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大げさ?と迷っていた児童精神科に障害者手帳取得を見据えて受診。ところが医師の診断は…【読者体験談】

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大げさ?と迷っていた児童精神科に障害者手帳取得を見据えて受診。ところが医師の診断は…【読者体験談】

監修:藤井明子

小児科専門医 /小児神経専門医/てんかん専門医/どんぐり発達クリニック院長

「この程度で病院にかかるなんて、もしかして大げさ?」児童精神科受診への迷い

息子は現在7歳11ヶ月です。おしゃべり好きで人なつっこい性格ですが、不安感が強く、聴覚過敏・触覚過敏があります。6歳で受けた新版K式発達検査では全領域DQ82、7歳2ヶ月で受けたWISC-Vでは全検査IQ95という結果でした。

特別支援学級(私の住んでいる自治体は、特別支援学級に進む際、診断書やWISCの結果の提出は必要ありませんでした)や放課後等デイサービス、学童でも問題なく過ごせており、特に大きなトラブルがあったわけではありませんでした。そのため、通院を始めるまでは「この程度で児童精神科を受診するなんて、もしかして大げさ?」という迷いがありました。

ただ、私自身が育児に疲れを感じることが増えていたこと、そして何か現状を良くする手がかりを見つけられればという思いから、小学校1年生の冬、精神障害者保健福祉手帳取得を見据えて児童精神科を受診することにしました。

「手帳取得を見据えて」と書くとしっかり計画をたてていた……という印象を与えてしまうかもしれませんが、そこまできちんと考えていたわけではありません。「取れれば便利かも?」くらいの感覚でした。また、これまで息子に発達特性があるとは思っていたものの、病院での正式な診断を受けたことがなかったことも、受診を決意する理由の一つでした。

この体験談では、息子の受診の様子と、先生からいただいたコメントなど詳しくお話しさせていただきます。

初受診。想像以上に支離滅裂だった息子の反応にびっくり

現在、通院を始めて約4ヶ月で、その間に5回ほど通いました。親子で受診するパターンと、子どもは別室で待機して保護者と先生の2人で話すパターンが交互にある感じです。

最初は親子での受診でした。先生から「お母さんは口を挟まないでね」と強く言われ、先生と息子だけで話すのを見守りました。

先生は最初「今日はなんで、ここに来たの?」と息子に聞きました。受診は、息子自身が何かに困っていたからというよりは、私側の都合だったので、息子には「学校で困ってることや嫌なことがあるようなら、先生が聞いてくれるから話してみてね」程度しか伝えていませんでした。そのため、息子は先生の問いかけの意味が理解できず、しかも先生からは質問に答えやすくなるような補足説明はなかったため、普段の数倍落ち着きを失いました。椅子からずり落ちそうな姿勢で、隣に座っていた私のカーディガンに顔をうずめたり、私のカバンの中を探って、中に入れていたお菓子を取り出そうとしていました。

その日息子はゲームのキャラクター柄のトレーナーを着ていたので、先生が「そのゲーム、好きなの?」と息子が話しやすそうな話題を振ってくれました。普段なら、待ってましたとばかりに自分の好きなゲームについて語り出す場面だったはずですが、このときは「今日は学童休んだ」とか「(私のカバンの中には)ママの飴があるんだよ」とか、先生の声かけとは関係のない話を脈絡なくし、その日の診察は終わりました。

児童発達支援や放課後等デイサービス、特別支援学級の先生とは違って、児童精神科の先生は息子が話しやすいように誘導したりしなかったからなのか、息子の話は普段よりもさらに支離滅裂で、ちょっとびっくりしました。ただ、先生は息子に対して驚いたりいらだったりした様子をまったく見せなかったため、息子はうまく話せなかったことを気にしてはいませんでした。「病院だったけど、注射されなくて良かった!」とむしろ前向きな反応で、病院をあとにしたのでした。

医師が分析した息子の発達課題。そして診断は……

次の回の診察で、先生と私だけでお話した際、初診での息子の様子からどのような発達課題が読み取れるかといった解説を聞くことができ、とても勉強になりました。

まず先生は「前回の診察の様子を見て、どう思いましたか?」とおっしゃいました。私が「ここまで落ち着きがないのは久しぶりだなと思いました。いつもはおしゃべりが上手だと思っていたのですが、初診の日は全然違う様子だったのに驚きました」と答えると、先生が驚くべき解説をしてくれました。

「診察では息子さんの『生』の状態を知りたかったので、あえて質問の補足などをしなかったんです。小1くらいになってくると、こうした情報のない状態でも、相手が何を求めているかを推測しながら、それに合った答えを言ったり、わからない所を尋ねたりできるようになってくるのですが、息子さんは相手の意図の読み取りに苦手さがあるので、不安になって、じっとしていられなかったんだと思います」

さらに、息子が「だめだと分かってるのに、いつもバッグの中のお菓子が気になっちゃって…」と言ったことについて、「息子さんなりに『自分で自分をコントロールできなくて困ってる』『そう感じることがよくある』ということを伝えていたように思えました」と説明されました。私はそんな発言をしたことをすっかり忘れていたのですが、先生はそういうところを見ているのかと驚きました。

事前に詳細な問診票を提出していたこともあり、「本来なら診断名をお伝えするまでに診察に半年くらいかかります。ですが問診票に必要な情報が詳細に入っていることや前回の診察の様子を見ると、息子さんにはASD(自閉スペクトラム症)特性があることはほぼ言えると思います」と言われました。結果、7歳7ヶ月でASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けることになりました。

息子の応援団に医師が加わり、長期的な視点が見えてきた

先生の言葉で印象的だったのは、
「ASD(自閉スペクトラム症)特性のある子は、思春期にさしかかる10歳を超えてくるあたりから、同年代の子のコミュニケーションの高度化に追いつけず、しんどさを抱えることが多いです。反抗期が始まる前の低学年の時期から、児童精神科ともつながっておいて相談先を増やしておくのは、今後の備えとしておすすめですよ。いいタイミングで受診されましたね」
という長期的な視点でのアドバイスでした。

また、これまでの支援について「早期療育は効果ありますよ。反抗期が始まる前(未就学児~小学校低学年)は療育のゴールデンタイムなんですよ」「適切な時期に、適切な支援に関わることができていますね。これまで大きな困りごとがなかったのは、その頑張りの成果ですよ。お母さんさえ良ければ、これからは私もサポートに加わりますからね」と言ってもらえたのが、心強かったです。

現在小学2年生になった息子は、1年生の頃よりも休み時間に交流学級の友だちと遊ぶことが増えています。交流学級で同じクラスになった男の子が息子を誘いに来てくれているそうで、交友関係が広がるのは喜ばしいことです。ただ、話を聞いていると、相手の子は息子を「自分が強気に出ていい相手」だと認識して仲良くしたがっているような印象もあります。人間関係の複雑化がこれから始まっていくんだろうなという感じです。

こういうときに私がどっしり構えていられるためにも、息子の応援団(あるいは私の相談相手)は多いほうがいいと思っています。受診するまでは「おおげさ?」と考えていた児童精神科ですが、このタイミングの受診で良かったのかなと思っています。

現在、精神障害者保健福祉手帳の取得を検討中です。「いつ頃まで」といったところまでは特に考えておらず、「取れれば便利かも?」くらいの感覚ですが、息子の将来への備えの一つとして前向きに考えています。

イラスト/SAKURA
エピソード参考/苗

(監修:藤井先生より)
親御さんがこれまでお子さんの特性と向き合いながら日々を過ごされてきたことに、頭が下がる思いです。素敵な医師との出会いがあったこと、本当によかったですね。「こんなことで受診していいのかな」と悩まれる方も多いですが、子どもの成長や環境の変化によって困りごとは変わってくるものです。そんな時、医療機関は「相談口のひとつ」として気軽に頼っていただければと思います。精神障害者保健福祉手帳は、必要になったときに役立つ選択肢の一つとして考えることができる制度ですから、今すぐに使う予定がなくても、「相談できる場所」「使える制度」を知っておくことは大きな安心につながりますね。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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