絶滅危惧種の大型サメ・シロワ二 みんなで守る
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今日はこどもの日ですし、水族館のお話。絶滅危惧種の大型のサメ、シロワニについて取り上げた記事に注目しました。
世界の限られた場所にしかいないというこのシロワニ。世界各地の様々な動物の評価をしている、世界自然保護連合(IUCN)の評価では、絶滅危惧種とされています。
(シロワニ。ビジュアルはザ・サメですが、正確は穏やかだそう。写真提供:NPO法人小笠原シロワニ保全研究会)
日本では小笠原群島だけ!正確に数を数えています!
このシロワニを守ろうと、国内のシロワニを飼育している水族館を中心に、サメの研究者、ダイバーさんなどで、昨年、NPO法人が設立されました。
今のシロワニの状況を、「NPO法人小笠原シロワニ保全研究会」理事長で、福岡市の水族館「マリンワールド海の中道」館長の、中村雅之さんに聞きました。
NPO法人小笠原シロワニ保全研究会 理事長 中村雅之さん
「実は日本にもいることになっているのですが、実際は小笠原群島にしか、今シロワニは生き残っていない、と考えてます。今、私たちはこのNPO法人を立ち上げて、小笠原群島、聟島、父島、母島、この三つの島にシロワニたちが何個体くらしているのか、その数を調べるということを昨年から集中的にやっています。
ちょうど今年の一月に一回目の潜水目視調査というのを行ったんですが、今の暫定値で、今現在、小笠原の父島の周りには113頭しかいない、ということが分かってきました。で、これでいくと、日本にいるシロワニは113個体しかいない、ということになってきますので、この貴重なシロワニをずっとこれから守って行きたいと、いうのが大きな活動の目的になっています。」
大正時代には長崎の市場で盛んに水揚げされていた、とか、昭和47年には、東大と長崎大の実習船が捕獲した、という記録があり、日本の沿岸にもいたようなのですが、昭和50年代になると、八丈島や三宅島沿岸でも既にいない、という記述になっていき、気づけば小笠原にしか生息していない状況に。
そこで、小笠原にいるシロワニの数を把握しよう、と、調査が行われました。シロワニは体側に斑点模様があり、それは人間の指紋のように、個体ごとに違う。写真を撮って、一枚ずつ判定して、数を数えているんです!(根気のいる作業!)
(水中撮影風景 こうやって一頭ずつ撮影するんですね! 写真提供:NPO法人小笠原シロワニ保全研究会)
(このような斑点模様を、一枚ずつ判別していきます。 写真提供:NPO法人小笠原シロワニ保全研究会)
生まれて一か月のシロワニの赤ちゃん!!
そんな中、なんと、この3月に水族館でその貴重なシロワニの赤ちゃんが生まれたんです。
「アクアワールド茨城県大洗水族館」で、サメの飼育担当の徳永幸太郎さんに案内していただいて、生まれて一か月ほどの赤ちゃんを見せていただきました。
徳永さん:生まれたシロワニの赤ちゃんを育成している予備水槽になります。あ、今ちょうど、ね、向こう側から泳いできた、これがシロワニの赤ちゃんですね。
近堂:あ!これですか?私の目の前を!わあ~!
徳永さん:バッチリ、元気ですね!
近堂:また来ました。なんだか顔、可愛いですね。
徳永さん:そうですね、ホントに赤ちゃん顔といいますか、かわいらしいクリッとした目で。そうですね、サメの繁殖自体ね、なかなか難しいところはあるんですけれども、特にこのシロワニってなると、国内でも繁殖に成功した水族館っていうのは、ここ一か所だけしかないですし。初めて成功したのが2021年のことだったんですけれども、それから同じ親の個体が連続で3回繁殖してくれた、と。ちなみに、同じ親の個体が3回連続、3シーズン連続で繁殖したっていうのは、これ、世界でも初めてのことだったんですね。
(こちらがシロワニの赤ちゃん。体長は1メートルくらい。元気に泳いでいました!)
それにしても、3匹目、とはびっくり!
シロワニの繁殖は2年おき。2021年に初めて繁殖に成功。この一匹目は、もう大きくなってお客さんの前で泳いでいました。続く2023年に生まれた二匹目は、うまく遊泳できない状態不良の症状が出てしまい、徳永さんたちの懸命な処置にもかかわらず、残念ながら一か月で死んでしまいました。そして、今年3月15日に、三匹目が産まれました。
同じ親が三回連続で繁殖したのは、世界初!世界中の水族館から、徳永さんのところに「どうやったんだ?何をしたらそんなに上手くいくんだ!?」と問い合わせが続々!
小笠原のワイルドな海の環境を水槽に!
徳永さんによれば、一番は父サメ、母サメが健康で元気であり、相性がよかったのが大きい。あとは、飼育員の情熱!と言うのですが、実は徳永さんも、サメ担当になってしばらくは、うまく繁殖できなかったんです。情熱に変化は無さそうなので、実際、どうして、そんなにうまく繁殖ができるようになったのか、聞きました。
アクアワールド茨城県大洗水族館 サメ飼育担当 徳永幸太郎さん
サメにとって一番キーになるのは水温ですよね。人間で言うと空気みたいなもの。ずっと絶えず接しているものですから、その水温に少し工夫を加えることで、オスがしっかりと発情するとか、メスがしっかりとお腹の中で子どもを育てることが出来るとか、ということがあると思います。やはり水温がキーになりました。
もちろん今までもそういう取組みはやっては来たんですけれども、今まで以上に、水温の幅ですか、夏は暑く冬は下げる、さらに広く取ってみよう、ということで行ってきました。
小笠原に行った時に、ホントに結構荒々しい環境で、シロワニは生活していましたし、もちろん、水温が一定な場所なんて、ああいう場所には一切ないですよね。そういった荒い環境、いわゆるワイルドな環境っていうのが、シロワニにとってはいいんじゃないかな、っていう風に思いまして、あのもちろんね、あんまりにも極端な環境を水槽の中に作り出すことはできませんけれども、まず一つ出来ることとして、そういった水温変更幅を変えてやるという取組みを行いましたね。
(アクアワールド茨城県大洗水族館 サメ飼育担当の徳永幸太郎さん)
実際の小笠原でのシロワニの生活環境を見ることで、水温!と思った。これが的中!水温変化にメリハリつけたら、毎年決まった時期にオスが発情し、交尾するようになりました。(ただし大きな温度変化は他の魚に良くない影響も考えないといけないそう。アクアワールド大洗ではサメだけの水槽なので可能だった。)
NPO法人小笠原シロワニ保全研究会の中村さんは、繁殖というのは、その種の適切な環境ができている、その種が上手く飼えている証。自然界のシロワニを観察し守る活動をする中で、暮らしぶりを良く知り、より良い環境の水槽を作り、繁殖をすることでその種を守る、飼育と自然界の保全を両輪のように活動させていくことが大事、と話していました。
ちなみに、アクアワールド大洗のシロワニの赤ちゃんは、もう少しで一般公開出来そう、ということでしたが、2021年に生まれた一匹目、他の大人のシロワニなど、たくさんのシロワニがゆったり泳ぐのが見られます!
(こちらが、シロワニが泳ぐ水槽。 2021年に生まれた一匹目を探してみましたが・・・判別は難しかった!)
また、明日5/6(火・祝)までは、超サメ展というサメの特別展示もやっています。(サメ好きなので、私はとても楽しかったです!)
残り二日のゴールデンウイークのお出かけ先に、貴重なシロワニを見に行くのはいかがですか?
(シロワニの水槽のバックヤード側。ここからエサを投げ入れるそうですよ!)
(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』取材・レポート:近堂かおり)