不登校のわが子に勉強を促すには何をすればいいの?不登校相談員に聞くモチベーションアップの方法
子どもが不登校になると、多くの親を悩ますのが勉強の遅れ。進学や将来のことを考えると、1日でも早く登校させて授業についていってほしいと思ってしまうものではないでしょうか。しかし不登校の学習支援 キズキ共育塾 名古屋校 元教室長で不登校相談員の寺田真依さんは、「勉強というのは子どもが自立するためのツールであり、ゴールではない」と断言。
今回は2024年11月14日に行われた、不登校や学校の行き渋りに悩む親に向けて次の一歩を踏み出すためのオンラインイベント「不登校・行き渋り 初級講座〜『学校、行きたくない』への3つの視点〜」から、親を悩ませる不登校中の勉強や学びの問題について掘り下げます。
子どもの好きなことや興味のあることから自立のツールを見つける
学校の授業についていけなくなり、勉強が遅れてしまうと受験や進学など子どもの将来への不安も大きくなってしまうもの。勉強では問題解決力や創造力、論理的思考力など自立に向けたさまざまな力が身に付きます。しかしこれらは、勉強以外のことでも身に付けさせることは可能です。寺田さんによると、自分に合った自立のためのツールを見つけることが大事だといいます。
寺田さんがおすすめするのは、「好きなことや興味のあることから自立のためのツールを見つける」ことです。それはアニメやゲーム、芸能人、お絵かきなどなんでもOK。
また好きなことから見つけるだけでなく、子どもにとっての「NG条件から逆算して見つけていく」ことも可能なんだとか。不登校の子どもは無気力になっているため、「何が好きなの?」という質問に答えることができないことも多いのです。そのため、逆に苦手なものから逆算すると見えてくることもあります。たとえば数学や大人数、うるさい場所など、子どもの苦手なものがわかれば、そこから消去法でやってみたいことが見えてくることも。
「いつもスマホで何を調べているの?」という雑談から学びの意欲が生まれることも
実際にこうした自立のツールを見つけた不登校の子どもの例をご紹介します。あるお子さんは不登校中で無気力になり、好きなものがわからなかったそうですが、その子に対して「普段スマホで何を検索しているの?」と質問しました。普段の行動から好きなことを探ろうとしたケースです。
すると普段からK-POPについてよく検索していることが判明。「好きなアーティストが歌っている歌詞や、話している言葉を翻訳なしでわかるようになったら楽しそう」と思い、韓国語や韓国文化を学んでみたい意欲が出てきたそうです。
次にNG条件から逆算して韓国語や韓国文化を学ぶ場所を探すと、「満員電車が苦手」「早起きが苦手」という条件が導かれました。すると「自宅から通えて韓国語が学べる大学に行ってみたい」という目標が見つかり、そのために勉強を頑張るやる気や必要な準備が見えてきたそうです。
「将来何をしたいの?」「どんな勉強がしたいの?」と親が聞いても、不登校中で無気力状態の子どもはなかなか答えてくれません。しかし「いつもスマホで何を調べているの?」「どんな動画を見ているの?」と、子どもの興味のあることや苦手なことを雑談の一環として取り入れてみると、自立ツールが見つけやすくなるかもしれません。
「これができたから私はできる!」という、具体的な根拠で自分を肯定してあげる力を伸ばそう
寺田さんによると不登校中に「今日は学校に行けるかも」「やっぱり今日は行きたくない」と五月雨登校になってしまっても、無理やり学校に行かせる必要はないといいます。学校に行くこと以上に、不登校の間に家で何をするかがとても大事だからです。
「学校に行きたくない」と言っている子どもを無理やり学校に行かせると、本人の体力や気力が削られてしまいます。学校に行かない日でも家でできることをやってみる、勉強という行為を止めないためにも、体力を削らない工夫が大切になりそう。
不登校中でも自立のためのツールを探したり、家で学びを止めないためには、自己肯定感同様に「自己効力感」も重要です。漠然とした「私は大丈夫」という自信はもちろんですが、「これができたから私はできるんだ」と具体的な根拠を持って、自分を肯定する力を伸ばすことがとても大事になってきます。不登校で家にいるとしても「家で勉強ができたから、学校でも勉強ができる」「将来好きなことを学びたいから不登校でも勉強を頑張る」と自分で自分を伸ばしてあげられるように、親が上手に導いてあげたいですね。