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20歳の挫折から、ボランティアを経てカムバック~千住真理子さん

TBSラジオ

ファッションデザイナー:コシノジュンコが、それぞれのジャンルのトップランナーをゲストに迎え、人と人の繋がりや、出会いと共感を発見する番組。

千住真理子さん

1962年、東京杉並区生まれ。12歳でプロデビューして以降、音楽コンクールで数々の賞を受賞し、日本を代表するヴァイオリニストとして国内外のコンサートやボランティア演奏など精力的に活動中。母親はエッセイストの故千住文子さん、兄に日本画家の千住博さんと作曲家の千住明さん。

出水:ヴァイオリンを始めたのは2歳3か月とありますが・・・

JK:2歳でヴァイオリン? おもちゃみたいでしょう?

千住:そうなんです、1/16が一番小ささかったな、ミニチュア・ヴァイオリンみたいな。実は兄が2人もやってました。兄の楽器がうらやましくて、私も触っていたら「壊すからダメダメ」って。ダメって言われると、子どもですから興味が湧いてくる(笑) あらあら困ったわね、ちょっと早いけど・・・と言われながら、2歳3か月で兄たちと一緒に先生の所へ通うようになったんですね。

出水:1973年に、全国学生音楽コンクールの部で1位を獲得、75年にはNHK交響楽団と共演してプロデビュー。当時12歳!

千住:クラシック業界では当時珍しくて、「この子はまだ種です」って紹介されたぐらい(^^)当時山本直純先生にかわいがっていただいて、それで全国を回るようになったんです。ステージマナーとか、「ステージでの演奏は部屋とは違うよ」とか教えていただいて。

JK:ステージでの弾き方っていうのは、お客さんがいるから向こうのほうまで遠く、ってこと?

千住:そうですね。「きれいに弾いてても向こうまでは届かない。2000人の聴衆にも聞こえるように、ステージ映えする音を出す。大きい音というよりも、芯のある音を出す。芯のある音だと、小さい音でも客席の後ろまで音が届く」と教えていただいて。

出水:幼いころは大人の先生の言う言葉もなかなか理解できないと思うんですが?

千住:母がつねについてきてくださって、先生のおっしゃったことをかみ砕いて、通訳みたいに私に教えてくれる。仲介みたいなことをやってくれました。

JK:もともとお母さまはヴァイオリン弾けるんですか?

千住:いえいえ。母はもともと化学の研究をやっていた学者ですので、ヴァイオリンが高いってことも分からなかったみたいです。最初は先生から借りてたんですけど、デビューが決まった時に父が外から聞いてきて、「どうやらヴァイオリンは高いらしいぞ、どうするんだ。この先家では買ってやれない、やめさせようか」という話もあったそうなんですね。私はそれが嫌で、一生懸命練習しながら「こんなに好きなのよ!」と見せていました。

出水:高校も大学も音楽とは関係のないところを出ていますよね。

千住:12歳でデビューした当時の先生が、音楽学校の先生もやっていて、「あなたが今音楽学校に来ると、他の生徒を教えにくい」と。「異物が入ってくるとやりにくいから、来ないでくれないか。その代わり、音楽学校で教えるようなことは僕が教えるから」って。

出水:途中の過程で心が揺れた時期はなかったんですか?

千住:実は20歳の時に大きな挫折をしたんです。10代の時にプロでずーっとやってきて、どの世界にもあるようないじめとか、足の引っ張り合いとか・・・その当時私は子どもだったので、耐えられなかった。兄たちは一緒になって憤慨したり、がんばれと言ったり、一緒に傷ついたりしてくれたんですが、でも結局は辞めざるを得なくなったのが20歳です。その時は一生辞めよう、という気持ちで。母も「この世界のことはわからなかったから、ごめんなさい」って涙を流してくれました。「あなたをこんな苦しむ世界にいさせるためにヴァイオリンをさせたわけじゃない」。

出水:そこからまたヴァイオリンを手にしようと思ったきっかけは?

千住:ひとつには、明兄が藝大を受けるって言いだしたことです。「今から勉強して、自分が真理子の盾になる」って言ってくれた時です。それと同じような時期にボランティアの話があって、ボランティアから音楽の世界に入っていったんです。ボランティアではプロの世界のような厳しさはない代わりに、音楽ってなんだろう?ということを私自身が体験できた。音楽は心を癒す。そこに心の交流がある。温かいものが行きかう。音楽の根底にあるものをボランティアで学んだ気がするんです。こういう温かいものなら私にもできるかもしれない、と新たに頑張ろうかなと思えたんですね。

JK:真理子さんの大きなマサカは?

千住:やっぱりストラディヴァリウス・デュランティが私のもとに来たこと! 一瞬前までそんなことあり得ないと思ってましたもの!! 日本人がこの楽器を所有することになった、って言ったら、ヨーロッパの皆さんが「ダメだ! これはヨーロッパの宝物だ!」とおっしゃったそうです。ちょっと音出しましょうか?

JK:えっ、そんなこといいの? やったぁ!

千住:黄金期と呼ばれる3年間に作られたうちの1つです。同じ兄弟の楽器は、全部ヨーロッパの博物館に入っています。

JK:今日この聴いた耳を大切にしなくちゃ! ありがとうございます!

出水:私たちとしても、マサカこの楽器と今日で会えて、音を聴けるとは、ですね!!

JK:私もね、今日持っていらっしゃるのは無理かなと思ってたの。CDで聴くのかなって言ってたの。弾いてってなかなか言えないよねって。ビックリしました! 今後は世界のどこでやってみたいですか?

千住:世界のどこというよりも、この楽器を弾いていられれば、目を閉じた瞬間にどこでもないっていう感じ。この楽器を弾いている瞬間が楽しくてたまらない!

JK:目を閉じたら宇宙ですよね。弾いてるときは目を閉じてるんですか?

千住:閉じてます。ほぼ全部暗譜してます。それがこの楽器を弾くための、全神経を集中するための一番いい状態ですね。

出水:デュランティが一番喜ぶ環境はどんな状態ですか?

千住:乾燥しているところですね。夏だとすごく湿気があってナーバスになります。

出水:今年はデビュー50周年でコンサートも控えていますが、どんな1年にしたいですか?

千住:コンサートで初めてこの楽器をお聴きになる方もいらっしゃると思うので、1人でも多くの人に聴いてもらいたいですね!

(TBSラジオ『コシノジュンコ MASACA』より抜粋)

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