賃上げ見込みの企業初の6割超 賃金アップする理由 賃金アップしない理由 それぞれの事情
■静岡県内の企業 63.2%が賃上げの見込み
春闘の集中回答日では、今年も大手企業から満額回答が相次いだ。静岡県内の企業でも過去最高となる63.2%の企業で賃上げを見込んでいる。一方、据え置く企業もある。それぞれの理由が帝国データバンクの調査で明らかになった。
春闘は3月14日に集中回答日を迎えた。トヨタ自動車や日立製作所など、多くの大手企業が労働組合からの賃上げ要求に満額で応じた。大手企業の傾向が中小企業にも反映されるかが、今後の焦点となる。
賃上げの動きは静岡県にも広がっている。民間の調査会社・帝国データバンクによると、静岡県の企業のうち、正社員の賃金改善(ベースアップや賞与、一時金の引き上げ)が「ある」と見込む企業は63.2%に上った。2年連続の増加で、2006年の調査開始以降で最も高い。賃金改善が「ない」と回答した企業は13.0%で、最も低い水準となっている。「分からない」は23.8%だった。
■賃金改善と見送り それぞれの理由トップ3は…
賃金改善する理由のトップは「労働力の定着・確保」で、75.7%(複数回答可)を占めた。企業側からは「賃金を引き上げないと従業員の確保がままならなくなるのが現状。生産性向上を図りつつ、賃上げしていく」、「賃金アップに対応できない会社は淘汰される」などの声が上がる。深刻な人手不足が解消されず、人材流出を防ぐには賃金アップをせざるを得ない企業の事情が背景にある。
「労働力の定着・確保」に次ぐ理由は、「物価動向」の58.3%、「従業員の生活を支えるため」の56.4%となっている。企業からは「色々な物の値段が上がり、従業員の生活を支えるためにできる限りの賃上げをしたいが、会社の業績的に限界がある」といった悲鳴も漏れる。
一方、賃金改善をしない理由は「自社の業績低迷」が62.2%で最多となった。「物価動向」は15.6%、「同業他社の賃金動向」と「設備投資の増強」が11.1%で続いた。企業側は「当社の利益から給与は妥当と考えている。これ以上 給与を上げると赤字になってしまう」などと説明した。
調査開始以来、賃上げを見込む県内企業は初めて6割を超えた。賃上げの理由に7割の企業が労働力の定着・確保を挙げた結果を受け、帝国データバンクは「高水準な人手不足の状態が引き続き経営リスクとなっている。。企業は同業他社の賃金動向を注視しながら賃上げを行う機会が増えている。企業が生き残りを図るためには、継続的な利益の確保が従来以上に重要となる」とまとめている。
今回の調査は1月20日から31 日まで実施された。調査対象は静岡県内企業778社で、有効回答企業数は345 社(回答率 44.3%)。帝国データバンクによる全国景気動向調査から静岡県内企業を抽出して分析した。
(SHIZUOKA Life編集部)