B-1グランプリでおなじみの「八戸せんべい汁」から、「馬肉鍋」、「じゃっぱ汁」まで!本州最北端【青森県】の鍋はバラエティ豊か
本州最北端に位置し、三方を日本海・太平洋・津軽海峡に囲まれている青森県。自然豊かで寒さが厳しい土地だからこそ、体を温めてくれる鍋は郷土食として親しまれてきた。どれも青森県民の暮らしの中で生まれたものでありながら、B-1グランプリで一躍有名になった「八戸せんべい汁」は新食感が楽しめる鍋として県外からも人気を集めている。
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掲載:2025年1月号
※この記事は1月号をもとに加筆しています。
なぜ鍋にせんべい⁉ 絶妙なモチモチ食感に納得! 八戸せんべい汁(はちのへせんべいじる)【青森県】
肉や魚、キノコ、野菜などでとっただし汁に、南部せんべいを割り入れて煮込む「せんべい汁」は、青森県八戸市を中心に、青森県南から岩手県北の地域でおよそ200年以上前から食べられている郷土食。せんべいは煮込んでも溶けにくく、モチモチとした独特の食感。からだを温めてくれる汁物で、鶏肉の代わりに、八戸の特産であるサバを入れることもあり、サバ缶で手軽につくるのもオススメだ。
そんなせんべい汁だが、地元の人にとってあまりに身近すぎるせいか、その昔は土産として商品化されることもなかった。
しかし、その魅力に着目した「八戸せんべい汁研究所」がブランド化を目指し、魅力を発信。八戸はB-1グランプリ発祥の地となったこともあり、開催をきっかけにせんべい汁の知名度は今や全国区になった。
鍋に使用する南部せんべいは、小麦粉・塩を材料とし、汁物用に開発されたもの。煮込んでも溶けにくく、モチモチとした独特の食感がある。
【ライター・山本一典からひとこと】
具材のうま味が染み出ただし汁を吸った南部せんべいは、ツルツルモチモチ。食感がたまりません。この絶妙な歯ごたえを楽しむなら、せんべいはすべての具材が煮上がってから、最後に割り入れるのがベスト!
八戸せんべい汁のつくり方
【材料】 鍋用の南部せんべい、鶏肉、旬の野菜や山菜、ネギ、糸コンニャク、しょう油、塩など
【つくり方】
1 具材を食べやすい大きさに切り、鍋で煮込む。
2 具材に火が通ったら、しょう油、酒、塩などで味付けする。
3 最後にせんべいを割り入れて好みの固さになるまで煮込めば完成。
「戸」が付くところに馬肉文化あり! 栄養満点でヘルシーな馬肉鍋(ばにくなべ)【青森県】
「低カロリー、高タンパク質、低脂肪」と言われるヘルシーな馬肉を使用した鍋は、青森県南部地方では古くから親しまれてきた。
三戸、五戸、六戸、七戸、八戸など、「戸」が付く地名が多い青森県南部地方は、馬とともに暮らしてきた地域。そのため、馬肉が一般的に食べられてきたのだ。その中でも五戸町(ごのへまち)は、馬の売買・仲買を行う商人「馬喰(ばくろう)」が多く、明治時代から馬肉鍋が登場したといわれている。味付けは地域や家庭によってさまざまで、味噌仕立ての鍋のほか、馬刺しや「義経鍋」と呼ばれる焼肉、しゃぶしゃぶなどで楽しむことができる。
また、五戸町のほかに、十和田市や五所川原市(旧金木町)にも馬肉食の文化があるので、馬肉好きであれば是非訪れてみてほしい。
馬肉鍋のつくり方
【材料】
馬肉、馬脂、キャベツ、ゴボウ、豆腐、ねぎ、糸こんにゃく、味噌など
【つくり方】
1 熱く熱した鍋に馬脂を入れて馬肉を炒める。
2 水、味噌などの調味料とゴボウを入れてひと煮立ちさせたあと、キャベツ、豆腐、ネギ、糸こんにゃくを入れる。
3 沸騰したら全体をかきまぜ、火が通ったら完成。
捨てるところのない鱈のじゃっぱをふんだんに使った 【青森県】の定番、じゃっぱ汁
青森の冬を代表する魚・鱈(タラ)のじゃっぱ(アラ)と野菜などを煮込み、塩や味噌で味付けした、青森の冬にはなくてはならない代表的な郷土料理。栄養価が高く、寒い冬に心身ともに温まるということから、家庭でも人気の定番料理となっている。
「じゃっぱ」は津軽の方言で雑把(ざっぱ)、つまり「捨てるもの」という意味。普通は食べずに捨てる魚の頭や骨、皮、内臓などいわゆる「アラ」をさし、これらを丸ごと使ってつくる汁を「じゃっぱ汁」と呼ぶ。厳しい冬の時期に獲れるタラは「寒ダラ」と呼ばれ、もっとも脂がのっている。大漁のときは、浜で待つ女たちがお祝いに「じゃっぱ汁」をつくるのが昔ながらの光景だったのだそう。
青森の冬を代表する魚・鱈。
じゃっぱ汁のつくり方
【材料】
真鱈(アラ)、大根、ニンジン、豆腐、ネギ、味噌など
【つくり方】
1 具材を適当な大きさに切り、出汁をとった鍋に大根、ニンジンを入れて柔らかくなるまで煮込む。
2 塩を振っておいたじゃっぱを入れ、中火で煮込む。
3 豆腐、酒を入れ、沸騰したら味噌を入れて味を調整したら完成。
【アレンジ】
白子や肝などの内臓を入れることで、より濃厚な味が出る。
どれも長い歴史のなかで育まれた鍋でありながら、呼び名や使う食材が珍しく、他県在住者からしたら斬新に感じさせてくれる青森県の鍋。オンラインショップやふるさと納税で入手できる鍋もあるので、未体験の味を試してみては。
文/横澤寛子