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水深10000メートル以上!未開の深海世界への挑戦 探索を阻む<3つの理由>とは?

サカナト

深い海(提供:PhotoAC)

近年、さまざまな水族館が「深海」に関する展示を行っています。

何かとメディアなどでも取り上げられることが多い深海ですが、「水深何メートルからが深海と言うのか」を具体的に知っている、という人はあまりいないかもしれません。

水族館の展示やメディアをもっと深く楽しめるように、深海の基礎知識について学んでみましょう。

【画像】水圧が高くても深海魚が潰れない理由とは?

どこからが「深海」なのか?

海は深さによって5つの区分に分けられています。

メジャーな魚がいる「表層」

0~200メートルが「表層」と呼ばれ、クマノミやマダイなどのメジャーな魚を見かけることができ、太陽の光も届く世界です。

一般的なダイビングの潜る深さが18~30メートルなので、人間が生身で潜ろうとする場合は、ほんの表層しか見られないことがよくわかりますね。

中層(中深層)の別名は<トワイライトゾーン>

水深200~1000メートルが「中層(中深層)」となり、“トワイライトゾーン”と呼ばれることもあります。

200メートル以上の深さになると太陽光は海面と比べて0.1%ほどしか届きません。餌になる植物プランクトンも少なくなります。水温も下がり、魚にとっては暮らしづらい環境です。

深海の入り口ともいえる水深200メートル付近には、マダラやズワイガニなど、食卓にも身近な生き物たちが住んでいます。

タカアシガニ(提供:PhotoAC)

そのほかにもメンダコやタカアシガニ、デメニギスが有名です。深海魚の中でもアイドル的なメンダコやデメニギスは、深海の深さから見ると中ぐらいの水深にいるんですね。

ダイオウグソクムシがすむ「漸深層」

次の水深1000~3000メートルは「漸深層」と呼ばれます。

オオグチボヤやダイオウグソクムシ、チョウチンアンコウなどが生息しており、時折水族館でも展示されています。

まだ未知の世界「深層」

水深3000~6000メートルになると「深層」と呼ばれます。まだ未知の領域のため水族館での展示などが少なく、メジャーな生き物も少なくなります。

メンダコ(提供:PhotoAC)

マッコウクジラは世界一深くまで潜水ができる哺乳類で、水深3000mまで潜ることができると言われています。メンダコやデメニギスよりもよほど深い水深までいけると思うと、その潜水能力に驚かされますね。

6000メートル以上の深さは「超深層」

6000メートル以上の深さになると、「超深層」と呼ばれます。

深層と同じくまだ調査が進んでいない未知の領域ですが、クサウオの仲間であるスネイルフィッシュなど、生き物の存在が確認されています。

深海探索の<挑戦>と<壁>

地球最後のフロンティアである深海。宇宙にまで進出した人類が思うように深海探索を進められていないのには、「水圧」「低温」「暗闇」の3つの理由があります。

人間の行く手を阻む<水圧>

まず水圧は10メートル潜るごとに1気圧増え、その分物体を押し潰そうとする力が働きます。水深200メートルの深海の場合は20気圧となり、この水圧にカップ麺を沈めた場合は片手サイズまで圧縮してしまうほどの力です。

水深200メートルでさえそれだけの力なので、1000メートルまで潜った場合は指先ほどの面積に力士が4人乗っているほどの力がかかっています。

深海で思うように探索するためには、それらの力に耐えうるように潜水艦を作らなければなりません。有人調査がたどり着いたもっとも深い深海は、マリアナ海溝の最深部チャレンジャー海淵の1万900メートルの世界です。

1000メートルの10倍になる1万メートルの水圧は、1平方センチの面積に約1トンと同じ力がかかるというとんでもない環境です。

日本の潜水調査艇の嚆矢、しんかいHU-06(提供:PhotoAC)

チャレンジャー海淵への挑戦は、まず1960年にスイス人のジャック・ピカールと米海軍ドン・ウォルシュ大尉の2人がトリエステ号で1万916メートルプラスマイナス5メートルに到達。有人潜航では、2012年に映画監督ジェームズ・キャメロンがディープシーチャレンジャー号で1万898メートルを記録しています。

どちらの挑戦も船体に破損が生じたことが理由で早期浮上を余儀なくされています。

鋼鉄であっても簡単に捻じ曲がるほどの力がかかる水深に人が潜ると考えると、技術の進歩を感じるとともに怖さも感じますね(鉄をもつぶす怪力 ~水圧~-NHK)。

過酷な環境をつくる<低温>と探索を困難にする<暗闇>

次に立ちはだかるのは温度です。深海は水温が非常に低く、1000メートル地点で2~4℃ほど。水圧に耐えられるように作られた潜水艦には暖房器具がないため、乗組員にとっても過酷な環境になります。

そして最後は暗闇です。太陽の光が届かないため、潜水艇の照らせる範囲だけが視界になります。限られた視界と酸素で広い海を探索するのは至難の業。何度も潜航を繰り返すことで、少しずつ探索を進めるしかないことも、調査が進まない理由のひとつです。

また、深海へ潜る潜水艇を製造するには大きなコストがかかります。

1989年につくられた、深海6500メートルまで潜ることのできる有人潜水調査船「しんかい6500」は2024年に設計上の寿命を迎えるそうですが、後継機をつくる技術者は引退しており、しんかい6500を構成するチタン製の耐圧殻をつくる設備もなくなっているそう。

「ロストテクノロジー」だとして時折SNSを騒がせますが、今後の有人潜水艇についても目が離せません。

研究者たちのさまざまな工夫

思うように探索が進まない深海に挑戦するため、研究者はさまざまな工夫をしています。海中で使用できない電波の代わりに音波を使って海底の地形を調べ、通信や画像の記録などを行っています。

有人探索以外にも、近年は水中ドローンの技術も発達してきました。有線操縦になるためひとつのエリアの調査には時間がかかりますが、調査の手助けとして役立っています。

深海には未だ謎が多い

深海に住む魚たちは、浮袋の空気の代わりに自分の体を油で満たしたり、体を柔らかくすることで水圧に耐えているのではないか、といったことがわかりはじめています。

しかし、深層や超深層に生息するカニやナマコの仲間たちはどのように水圧に耐えているのか、謎めいた部分も多く残されているのです。

ダイオウイカやメガマウスのような巨大生物も、広い深海にはまだ存在するかもしれません。

宇宙外生物も魅力的ですが、神話やオカルトで語られたような超巨大生物が今後見つかる可能性を考えると、とてもわくわくしてきませんか?

(サカナトライター:秋津)

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