ブーム終焉?唐揚げ店が異例のペースで倒産 円安逆風のステーキ店も過去最多
■唐揚げ店の倒産 昨年は27件で前年の9倍
ここ数年、目にする機会が増えた唐揚げ店に勢いがなくなっている。昨年の倒産件数は27件で前年の9倍に膨らんだ。また、ステーキ店の倒産件数も昨年度は初めて2ケタに達した。円安が経営を圧迫している。
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民間の調査会社・帝国データバンクによると、全国で昨年倒産した唐揚げ店は27件だった。毎年2~3件で推移していたが、これまで最多だった2021年の6件を大きく上回った。倒産したのはオリジナルブランドの店、大手チェーンのフランチャイズ店、本業以外のサブビジネスとして参入した店など様々だった。
一時はブームとなった唐揚げ店には逆風が続いている。原材料となる輸入鶏肉は鳥インフルエンザの流行で供給量が減少。飼料価格の高騰で牛肉や豚肉の価格が上昇し、割安な鶏肉を求める国が増えたことも重なり、国内の鶏もも肉の卸売価格は5年間で約2割上昇している。
また、キャノーラ油は5年間で約7割値上がりし、原材料費の高騰を価格に転嫁できない小規模店舗に大きな打撃となった。唐揚げブーム到来の背景にあった新型コロナウイルス感染拡大による巣ごもり需要も下火となったことに加えて、唐揚げ以外のテイクアウトも競争が激化していることも唐揚げ店倒産の要因になっている。帝国データバンクは、こう分析している。
「物価高で消費者の節約志向が強まり、専門店より3割程度安いコンビニやスーパーなどの総菜品、半額以下の冷凍唐揚げなど、割安な競合製品に顧客が流れたことも響いた。唐揚げブームから2年が経過してブーム一巡もみられる中、唐揚げで勝負する企業が増えるのか、他ビジネスへチャレンジする企業が増えるのか注目される」
■ステーキ店の倒産は10件 前年の5倍で初の2ケタ
ステーキ店の倒産も過去最多を更新した。昨年度の倒産件数は10件。前年の2件から急増し、記録の残る2010年度以降初めて2ケタとなった。経営悪化の背景にあるのは円安による輸入牛肉の仕入れ価格高騰だ。
財務省の貿易統計によると、ステーキ店で使用される頻度が高いサーロインなどの米国産牛肉の価格は100グラム当たり平均200円を超え、5年間で1.4倍に上昇した。米国産より安いオーストラリア産も5年間で1.3倍になっている。
日本国内の流通では円安で膨らんだ輸入コストや輸送費用も、ステーキ店の経営に重くのしかかっている。セットメニューで使う野菜も高値で推移している種類がある。帝国データバンクは、ステーキ店ならではの悩みも指摘する。
「他の外食メニューに比べて割高で、客離れの懸念から値上げが容易ではない店舗も多い。そのため、低価格を売りとしたステーキ店や小規模店では急激な仕入れ価格の上昇ペースに耐えられないケースも少なくない」
チェーン店でも原材料などのコストアップから価格改定が相次ぐほか、安価な生産国・部位への切り替え、サラダバーの種類変更など対応に追われているという。一時は店舗が急拡大したステーキ店だが、「これまでリーズナブルな価格で楽しめたステーキ店に試練が訪れている」としている。
(SHIZUOKA Life編集部)