NEXCO東日本が力を入れる“moVisionプロジェクト”とは?
2月17日放送の「L is B presents 現場DX研究所」(文化放送 毎週月曜日20:00~20:30)は、NEXCO東日本関東支社副支社長の田中潤一氏をゲストに迎え、力を入れる取り組みや今後のビジョンについて詳しくお話いただいた。
松井佐祐里アナ(パーソナリティ)「まずは企業プロフィールを紹介致します。NEXCO東日本の愛称で知られる東日本高速道路株式会社は、2005年に日本道路公団を分割・民営化し、設立しました。新潟県および長野県の一部を含む関東以北から北海道までの高速道路の管理運営事業、建設事業、サービスエリア事業および高速道路関連ビジネスのほか、技術開発や環境対策、海外事業などに取り組んでいます。また、高速道路の管理・修繕事業として、安全に走行できる道路環境を保持するため、日常的な点検・清掃・補修・事故復旧作業に努めています」
L is B代表・横井太輔氏(パーソナリティ)「力を入れている取り組みは何ですか?」
NEXCO東日本・関東支社副支社長・田中潤一氏「moVision(モビジョン)プロジェクトです。」
横井「詳しく教えてください」
田中「モビジョンという言葉は、モビリティとビジョンを組み合わせた造語です。将来の移動手段、モビリティとしての自動運転車を見据えた、高速道路の構想、ビジョンという意味を表しています。今後、自動運転の技術開発が進む中、高速道路としては、当面は、自動運転車と非自動運転車が混在する状況で、安全で円滑な交通を支援していかなければなりません。特に、インターチェンジなどの分合流時には、車の前方だけではなく、横や後ろも意識しないといけないので、かなりハードルが高く、車両側からだけの制御は困難です。落下物や工事情報も含め、高速道路側でどのようにアシストするかは、いかに迅速に情報収集を行い、そして的確に情報提供するかにかかっています。当社ではこの課題への対応として、“自動運転社会の実現を加速させる、次世代高速道路の目指す姿(構想)”としてmoVisionを2021年に策定いたしました」
横井「プロジェクトの中で、近々実施されるものはありますか?」
田中「moVisionプロジェクトとしては、東北自動車道の鹿沼IC~宇都宮IC間を実証実験区間として位置づけております。31項目の重点プロジェクトがあるのですが、そのうち、“リアルタイム全線監視”や“次世代ハイウェイラジオ”の実証実験を2026年度から開始予定です。実証実験区間では、可視光と遠赤外線のカメラを搭載した多機能ポールを約300m間隔に設置しまして、高速道路上の事故や落下物等の道路情報を、面的かつリアルタイムに収集します。現在、多機能ポールの製作等に着手しています。収集した情報は、既存の情報板や携帯アプリである次世代ハイウェイラジオにより情報提供します。実証実験では検知精度や処理の迅速性、情報提供の効果などを検証していきます」
横井「300m間隔に多機能ポールを立てていって、そこから情報を得たものをアプリに配信していく。例えば、何か落下物がここにありますよという情報を、正確に教えてくれるそういうことですか」
田中「そういうことです。これは即時に余すところなく、面的にセンサーで収集しますので即時提供を考えています」
横井「DXに関する課題は何ですか?」
田中「膨大なメンテナンスデータのデジタル化です。高速道路を日々安全にご利用いただくためには、点検と修繕が欠かせません。毎日300万台もの車が走る、4000kmの高速道路は、社員、グループ社員による近接目視や打音点検により現場で損傷状況を把握して、劣化の大きさにより、修繕の優先順位、補修方法を決め、メンテナンスされています。これら膨大な損傷データの収集からシステムへの投入、解析、補修計画までのサイクルを多くの人員と経験豊かな技術者が行ってきました。ところが、近年の老朽化、生産年齢人口の減少により効率化が急務となってきました。現在、損傷状況を判断する最初の段階は、依然として、目視や打音による、専門の技術者による感覚になってます。この感覚を人に代わり、センサーや画像処理によるデータ化、すなわちデジタル化するところが大きな課題だというわけです。メンテナンスデータを、人ではなく機械による自動収集、判定することにより、初めてDXを進めることが可能になる、というわけになります」
横井「NEXCO東日本の今後のビジョンを教えてください」
田中「外部との連携による新たな価値創造です。インフラとしての高速道路を維持していくことは私たちの最重要ミッションです。頻発する異常気象、災害、物流問題など、これらを安定的に支えていく基本となるからです。しかしながら、モビリティの進化、少子高齢化とICTによる生活様式の変化は、高速道路の利用にも大きな変化をもたらすのではないかと考えています。自動運転により、人々の移動、物流は高度に効率化され、あるいは、物流ドローンや空飛ぶ自動車の発達により高速道路の利用が少なくなるのではないか。あるいは、ICTの発達は、自宅に居ながらにして旅行や人とのコミュニケーションを可能とし、移動に対する頻度も限定的になるのではないか。そのように考えると、今までのように高速道路をそのままの形で維持することだけでは、このような社会の変化に、取り残されてしまうと思います。既存の概念にとらわれず、新たなサービスを生み出すためにも、外部のイノベーティブなスタートアップなどと連携し、これまで考え付かない、新たな高速道路インフラの価値創造が求められると考えています」