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「ぬばたま」今年も実る 市田さん方のヒオウギ 伊賀

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実を付けたヒオウギを眺める市田さん=伊賀市野間

 三重県伊賀市野間の市田慶子さん(83)方の庭で、アヤメ科の多年草「ヒオウギ」が今年も黒く光沢のある種子「ぬばたま(射干玉)」を数多く付けた。和歌の世界では古来より黒髪や夜などに掛かる枕詞として親しまれている。

ヒオウギの種子「ぬばたま」

 30代から華道に打ち込んできた市田さんは、50代の時に華道仲間からヒオウギの種を譲られ、庭の一角に植えた。約1メートルの高さに育つと、夏には凛としたオレンジ色の花を咲かせ、秋が深まるころには直径5ミリほどの種をいくつも付けた。

 庭では他にもさまざまな植物を育てているが、ヒオウギは夏から秋にかけて毎年の風物詩に。花やぬばたまは、生け花の花材としても活用している。

 奈良時代末期に成立したとされる現存する日本最古の歌集「万葉集」には、ぬばたまを枕詞とした歌が80首ほど収められている。

 平安時代が舞台のNHK大河ドラマ「光る君へ」を毎週楽しんでいるという市田さんは「つやつやとした美しい黒髪とぬばたまを重ね合わせた昔の人の思いを、今年は改めて感じることができた」と話した。

夏に咲いたヒオウギの花(市田さん提供)

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