JR新観光列車「ひなび」盛岡-釜石間で12/30から定期運行開始 SLに代わる鉄道旅提案
JR東日本の新しい観光列車「ひなび(陽旅)」が盛岡-釜石間で今月から運行を開始する。旅行商品専用団体臨時列車として23日デビュー。30日から来年2月25日まで、土日祝日を中心に15往復の運行が予定される。釜石線(花巻-釜石間)を走り、東日本大震災からの復興を後押ししてきた「SL銀河」が今年6月に運行を終了。観光客減少への懸念があった沿線自治体などにとって、新車両の運行は今後の誘客の好材料になるものと期待される。
「ひなび」は「リゾートあすなろ」として運行していたディーゼルハイブリット車2両を改装した列車。外装には山や波、花など北東北の豊かな自然をイメージしたデザインと縁起の良い水引“梅結び”が描かれている。白地に赤ラインは国鉄時代に岩手、青森両県を走った気動車を思い起こさせる配色。
1号車はグリーン車で、4人掛けと2人掛けのボックスシート、1人用シートを備え、定員は25人。運転席の後方には展望スペースがあり、運転手と同じ目線で進行方向の景色を見られるシートも。2号車は普通車で、2人掛けのリクライニングシートなどが並ぶ。定員は34人。両車両とも窓が大きく、沿線の四季折々の景色を存分に楽しむことができる。
9日は釜石駅で一般向けの車両展示会が行われた。訪れた人たちはホームから外観の写真を撮ったり、車内でシートの座り心地を確かめたりし、走行車両への乗車を心待ちにした。釜石市の小学生千葉條太郎君(7)は「グリーン車がすごい。シートはふかふか。運行が始まったら乗ってみたい」とわくわく。鉄道好きで、一番好きなSLの釜石線運行がなくなり寂しい思いをしていただけに、新車両の登場にうれしさをにじませる。同線では陸中大橋駅近くの赤い橋「鬼ヶ沢橋りょう」がお気に入り。ひなびの走行風景も楽しみにする。
出張で釜石に来ていた東京都の会社員榎本譲さん(39)は帰りの列車の待ち時間が車両公開の時間帯と重なり見学。「ゆったりした座席で、大きな窓から眺める景色も良さそう。お酒とか飲みながらもいいですね。移動そのものを楽しめる感じ。家族や友人とのグループ旅行に使ってみたい」と乗車の機会を望んだ。
同列車のコンセプトやデザイン、名前は、JR東日本盛岡支社の社員らによる釜石線を盛り上げるプロジェクトで協議し決定した。SL銀河に代わる同線の新たなシンボルとして愛されることを期待する。乗客へのサービスとして、スマートフォンからの事前予約で沿線の弁当などを駅や列車内で受け取れる「うけとりっぷ」も実施。釜石駅の髙橋恒平駅長は「沿線の景色と料理を堪能しながら快適な旅を。ひなびを利用して釜石、沿岸に足を運び、観光や周遊を楽しんでもらえれば」と呼び掛ける。
ひなびは全車指定席で、乗車区間の乗車券と指定席券(またはグリーン券)が必要。指定席の料金はグリーン車が2000円、普通車は大人840円、子ども(小学生以下)420円。乗車日1カ月前の午前10時から、みどりの窓口や予約サイト「えきねっと」で購入できる。