なぜ酷評の嵐?リーアム・ニーソン最新作『アイス・ロード:リベンジ』の“見どころ”を考える【アマプラ配信中】
リーアム・ニーソン主演最新作が自宅で観られる喜び
リーアム・ニーソンは、73歳の今も現役バリバリでファンの期待に応えている。“怒らせてはいけないパパ”を演じ社会現象規模のヒット作となった『96時間』シリーズ(2008年)以降のフィルモグラフィはアクション映画に偏っているものの、社会派作品からロマンスにコメディまでなんでもこなす、まさに名優だ。
そんなリーアムの2021年の主演作『アイス・ロード』は、鉱山労働者を救うため凍った湖を命がけで走るトラック運転手たちの救出劇を描き、スリリングな氷上アクションと苦難を乗り越えようとする家族ドラマが一定の評価を集めた。そんな佳作の続編『アイス・ロード:リベンジ』が現在PrimeVideoで独占配信中なのだが、その評価の雲行きがかなり怪しいようで……。
アイスロードどこ行った? “冷た~い”口コミの数々
まず、前作からタイトル“アイス・ロード”を引き継いでいるものの、今作の舞台はネパールの山岳地帯。ニーソン演じるマイク・マッキャンは、前作で亡くなった弟の遺灰を散骨するためにエベレストへ向かうバス旅の道中で武装集団に襲われ、他の乗客たちを守りながらバスを走らせる羽目に……という展開だ。
某老舗レビューサイトでは、「アイスロードのスリルは皆無。代わりにあるのは平坦な演出と安っぽいCG」とヒドい言われよう。ファンフォーラムでも「前作の緊張感や物理的リアリズムが完全に失われた」「ネパールの町並みも言語も警察の制服も全部ウソ(※ロケ地はオーストラリアの田舎町)」などなど、辛辣な評価がほとんどだ。
さらには「リーアム・ニーソンが突然バスの屋根に現れる」「敵がなぜか待ってくれる」と演出の凸凹ぶりにもツッコミが。「氷道トラック映画だと思って観たらバスアクションだった」というごもっともな反応もあった。
リーアムの安定感とファン・ビンビンの健闘
そんな本作だが、当然ながら見どころはある。リーアム演じるマイクは年相応のもったりとした動きが気になるものの、重厚な存在感は健在。バス車内での“ありもの”を使ったアクションシーンは派手さこそないが、登場人物の心情の変化までも盛り込んだタイトな脚本が光る。
そのバスには”ネパール風”のペイントが施されているのだが、もはや共演者と言っていいほどのキャラ立ちがあり、そのおかげか急峻な山道を駆け抜ける場面もスリル満点。アイスロードならぬ、土埃舞う山間部でのカーチェイスも楽しい。
そして準主役として大活躍するのが、『X-MEN:フューチャー&パスト』(2014年)などで知られるファン・ビンビン。アジア系ざっくりなキャラクター設定にはやや難があるものの、美しいことはもちろんアクションもこなせる俳優力はさすが。いわゆるSNS世代な10代女子との交流を含め、観客の集中力を持続させるという意味でも推進力になっている。
映画が期待外れでも、リーアムはファンを裏切らない
巻き込まれ型アクションには“チームもの”としての燃える展開が欲しいところだが、乗客たちが壊れたバスをスクラップ車両の部品でトンテンカンと再ビルドしていくシーンも。サバイバル的な工夫とチームワークを描くことで、物語に一瞬の活力を与えてくれる。
ちなみに前作から引き続き脚本も手掛けたジョナサン・ヘンズリー監督は、『アルマゲドン』(1998年)の脚本家として有名な人。90~00年代に彼が脚本あるいは製作総指揮を務めた作品をざっと見ると、「ああ、なるほど」と一定の納得を与えてくれるというか、今となってはVHS末期の貴重な人材と言えなくもない。
ともあれ、『アイス・ロード:リベンジ』は前作のファンにとっては肩透かしの連続かもしれないが、それでもリーアム・ニーソンは健在ぶりを披露してくれるし、地味メイクが逆に映えるファン・ビンビンの存在感も一見の価値あり。ひとまず“アイスロード”設定は忘れて、リーアムが異国の地で戦う辺境バス・アクションとして気楽に楽しもう。
『アイス・ロード:リベンジ』はPrimeVideoで独占配信中