカル・カクテル・コンクール」で優勝していたことから、「(大阪・関西万博を前に)師匠たちとゆかりのある大会が行われる。これも何かの縁だろう」と考え、出場を決めたそうです。
生で見せていただいた「シェイク」や「ステア」の動作は想像以上に優美で、繊細な指使いに吸い込まれそうでした。
ちなみにコンテスト出場の際は、体のキレを“コンテスト仕様”に仕上げるために営業時間の合間を縫って1日8時間もの練習時間を捻出していたそうです!
見ている人に簡単だと“錯覚させるほど”洗練された職人の技術は、たゆまぬ鍛錬の積み重ねによって培われるものなのだと、改めて実感。
そんな森﨑さんは“コミュニケーション”も一流。来店者の相性やその日の気分を慮りながら、合いの手を入れるタイミングなどを柔軟に変化させているそうで、「そんなことまで…」と思わず感嘆の声が漏れました。
「お客様の中には、きっとその日にあった嫌なことを忘れるために来てくださっている方も多いはず。その方に寄り添うのはもちろんのこと、もう一歩踏み込んで、明日への活力を養っていただけるようにするのが私たちの仕事です」と森﨑さん。カウンターを「舞台」ととらえ、その瞬間のゲストにとって本当においしい1杯を模索していると話します。
「ふとした会話の中からお客様の好みを察知して、通い詰めてくださる中で徐々にアレンジを加えていき、最終的に『ここの味が一番好き』と言っていただけた時、最高にやりがいを感じます」。
あくまで主役は「ゲスト」。華道や茶道にも通じる「日本の伝統的な芸術の美」と、「関西ならではの笑いを用いたコミュニケーション」で、今日も来店者の居心地の良さを追求し続けています。
都会の喧騒から解放され、ユーモラスな店主と語り合いながらいただくお酒は、きっと特別な一杯になるはずです。
場所
SAVOY hommage
(神戸市中央区下山手通5‐8-14)
営業時間
17:00~23:00(L.O.22:00)
定休日
日曜日