台湾でも屈指の朝市、嘉義東公有市場の絶品朝ごはん【台湾食べ歩きの旅 #19】
今回の台湾一周は6泊7日の旅程だ。1泊目は台北で、最終日は帰国便が早朝なので桃園空港の近くに泊まらなければならない。
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これまで宜蘭県の羅東に1泊、台東の関山に1泊、高雄に1泊、そして嘉義で1泊した。
つまり今日は帰国前日である。それなのに、まだ嘉義というかなり南部の街にいる自分に焦りつつ、旅程を変更した。
台中行きをやめ、凉しい阿里山へ
予定変更の理由のひとつは、暑さである。30度超えの炎天下での食べ歩きはなかなかきつい。
そんなとき、高雄から岡山へ移動中の台鉄で出会った男性2人組から連絡があった。列車でアサヒの缶ビールを飲んでいた彼らである。同じ列車に乗り合わせた時間はわずかだったが、「今夜は嘉義に泊まる予定」と聞いていたため、念のため連絡先を交換しておいたのだ。
メッセージの内容は、「高山鉄路に乗って阿里山へ行く」だった。嘉義駅からは、阿里山森林鉄路という有名な高山列車が出ていて、それに乗って阿里山のかなり高いところまで行けるのだが、私はまだ一度も乗ったことがなかった。
帰国前日は嘉義から桃園へ向かう途中、台中にでも寄ろうか、でも暑そうだなあ……と弱腰になっていた私は、「山に涼みに行くのもいいな」と急きょ予定を変更し、日本人旅行者2人組と一緒に阿里山へ向かうことにした。
嘉義の東公有市場で牛肉スープの朝ごはん
阿里山行きの列車は午前9時発。それまでに腹ごしらえをしておこう。私は早起きしてホテルの自転車にまたがると、早速お気に入りの市場に出かけた。
嘉義の朝、快晴。3年半ぶりに再訪したい店はたくさんある。目指すは東公有市場だ。
地方の市場をいくつも巡ったが、嘉義の朝市は格別賑やかで規模も大きい。昔ながらの店々が湯気を立てている。
市場の建物内には朝食店が集中していて、肉や魚、野菜などの店がその周りを囲んでいる。建物外の路地にも無数の店がひしめき合っていて、毎朝がお祭りのようだ。
そんな嘉義公有市場の朝ごはん屋のなかでも一番人気なのが牛雑湯(牛モツスープ)。
女将さんが巨大な鍋で牛モツをグツグツ煮込んでいる。この日は平日の早朝。まだ客の少ないテーブルに座り、早速牛モツスープを注文する。
1杯150元は朝食にしてはやや高めだけれど、ボリューム満点だが、あっさりしていて美味しい。
牛モツスープは牛肉麺の店などでよく出されるが、これほどモツが主役のスープというのはなかなかお目にかかれない。どの部位も大きく、味が染みていて歯ごたえもこぎみよい。牛ダシがしっかりきいたスープはおかわり自由だ。
7年ぶりのヤギ肉スープの店も健在
牛モツスープの隣には、ヤギ肉を扱う店がある。
以前に訪れたときは高齢のおじいさんが店を切り盛りしていたが、今回、7年ぶりに訪問してみると、以前と同じ懐かしい顔があってホッとする。
ヤギのような白いフサフサ眉毛のおじいさんは、テイクアウトを注文した客にスープを用意している。
久々の台湾一周の旅では、どの町でもたくましく働く高齢者の姿を見た。元気に声を張り上げる人もいれば、腰にコルセットを巻きながら、なんとか立ち仕事をこなす人もいる。日本でもそうだが、台湾でも後継者がいない店は高齢者ががんばっている。
デザートは露店で卵を落としたホット杏仁茶
市場から近い大きなロータリーでは、大好きな杏仁茶の店が営業していた。店といっても、ご主人がロータリーの脇に陣取って、小さな椅子を並べ、杏仁茶を売っているだけ。
大きな油條(揚げパン風)を、卵を溶かした熱々の杏仁茶に浸して食べると、それだけでお腹がいっぱいになってしまう。
聞けば、彼は四代目の後継者で、初代の杏仁茶売りは80年前にこのロータリーで商売を始めたそうだ。
売っているのは杏仁茶と油條だけだが、長年のなじみ客のために、今も同じ業態を続けている。「店舗なんか構えたら、客が来なくなる」と、謙虚な四代目は言う。
牛モツスープの朝ごはんと杏仁茶を堪能し、目指すは阿里山。再び自転車に乗り、阿里山鉄路の発着ホームがある嘉義駅へ向かう。今日も平地は暑くなりそうだ。
(つづく)
(うまいめし/光瀬 憲子)