中国の「渡航自粛勧告」から2週間、現在の「奈良公園」で目の当たりにした意外な光景
中国外務省による、日本への渡航自粛呼びかけから約2週間が経過した。
先日 京都の観光地の様子を見に行ったところ、祇園では観光客が減っている様子が見られたものの、それ以外の場所では依然として人の多さが際立ち京都の根強い人気を実感する結果となった。
それでは、同じ関西圏の観光地である奈良公園はどうなんだろう? 現地調査に行ってみた。
・大混雑の東大寺
筆者が奈良公園に着いたのは午前11時ごろのこと。既に多くの観光客でにぎわっている様子だ。
おそらく8~9割が海外から訪れたインバウンド客だろう。欧米からと思われる人も多いのだが、それと並んで多かったのがアジア系の人々である。
筆者には普通話や広東語といった区別がつかないのだが、中国語っぽい言葉を話す人も多ければ、英語を話す人も多いように見える。東南アジアの方も多いようだ。
特に混雑していたのは東大寺 南大門の周辺だろうか。
土産物店が並ぶこの通りは、東大寺へと向かうメインストリート。世界中から訪れた観光客と鹿とが入り混じって、ちょっとした混沌が広がっている。周辺には制服姿の学生さんの姿も目立ち、修学旅行で訪れる若い世代が多いことも感じられた。
──このシーンだけを見ると「奈良市は観光客でごった返してキャパオーバー寸前」という風に見えるかもしれないが、決してそんなことはない。なんといったって奈良公園の敷地は広大なのだ。
ちょびっと中心地から外れるだけでご覧の通り。
鹿しか見当たらねぇ。
つまり、観光客は多いけど一部エリアのみ。場所さえ選べばのんびり散歩を楽しんだり、鹿を眺めたり、ベンチでお茶をすすったりすることだって余裕で可能。至って平和な光景が広がっていたのであった。
・観光客は減ったのか?
だが、結論付けるにはまだ早い。結局のところ観光客は減ったの? 増えたの??
気になった筆者は、近くにいた駐車場の警備員の方に話を聞いてみた。すると、こんな答えが返ってきた。
「外国人観光客は多いけどね、中国人観光客の数は格段に減っていますよ。観光バスも減っとるね。今回の渡航自粛も影響あるだろうけど、中国も景気が悪くなってきたらしいからねぇ」
筆者:中国語話者の方もまだまだ多いように見えます
「台湾人の方もたくさんいますから。東アジア人と言えども、みんなが中国人とは限らないんですよ」
続いてお話を聞いてみたのは、鹿せんべいを販売しているお店の方。
「今はまだツアーのキャンセル料がかかるとかで、旅行を継続する中国人の方が多いみたいですよ。でもね、元々この辺りは、最近は韓国人の方が多かったんですよ。だからうちは今のところ、あんまり影響はないですね」
──なるほど。中国からの観光客は減っているが、全体的に見ると大きな影響は受けていないのかもしれない。
そう言われてみれば、すれ違う人から韓国語っぽい響きの言葉が聞こえてくる気がする。韓国と言えば日本人に人気な旅行先だけど、逆に韓国人にとっても日本は人気な旅行先なんだね。
そして、このあと歩いて20分ほどの場所にある『餅飯殿(もちいどの)センター街』という商店街で、上記を裏付ける情報を発見した。
インバウンド客の皆さんがどこから来たのか、アンケートをとっている世界地図を見ていると……
韓国からのお客さんってこんなにたくさんいるんだね!
なお、商店街のスタッフの方によると、この地図は大体1~2ヵ月に1回で新しいものに交換するのだそう。
・元気な鹿にご注意!
人が一番多い場所でも、広い歩道と敷地面積のおかげでほとんど窮屈さが感じられなかった奈良公園。しかし、それでも通行が滞ったり、突然人だかりができたりして歩きにくくなることがあった。
そんな時、人ごみの真ん中に必ずと言ってよいほど鎮座していたのが……
そう、鹿である。
特にインバウンド客の皆さんは、鹿せんべいをあげたり しゃがみ込んで眺めたり 写真を撮ったりと、かなり熱心に鹿と戯れている模様だ。
確かに、奈良公園の鹿は人慣れしていて 日本人にとっても物珍しいよね。それに、海外の鹿ってもっと大きくて凶暴なイメージだし。
ちなみに筆者が見る限りでは、鹿を蹴ったり叩いたりといった乱暴をしている観光客は一人も見かけなかった。平和そうでよかったよ!
──そんなワケで、意外にも日中関係のトラブルの影響が少なそうに見えた奈良公園周辺。人は多かったけれど、圧倒的なキャパシティのおかげで快適に観光を楽しむことができた。
最後にひとつ、皆さんにお伝えしておくならば……奈良公園に行く際は必ずウエットティッシュを持って行くことをオススメしたい。
奈良公園の鹿たちは、鹿せんべい屋においてある鹿せんべいにはまったく見向きもしない。
ところが、鹿せんべいが観光客の手に渡った瞬間、鹿の群れが一気に襲いかかってくるのだ!
筆者も悲鳴をあげながら鹿から逃げ惑い、すべての鹿せんべいを強奪されてもなお追いかけられ、カバンをかじられ、服をベロベロと舐められた。
保護されているとは言え、奈良公園に暮らす鹿たちは野生動物。このまま放置するのは抵抗がある……と困った時に、偶然持っていたウエットティッシュに救われたのだ。
奈良観光へ行く際は、元気いっぱいな鹿にお気を付けくださいね。それでは、皆さんも楽しい旅を!
執筆:高木はるか
Photo:RocketNews24.