消滅の危機にある「つまらないものですが...」という言葉。その「本当の意味」をマナー講師が解説
50年以上の長きにわたり、多くの人々にマナーを教えてきたマナー講師の岩下宣子さん。その著書『77歳の現役講師によるマナーの教科書 本当の幸せを手に入れるたったひとつのヒント』(主婦の友社)は、岩井さんが講師をするなかで実感した、人生で本当に大切だと思ったマナーをまとめたものです。あたたかく、ときに厳しく綴られた77の項目には、マナーを超えた、より豊かな人生を送るためのヒントが満載! きっと、あなたの心に響くはずです。今回はこの本の中から、思い描く自分に近づき、明るく軽やかに生きるためのふるまい術をご紹介します。
※本記事は岩下宣子著の書籍『77歳の現役講師によるマナーの教科書 本当の幸せを手に入れるたったひとつのヒント』から一部抜粋・編集しました。
「つまらないものですが...」はダメですか?
私が若いころ、持参した手土産は「つまらないものですが」と言ってお渡しするのが常でした。でもいつのころからでしょう、「つまらないものを持ってくるなんて失礼だ」という声が高まって、この言葉を使う人がめっきり少なくなってしまいました。
言葉は生き物、と言いますが本当ですね。殺されてしまう言葉もあるのです。
だからあえて言います。これはそんなに浅い言葉ではありません。
新渡戸稲造によると、「私としては誠心誠意選んできたものですが、さしあげるあなたがあまりにもすばらしいので、私の持ってきたものがつまらないものに見えてしまいます」という意味だそうです。つまり、相手を最大限にほめる表現なのです。
「粗茶ですが」「お口汚しですが」「お粗末さまでした」という言葉も、同じような意味を持っています。このような表現も使わない人が増えているのでしょう。わずか20〜30年で、長く愛されてきた日本の謙譲の言葉が失われるのは残念でしかたがありません。
最近では、「了解、という言い方は失礼」とネットで話題になったようです。たしかに「了解です」と目上の人に言うのは失礼ですが「了解いたしました」と丁寧に言えば使えます。「了解」という言葉そのものが悪いわけではありません。
「つまらないものですが」という表現に込めた、相手に対する深い思いやりの気持ち。たったひと言の中に込められた意味を理解して、場に応じて遠慮なく使いましょう。その手土産がけっして適当に選んだものではなく、相手のことを考え、足を運んで選んだものだということも伝わるはずです。
『謙譲の言葉は、相手への賛辞です』。